表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
長州の志士達
74/281

女中と毒

女中が、壬生浪士で働く様になったのは、

それから、しばらくしてからだった。


女中が入ってから、近藤の提案で、広間で食べる事が多くなった。しかし、土方は、千夜の様子が可笑しい事を気にかけて居た。


だから、今日、千夜が副長室に居ない頃を見計らって山崎を呼び出し、話を聞いて居た訳なのだが、


「山崎、どうなってる?」


「.……」

土方の言葉に、山崎の返答は、ない。


「山崎っ! !」



「……?なんです?」


「お前、話し聞いてたか?ちぃだ。あいつ、もう、四日ぐれぇ、まともに飯を食ってねぇ…。どっか、体調が、悪いんじゃねぇか?」


「そんな事ないですよ。」


なんで標準語?しかも、即答だし。

今、ちぃは朝稽古に行って居る。

聞き出すのは、今しかない訳で、いつ帰ってくるかわからない千夜を気にしながら話す土方には、焦りすら表情に浮き出て居た。


「……今日、

朝餉を、この部屋で食べられませんか?」


突然の山崎の提案に、なにか、あるんだなと思った。だから、土方は、「なんとかする。」と、答えた。

副長室で、朝餉を食べる事になった訳だが、


「総司、なんで、お前まで……」


「へ?ちぃちゃんと、ごはん食べたいからですよ。」

「近藤さんは?」

「土方さん、意地悪ですね。」


なんでだよ?聞いただけだろうが!


下手な事を言えば、千夜も警戒してしまうかもしれないと、土方は、沖田が居るのは、放っておく事にした。

「ちぃ、お茶頼めるか?」


お茶は、わざと持ってきてない。これも、山崎からの指示だ。


「別にいいよ?じゃあ先に食べてて。」


スー パタン……。っと、閉まる襖の音がして、千夜は、勝手場へと向かった。足音を聞き、遠ざかるのを確認した土方は、山崎へと視線を向け、目をしばかせた。


「山崎?」


山崎が、ちぃのお膳の匂いを嗅いでる。


「匂いでわかる思ってんけど、あんまり臭わへん…」


とてつもなく変な絵だ。

大人が、お椀をもって、匂いを嗅いでる光景。しかもクンクンと犬の様だ。


「山崎君?何してるの?」


流石に、沖田も引き気味である。


「ちぃの善だけ、毒盛ってあるん。せやから、ちぃは食べん。」


「「は?」」


「せやから……」


また説明しようとする山崎。


「いや、言ってる事はわかった。

わからないのは、なんで、ちぃのお膳に?だ。」


「なんで、ちぃちゃんが命を狙われないと、いけないの?」


「そんなん、俺に聞かれたかて、知らん。」


そりゃ、そうだが…


「本当に毒盛ってあるのか?

総司、お前どっかで猫拾って連れてこい。」


「えー嫌ですよ。可哀想じゃないですかぁー。」


そりゃそうだが…

このままじゃ、毒が入ってるか分からないのが実状。


「そんなんせんでも、匂いかいだらわかる。

嗅ぎ比べたらな……」


嗅ぎ比べたらわかるって、


半信半疑で、自分のお椀の味噌汁と千夜のお味噌汁の匂いを嗅いでみる。


「ちがう……」


またまた~。と、沖田が匂いを嗅いで


「本当だ……でも、なんで、ちぃちゃんが?土方さんなら、わかるけどさ…」


「あ゛あ゛?

何で、俺だとわかるんだよ!」


キョトンとする沖田……。


「自分の胸に聞いてみたらいかがです?」

多分、思い当たることが多すぎると思いますけど……


と、余計な一言を付け加えた。


「総司っつつ!」


*****


お茶を取りに来た千夜は、お湯を沸かそう薪に火をつけ様とした時、


「千夜さん?」

その声に、千夜は、慌てて振り返った。

慌てた理由なんて簡単で、ライターを手にしていたからだ。


「何?」


声をかけてきたのは、女中。


「少し頭が痛くて、何か、薬があればいただきたいんだけど?」


と、どうやら、千夜から薬を貰いたいらしい女中。


「あぁ。そうなんだ。ちょっと待ってね。」


と、懐から巾着を取り出し、一つの薬を女中に渡した。


「ごめん。千夜さん、水をお願いしても?」


「……いいけど。」


巾着をその場に置いたまま、千夜は、水を汲みに行ってしまった。

巾着を見て、ニヤリと笑う女中。


「………。鬱陶しい女。男のフリまでして、此処に居たい?別に、金持ってる訳じゃ無さそうだし、なんで、あんなのが欲しいのか、理解できない。私のが、必要だって証明しなきゃ…」


女は、頭痛の薬を湯のみに入れ、包紙を延ばし、違う薬を包み直す。


「……これで、よし。」


そして、綺麗に包み直した薬を千夜の巾着袋へと戻した。


「貴女がいけないのよ?長州の四天王の気を引くから…」


ニヤリ口角を上げる女中。


これで、自分への疑いはかけられない。

千夜が戻った時、女中の姿は、既に、そこにはなかった。


「悪いけど、私も、ただ黙って見てるほど、大人しい人間じゃないんだよ。」


壬生浪士組の情報を外に持ち出される前に、手を打たなきゃね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ