魔王との出会い
俺は マテウス・ルシフェル 。二階堂真斗が607回目に転生した時の名だ。今回も人族に転生している。カーリゥ国の右端の山、大きさは東京ドーム7個ぶんくらい。数十回目の転生の時に購入した。つまりこの山全てが俺の土地だ。俺はその山の頂上に小屋を建てている。
ちなみに人口は俺を抜いて170。彼らのご先祖様は俺の山にいた山賊達だ。彼らのご先祖様は俺が住んでいる山頂に突然やって来て「有り金全部出しな!」と第一声を発した人たちで(まぁ、ボコボコにしたけど)以来一生俺の配下になった人たちだ。
俺は彼らの住む場所の確保、安全対策、病気になった時に治療する事、定期的に食糧・金を渡す事を約束し、彼らに情報収集、警備を命じた。
以来彼らは代が変わっても俺の配下になり続けた。その理由は俺の配下にいる事で安全の確保と生活基盤の安定化、そして俺の加護を受けられる事が出来るからだ。
称号とは、ある一定以上の行動を起こす事で得られるものだ。称号の中には特別な効果を発揮する物がある。
俺の称号の中で効果を発揮する物は
国の守り神、山の象徴、天空の覇者、地統べる者の4つだ。効果は
国の守り神★★★★★・・・自身の住む領地内にいる、自分が守ると決めた人物に防御力アップと即死攻撃無効の加護を与えることが出来る。制限は200人まで。
山の象徴★★★★☆・・・山の地形全てを把握できる。
天空の覇者★★★☆☆・・・空気抵抗を70%遮断できる。
地統べる者★★★☆☆・・・移動速度を極限まで上げる。
俺は国の守り神の称号の効果を山にいる俺の配下に発揮して加護を与えている。
そんなこんなで俺は情報収集と警備を彼らに任せる事でそれを俺1人でやった時にかかる時間を修行に当てることが出来た。情報は山賊が定期的に山頂までやって来て聞かせてくれる。警備は侵入者がやって来た時に山賊が阻止し、手に負えないときは俺の作った携帯もどきの魔道具で俺に連絡がやってくることになっている。相手が山賊を殺そうとしても、俺の加護で防御力の上がった山賊はすぐにはやられないだろう。警備の目を抜けて来た奴がいても俺が常時発動している探知魔法に引っかかる。万全の警備態勢だ。
・・・別に偉い人は居ないし狙われている訳でも無いのだが。
そんなある日、俺の探知魔法に2つの反応があった。警備の山賊達に遭遇している筈だがどうやらやられた様だ。
数十分後に俺の小屋の玄関のドアを叩く音が聞こえた。
「はい、どちら様ですか?」
『お前がハイエスト・ジョブ、魔術師のマテウス・ルシフェルか?』
「はい?」
############
「お茶です。」
「ありがとう。」
「ふんっ!ぼろっちぃ家だな」
「こらっ!ユリウス、人様の家でなんてこと言うんだ!」
ゴッ!
「痛っ!なんで殴るんだよ!」
「いや、別に気にしてませんよ。」
「そうですか。しかし、こうしてちゃんと叱ってあげないとすぐ調子に乗るんです。初めて会う人にこうやって上からもの言う様になってはいけないと言うのに・・・はぁ、」
「ははは・・・。」
俺は玄関にいた2人を家に入れ、リビングでお茶と茶菓子を用意した。ん?毒は入れてませんよ?俺の前には70歳くらいの老父が座り、その右隣りに8歳くらいの子供が座っている。
「それにしてもどうしてこんな所へ?それとあなた達は誰ですか?どうして俺の名前や居場所を?」
俺は素朴な疑問を投げかけてみた。こんな山の中、山賊を撃退してまでやってくるほどの物はないと思うが。それに俺の名前を知っていたし、俺に会いに来たってことは分かるけどどうして俺の名前を知っているか、どうして俺の居場所が分かっているかだ。
「これは失礼、私は ルミアス・サタリン・デーモン という。この子は俺の息子、ユリウス・サタリン・デーモンだ。」
「あれ?サタリンって魔王と同じ階級の・・・。」
俺は一度魔族に転生したときと魔王の世代交代の時期が重なった事があった。その時の魔王のミドルネームがサタリンだったのだ。ミドルネームは貴族の階級を示すもので、人族の貴族にも付いている国がある。
「ほぅ、よく知っていますね。そうですよ。私は魔王です。今回、ここにきた理由を話すには1つ質問をしなければなりません。《ハイエスト・ジョブ》という物を知っていますか?」
「いいえ、知りません。何ですか?それは。」
「《ハイエスト・ジョブ》とは、あらゆる職業のなかで剣士・槍手・射手・魔術師・戦士・暗殺者。この6つの職業でそれぞれ1番強い物たちが得る称号です。その《ハイエスト・ジョブ》の称号を持つ者の名を知られる石盤があり、そこにあなたの名前があったので是非、わが魔王国に来ていただきたいと思いやって来ました。」
「へぇ〜。でも、俺はそんな称号なんて持ってないぜ?それにどうして俺がそのハイエストなんたらとかいう称号を持った人だって分かる?」
「いえいえ、《ハイエスト・ジョブ》は称号として付きません。称号でありながら称号ではない。何故ステータスに表示されないのかわからないのです。あなたのことを知ったのはこの国の国王から盗み聞きしたからです。何でも『我が国には《ハイエスト・ジョブ》が居るから安泰だなぁ。』とかなんとか。」
「ふーん。で、魔王国に来て欲しいって言うのは?」
「はい。何でも数日前に勇者が召喚されたそうで、それで《ハイエスト・ジョブ》であるあなたに我が国を守っていただきたいと思っています。あいにく《ハイエスト・ジョブ》の中で居場所が分かっているのはあなただけだったものであなたの元へやって来ました。」
「父上!俺がこんな弱そうなのに守ってもらえと!?」
俺とルミアスが話しているとさっきまで大人しくお茶を飲んでいたユリウスがいきなり立ち上がり叫んで来た。
「ユリウス。この方はお前よりずっと強いぞ。」
「信じられません!そんなに強いと言うのならそれを証明して頂きたい!」
まぁ、ユリウスが言うことは分かる。いきなり自分より弱そうな奴に守られろと言われると怒るのも無理はない。
「うぬぅ・・・マテウス殿、どうかこいつにあなたの強さを知らしめてください。」
「はあ、分かりました。でも、どうやって強さを解らせるんですか?」
「それならばこいつと戦った方が良いでしょう。ユリウス、それで良いな?」
「分かりました。おい!お前、せいぜい逃げ惑え!」
「ははは、それはどうかな。」
俺たちは俺が何時も修行しているだだっ広い広場へ移動した。
「それでは、両者とも初めの位置へ移動してくれ。今から勝負を開始する。ルールは特にない。殺しさえしなければ何をしても良い。勝敗は相手を戦闘不能に追い込んだ者の勝ちだ。」
俺とユリウスは5メートルほどはなれ、俺は自身の身長より少し長い2メートル程の杖を、ユリウスは両手剣を構えた。ユリウスの両手剣はユリウスの身長の2倍あるんだがよく振り回せるな。
「では、初め!」
ルミアスの合図でユリウスは俺に向かって走り出した。
「はあっ!」
ユリウスが頭の上に上げていた両手剣をいきなり腰の高さにまで降ろし横に斬りはらいを繰り出してきた。
「っ!?」
俺はそれをバックステップでかわし、無詠唱で空中にサッカーボールほどの岩を3つ創り出しユリウスに投げつけた。
「ふっ!」
ユリウスは飛んできた岩を全て叩き落とした。
「ゴッドモード(極弱)!」
俺はユリウスが岩を叩き落としている間に魔力を身体の隅々まで行き渡らせ、少し本気を出すべくゴッドモードを発動した。
ゴッドモード・・・・・
頑強・軟化・硬化を身体の細胞ひとつひとつに付与する俺のオリジナルの身体強化魔法で身体強化し、聖魔法の『サンダー』で身体のほんの一部を雷と同化させ軽量化し、称号『天空の覇者』と『地統べる者』の効果を発動し空気抵抗を遮断、移動速度を極限まで引き上げる。
これは全力でやると地球を0.001秒未満で破壊できるくらいの力を持っているため、実戦の時は相手の強さに合わせて極弱・弱・中・強・極・極強と、全部で6つあるギアを切り替えている。まぁ、実戦経験って言ってもドラゴンとかの魔物くらいしか居ないし、全部極弱で足りているから弱以上を実戦で使った事はない。
今回も極弱で発動し、岩を叩き落としたユリウスの背後に一瞬で移動する。空気抵抗がほとんど無いため移動してもほとんど音が鳴らない。
「っ!?どこだ!」
案の定俺を見失ったユリウスは両手剣を構え直しながら、俺を探していた。俺はユリウスが向く方向と逆に移動しているので見つからない。ずっとこうしていてもあれなので背後からユリウスの頭にチョップをかました。
「ていっ!」
「がっ!いてぇ!」
ユリウスは身体強化した俺の手刀を頭に受け、悶絶していた。俺はユリウスの首に手を置き、
「チェックメイト」
と言った。ゴッドモードを発動してからここまで約5秒。
「し、勝者、マテウス。」
夕日が落ちてきた頃、審判の声が響いていた。