ヒカルの能力
「リリー先輩はこの世界のこと、どれくらい詳しいんすか?」
「いいや、この世界のことについては全く知らない。俺が知ってると思うか?」
「いやいや、あんなに長くこの世界に住んでいるんですから何か知ってるでしょう。」
朝からヒカルに迫られ続け、根負けした俺は精神年齢を答えてしまった。案の定驚かれ、以降俺を先輩と呼び始め、さらに訳のわからない敬語までで始めたので「その言葉遣い辞めろ。先輩言うな」と言ったら今のような言葉遣いになったが、どうしても先輩と呼ぶのを辞めなかった。
今、俺たちは今朝公開された教室へ向かっているところだ。魔術師である俺とヒカルはD-1へ。騎士であるソフィアとラインハルトはA-1へ魔工技師であるジールはC-2へ向かっている。他の子達は皆食堂に向かっているが、俺とヒカルは朝食べないので先に教室へ行っているので未だ寮にいる他の子達にあっていない。
「俺はずっと山奥で生きてたし、この世界に詳しかったらこの学園にいる必要がない。」
「そうっすね。でも、何で山奥なんかで暮らしてたんすか?もっと色々やりたいこと無かったんすか?」
「俺は前世で呆気なく死んだからな。自分で自分が情けなく思った。だから、この世界ではそんな情けない死に方をしない様、強くあろうと修行してた。」
「じゃあ先輩が今、修行していないってことは諦めたんすか?」
「いや、もう修行は終わったよ。って言っても魔法関係のだけどな。」
「え?魔法を修行していたんならこの学園に来る必要ないんじゃないっすか?」
「いや、ある。ここでは魔術だけでは無く、算術、語学、歴史なども学ぶ。俺は少し気になる事があるから歴史を学ぶためにこの学園にきた。」
さらにこの学園には大きな図書館がある。俺はそこでも調べ物をしようと思っている。
「気になる事ってどんな事っすか?」
「実はここ最近、と言うか年々、魔法技術が廃れていっているんだ。何故廃れていったのかがわからないからここで調べようと思っている訳だ。」
「へぇ、そうなんすね。じゃあ僕はこれから修行すれば俺TUEEEみたいな事が出来たり、ハーレムが作れたりするんすか?」
「何故そう思う?」
「だって廃れた世界を救う為に伝説の勇者が召喚されるとか、そんな状況みたいじゃないっすか!そう言う奴は大抵何らかのチート能力が与えられたりハーレムを築いたりするじゃないっすか!」
「ふむ、成る程。お前はそれが自分だと言いたい訳だな。召喚じゃなく転生なのに。」
「ぐっ、で、でも解らないじゃないですか。偶々召喚じゃなく転生だったっていうだけかもしれないっすよ?」
こいつ厨二病みたいな思考してやがるな。いや、これは厨二病とまではいかないか。
「そうだな。まぁ、チート能力なるものは調べる事ができそうだ。“ステータス”って言ってみな。」
「ステータス……うおっ!なんか出た。」
「そこに可視化状態ってのがあるからそれをONにしてくれ。」
「了解っす。………出来たっす。」
ヒカルがそういうとヒカルの面の前に灰色の板のようなものが出てきた。そこにはこう記されていた
ーーーーー
名前
ヒカル
性別
F
職業
魔術師
HP
216
MP
965
魔法属性
火・水・風・聖
魔法耐性
地・闇・火・無
スキル
紅蓮の業火
称号
広がる妄想
可視化状態
ON
ーーーーー
「どうっすか?」
「ちょっと待って。“アナライズ・スキル” “ジャッジメント・スキル”」
ーーー
紅蓮の業火
火属性の攻撃系魔術の威力、射程距離を上げる。攻撃を受けた相手の罪の重みにより、ダメージが加算される。ただし相手に罪がない場合、ダメージが軽減される。
ーーー
ーーーー
紅蓮の業火
効果範囲★☆☆☆☆
効果時間★★★★★
ーーーー
「うん、悪くない。」
「なんすか?今の。」
「《アナライズ》、《ジャッジメント》、どちらも探知系に入る魔法だ。今回これをスキルに限定してお前のスキルの鑑定を行った。」
「そうっすか。じゃあ、改めてどうっすか?」
「うん。悪くない。確かこの世界では魔法属性と魔法属性はそれぞれ2つずつだったからそれが4つずつあるのはお前の強みになる。HPとMPは運動したり魔法を地道にやっていると増えていく。この歳でもう称号があるのは驚いた。あと、スキルの紅蓮の業火は火属性攻撃系魔術の威力が上がる。そしてこのスキルを悪人に使うとその効果が高くなるらしい。」
「そのスキルまさに勇者って感じっすね。チートというには少し物足りない感じっすけど。それにしても称号ってなんすか?」
「称号はある一定以上の行動を起こした時に出来る勲章だ。」
「そういえば先輩のステータスってどんな感じ何すか?教えて下さいっす。」
「別に教えてもいいけど、驚くなよ?ステータス、可視化状態ON。」
俺はそう唱え、可視化状態をONにしておいた。
ーーーーー
名前
リリア・クラネル
性別
F
職業
魔術師
HP
99999999999
MP
99999999999
魔法属性
火・水・地・風・聖・闇・無
魔法耐性
火・水・地・風・聖・闇・無
スキル
魔法・魔術創生
転生
称号
国の守り神・孤高の引き籠り・山の象徴・天空の覇者・地統べる者・最古の魔術師
可視化状態
ON
ーーーーー
「900億!?何でそんな高いんすか!理不尽っす!」
「俺だって無駄に歳食ってねぇって言ったろ?お前も頑張れば死ぬまでに1万までは行くと思うぞ?ーーお!着いたぞ。」
「ちょっと待ってくださいよー。」
そう言って俺とヒカルは誰もいない教室へと入っていった。
「誰もいないって何か不気味っすね。」
「そうだな。でもだからと言って俺の横の席に座る必要ないんじゃないか?」
教室に入ると、黒板に貼ってある席順を確認し、自分の席に座る。俺の席は窓側で一番後ろの席だった。ヒカルはその横に座っている。
「何言ってんすか?別に怖いからここにいる訳じゃないっすよ。ここは僕の席っすよ。自分の席見た時一緒に見なかったんすか?」
「・・・・・。」
「まぁ、いいっすけど・・・。」
き、気まずい・・・。何とかこの流れを変えなければ!で、でも何て言えば良いんだろう?
「そういえば。」
「!な、何!?」
「先輩のステータスを見て忘れてたんすけど、この世界のステータスの平均ってどれ位なんすか?」
俺が話題を考えているとヒカルがそんな事を言って来た。
「んー。年齢や職業にもよるけど・・・。魔術師で子供ならMP多めで、HP160、MP200くらいかな。大人なら多くてHP1000、MP2000くらいかな。例外もいるけど・・・。」
「それが先輩っすか・・・。バケモンっすね。」
俺の話を聞いてまたヒカルが落ち込みだす。ヒカルも子供で比べたら高いのにな。
「俺だけがバケモンって訳じゃないぞ?この世界には《ハイエスト・ジョブ》っていう物がある。あらゆる職業のなかで剣士・槍手・射手・魔術師・戦士・暗殺者。この6つの職業でそれぞれ1番強い人たちが得る称号がある。まぁ、称号っていってもステータスに書かれる訳じゃない。ある程度の権力が手に入るけどな。それぞれの国に1つずつ《ハイエスト・ジョブ》になった者の名前が自動で書き出される石盤が設置してあって、いつでも見れるらしい。その1つがこのブリュンヒルド学園にあるらしい。今度見に行ってみようぜ。俺だけがバケモンじゃないから。」
「この世界には先輩みたいのが最低でも5人はいるってことっすね。でも、その石盤、書き出されるのは名前だけっすか?」
「名前と何故か危険度がランク付けされてる。前にユリ坊に見せて貰った時には俺が一番危険度高かったな。」
危険度ってどうやって測るんだろう?
「ユリ坊って誰っすか?」
「現魔王だ。」
「まっ!えっ!?」
まあ、普通は驚くよな。
ユリ坊は俺のスキルを知っている数少ない人間の1人だ。・・・人間じゃないけど。俺と初めて会ったのはあいつがまだ20歳の我儘な性格だった頃でよく元魔王に怒られてたな。あれから100年たって最後に会ったのがあれから36年前だからまだ生きてるだろうな。死ぬ数ヶ月前に子供が出来たって言ってたけど、ちゃんと産まれただろうか。ちょっと心配だ。いつかまた会いに行こうかな。
「魔王ってこの世界にいるんすか!何でもっと早く言ってくれないんすか!」
「うるさい。真横で騒ぐな。言わなかったのは単に聞かれなかっただけだ。」
「そ、そうですけど。でも、言ってくれても良かったじゃないすか。」
「お前に言ったら魔王退治に行くとか言いそうだからな。」
「さすがにそれは出来ないっすよ。力がありませんから。」
「本当にぃ?それは力がついたら退治しに行くってこと?」
俺は軽くジロリとヒカルを睨む。するとヒカルは少したじろいだ。やっぱりな。
「そ、それにしてもどうやって魔王と知り合いになったんすか?」
「それはな・・・」