朝稽古の前には?
なんで、
この時期に女中なんて、
源さんに内緒って言ったのは、
人出が足りないと思われたく無かったから
結局、裏目に出てしまったが、
女中を雇うなんて、
千夜の昔の記憶の中にはない。
つまり今回が初めて。
朝稽古とは、言ったものの頭が女中でいっぱいで
木刀を引きずるようにして歩いていた。
「おはようございます。芹沢さん。」
不意をついた挨拶に
「お、おはよう。佐々木。」
驚いてしまった。
「木刀ずってますよ?」
キョトンとして言われた
その言葉に、
見れば木刀の先が土まみれ、
慌てて持ち上げようとしたら
右側の足が何かに引っかかったのか
身体が傾いた。
こりゃ転ぶと、千夜が判断し覚悟した時、
フワッと抱きとめられた。
「ーー大丈夫ですか? 」
「ごめん。佐々木。ありがとう。」
「いえ…」
千夜が転ぶなんて珍しい事。
そして、右側に転がってる木刀なのに
千夜は手で木刀を捜し始めた。
「千夜さん?
もしかして、
右側見えてないんですか?」
知られたくなかった事。
「あぁ、見えない。全く。」
「いつから?」
「四月から」
「そんな前から…。」
立ち上がろうとする千夜を佐々木は支える。
「佐々木、
私にかまってないで、朝稽古に早く行け。」
平隊士が遅れたら
怒られるのはわかっていた。
だから声をかけたのに、
「いやです。」
「佐々木?」
「芹沢さんほかって、朝稽古なんか行けません。」
気持ちは嬉しいが、
「はぁ。
それはお前が強くなってから
言う台詞だ。」
「……強く…。」
何か思うところがあったのか
そのまま黙ってしまった佐々木。
「あ~こんなところにいたー。」
ビクッと佐々木の身体が
おもしろいぐらいに声に反応すした。
原因は、
声の持ち主が、総ちゃんだから。
「沖田組長、藤堂組長
おはようございます。」
いつものごとく話しかけられると思って、
先に挨拶をする。
「あ、あぁ。
おはよう?せ、芹沢。」
平ちゃん片言?
なんで挨拶疑問系なの?
「平助、挨拶ぐらいちゃんとしなよ。」
なんだかとっても冷たい声
「総司!それじゃ俺が何も出来ない奴みたいだろ?!」
………いや、そうでもないが…




