仲間の墓を巡る
翌日も
新選組を回る旅は終わらない。
よっちゃんの資料館、ずっと来たくても怖くて来れなかった場所。かつて、私が暮らした場所は、この日野である。
よっちゃんの遺品に自然と涙が出て止まらない。
皆の顔が頭に浮かび消えていく。
よっちゃん、私は帰りたい。
貴方達と暮らした壬生浪士組に、よっちゃんは怒るよね。
今も怒ってるかな?それとも、もう新たな命になった?
誰も答えてはくれる訳はない。私の周りに居た浅葱色は、もう、居ない。
「っ。よっちゃんっ………。」
よっちゃんと出会った多摩川に走った。
“一緒に生きないか?”
よっちゃんと出会った時、初めて声をかけられた。
生きるか死ぬかわからない泥だらけの子供。彼女が4歳の時の話だ。
私は母も父も知らない。捨てられた子供だった。
当時は珍しいものではなかった。
ただただ、明日があるのかわからない。そんな暮らしをして居た。いつ刀で斬られても、道端に死体があろうと誰も見向きもしない時代。
空腹に道端に生えてる雑草すら食べた。
生きる希望もないまま、ただ多摩川を見て座っていた私に
よっちゃんは優しく声をかけてきた。薬箱を背負い行商をしていた、よっちゃんとの出会い。
懐かしさに、頬が緩んだ。
「よっちゃん、
また此処で、一緒に生きよ。って、言ってよ!」
無駄な願いを口にする。
川の水の流れる音だけが、静かにそこに聞こえるだけだった。
ーー諦めんじゃねぇよ。ちぃ。
そんな土方の言葉を思い出す。
「諦めてないよ。
諦めたら、そこで終わりじゃん。」
でも、どうしていいかなんて、全くわからない。
仲間の死を一番悲しんだのは、よっちゃんだった。
それでも組のために、彼は——鬼になった。
「なりたくなかった癖に、格好ばっかりつけてさ。」
変えたい。全てを、死んでいった仲間の運命も…。
生きる希望がない。か。希望あるじゃん。
“新選組”
彼らが残したたくさんの歴史、彼らの思い出、会いたいという気持ち。生きて欲しいって願い。
ーー土方さんは不器用だから、ちぃちゃんが側にいなきゃね。
そんな沖田の言葉を思い出す。
私が150年以上生きている意味。
いつしか涙も枯れ、私はあてもなく多摩の地を歩く。
街に揺らめく誠の旗。あの時、私は、その旗を手にする事など出来なかった。認めたくなかったから…
その旗を見る旅に、彼らを思い出し、胸が張り裂けそうに痛くなるのは、今も昔も変わらない。
諦める訳にはいかない。
ーー俺たちの誠を貫く。そう言う意味が込められいるんだ。この旗には————。
貫きゃ誠にしてみせるっ! !




