表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
長州の志士達
96/281

負の感情


部屋に戻っても、千夜は、ボーっとしていた。

考えたくないのに、頭の中で繰り返される

仲間達の死んでいく顔や、その時の情景。

本当に、何の嫌がらせなんだろうか……?

そして、思い出してしまう。自分は何にも、乗り越えてなんてないと。平成の世まで、ズルズルと、仲間の死を受け入れられず、結局、ココまで来たのだと————。


受け入れれなくて、死を求め戦争に参加した。

それでも死ねず、ズルズルと、ただ訳も分からず生きた。


結局、私は、また、後悔するのか… ?


仲間を守る為に、今は、死など、考えては、無いのに…そんなことばかりが、頭の中を支配する————。


何で?どうして、嫌な事しか思い出さないの?

私の中には、負の感情しかないの?


————違う 。


知ってる筈。些細な喜びでも、ちゃんと私には、そう言う感情がある。ちゃんとあったんだ。私が、喜んだ瞬間は、沢山あったのに————。


カタカタ震える体。何が、怖い?自分の体なのに、人ごとの様に考える。いつしか、外が騒がしくなり、芹沢が見つかったのだと悟る。


————芹沢……。


『くそガキが……』


————芹沢……。


『千夜…後は頼む』


「……芹…沢……」

”俺は……お前の側に居る…”


スパーンッ!勢い良く、開け放たれた襖。

血相を変えて飛び込んで来たのは、新八さんだった。


「千夜!芹沢さんが、————自害したっ!」


『千夜、芹沢さんを嫌いにならないでやってくれ……』


あれ程、出なかった涙が、今になって、流れ落ちる。嫌いになってない。嫌いになんてなれない。大好きだった。


芹沢鴨という男が、私のたった一人の

「……父上…。」

「千夜!」


そのまま、彼女の身体は、傾き、その場に崩れ落ちた。


ーーーー

ーーー

ーー


布団に寝かされた千夜。


「山崎君、ちぃちゃん大丈夫なの?」

「体は、異常ない……」


手拭いを絞って、千夜の額にのせる山崎。


「芹沢さん、ちぃの刀で、死んだんだよな…」


芹沢の手に握られていた、千夜の刀を思い出し、そう呟いた藤堂。


「らしいな……」


斎藤、永倉、藤堂には知らされてなかった。

芹沢の暗殺の事は————。

だから、曖昧な返事しか、出来なかった。


「気づいてたんじゃないか?千夜、芹沢さんが死ぬって……。」


じゃなかったら、急に、倒れたりしないだろう。「辛いな……」そう言って、千夜の頭を撫でる藤堂。


仲間に嘘をつくのは辛いく、沖田の顔が歪む。

「平助、新八。まだ、片付けがあるんだ。ここは、副長らに任せて行くぞ。」

「ああ…」

「起きたら知らせてくれ。」


そう言って三人は、部屋を出た。


「限界…やったんやろ…心が……」


暗殺を知らない三人が出て行くのを見届け、

放たれた山崎の言葉。


「芹沢さんは、何で、自害に見せかけようとしたんだ?」


「左之さん、貴方、わからないんですか?」

サッパリ。と、いう表情の原田に、沖田は、口を開いた。

「芹沢さんは、残った、芹沢派の人間を守ったんだよ。暗殺だと犯人がいる。誰かを殺させない為に、自害に見せかけたんだよ。」


ほぉーっと原田。

本当に、この人は、わかっているんだろうか?


「千夜も結構残酷だよな。

義理の父親を————

「左之! !それ以上言うんじゃねぇ!」


誰もが、千夜のやった事を、良く思うわけはない。人、それぞれ……


「ちぃは、わかっとるよ。自分が、どう言われるかなんて……。それでも、自分がやるって決めたんや。仲間殺させたく無かってん。

俺らに……。

わかるか?原田さん。それが、ちぃの覚悟や。」


「わ、悪かった……」


鬼にも、睨まれ沖田、山崎に睨まれた原田。軽率な発言だと理解し、謝った。


「ちぃちゃんは、そういう子なんですよ。何でもかんでも、一人で背負ってしまう…」


「ちぃの前で、二度と、そんな事言うな!!」


「あぁ。すまなかったな。千夜。」


眠ってる千夜の頭を撫で、原田は、部屋を後にしたのだった。


残酷……か…


スパーンッ!いきなり、開け放たれた襖に、流石に驚いた。沖田は、此処に居るし、襖を乱暴に開ける人物がわからなかったから。


「すいません、失礼します。」


「中村……?」


「千夜さん、生きてますか?あーよかった……」


スタスタと千夜に近づく中村。いや……なんでお前が?

「土方さん、すいません…俺が、前渡した文ってありますか?」


文……?


「あー!ちぃちゃんが連れ去らわれた時に、ノートと一緒に貰ったっていう文ですか?」

「そう、それです。それがあれば、千夜さん救えるんです!」


いや。全くもって、意味がわからないんだが?

とにかく必要。ってのは、わかったが…。

ゴチャッ書類の山に、土方の視線は、向けられ、

「………すぐか?」つい、心の声が漏れてしまった。

「まさか、土方さん。何処、置いたか覚えてないんですか?」

あぁ。その通りだ。総司。


「あれは、千夜さんの念を込めた紙なんです。

つまり、想いを見る事が、出来るんです。」

力説する中村だが、聞いてる方は、ちんぷんかんぷんである。

「まて、どういうことや?」


「千夜さんは、不思議な力を持ってるんです。

山崎さん、千夜さんから、紙預かってますよね?」


懐から取り出した紙。


「コレか?」


別になんの、変わりもない普通の紙。なにやらボソボソと中村が言い出した。


「声が……」

確かに紙から、中村の声が聞こえた。


「どうなってるの?」

沖田は、信じられないと言った表情。

土方とて同じであった。


「どうなってるのか、俺は、知らないですけど…。とにかく、千夜さんの力なんです。」


中村もよくわかってないらしい。


「なんで、そんな、急いでんねん?」


バタバタと落ち着きのない中村。


「芹沢局長……。あの人も魂に囚われた者

じゃないかと思ったんです。もし、そうだったら、千夜さんは、また別の力を体に入れ込んでしまう。」


「取り込んだら、どうなる?」

「……わかりません。まず、魂に囚われた者が

そんなたくさん居るわけじゃないんです。

ようは、俺たちは、死ねない身。普通の人と違う事があるなら、少し、不思議な力を持っているぐらい…」


不思議な力……?


「中村も力を持っているって事?」


おもむろに、刀を引き抜く中村は、スーっと刀を腕に押し当てた。


「何を!ーーへ?傷が……。塞がった!」


中村が、斬った筈の腕は、すぐに傷口が塞がった。

「俺の力はこれ……」


「いや、待て、お前、ちぃに撃たれた時は、

普通だったやろ?」


そう、中村は、近藤暗殺を企てた、殿内に雇われた男のうちの一人。

あの時は、山崎が手当てをしている。そんな力があれば、すぐに気付くはずだ。


「千夜さんですよ。あの人は、多分、無意識に、俺の力を引きずり出した。川で助けて貰ったあの時に————。」









































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ