島原へ。
ドタバタドタバタ
「総司!テメェは、何をそんなに慌ててるんだ!!うるせえよ!」
「だって、ちぃちゃんが!」
そのまま、何も言わない総司。
ちぃちゃんが、なんだよ。
千夜が島原に入ってまだ数日。
今日は、みんなで島原に行く約束はした 。
だが、まだ昼になったばかりだ。
「総司、テメェ隊務をおろそかにしたら、連れて行かねーからな。」
そんなぁー!と総司の声。
「だって、山崎君が見に行ったんですよ?」
ずるいじゃないですか!と、言わん限りの沖田。
「チゲェ!山崎には、様子を見て来てもらったんだ!」
「同じ、じゃないですかぁー」
はぁ。ちぃが居れば張り付いてるし、ちぃが居なきゃコレだ。
「土方さんも気になりますよね?ね?」
ゴツンッ「ーーー!!」
「ね?じゃねーよ。仕事が片付かないだろうが!」
「痛いですよー。」
痛くなくてどうする。拳骨を落としたんだから、
「総司、また土方さんの邪魔を。」
「斎藤、いい所に、総司を見張ってくれ。
ちゃんと隊務するようにな。」
「御意。」
夕暮れ時
幹部隊士が集まり。島原へ。
「土方さーん 。早く!早く。」
何で、あいつは、あんな元気なんだよ。手を振るう沖田にため息を吐かずには、居られなかった。
島原の店に着いて、部屋に案内された幹部隊士達。
綺麗に着付けた芸妓が一人部屋に入ってきた。
赤い着物。白い肌。黒い髪に少し茶色の瞳。
「今宵お相手します。君菊どす。宜しゅう。」
頭を下げる姿が、土方の中で、ある人物と重なった。
「土方さん?芸妓さんジロジロ見過ぎじゃありません?かなり綺麗ですけど…」
いや、わかってるけど
「ちぃ。」
つい呼んでしまった
「へぇ。しもうた。」
紅をさした口を押さえる芸妓。
「へ?ち、ちぃなの?」
「そう、どす。へへ。バレちゃった。」
そう言ったのは確かにちぃの声だが、目の前の綺麗な女は
目の色も髪の色も違う綺麗な女
「ちぃちゃん、綺麗。」
総司がそう独り言の様に呟いた
「平ちゃん!お酒こぼしてる!」
見れば、平助が徳利を傾けたまま固まってる。
それを拭いてる千夜。つっても、違和感が、、、。
「本当に千夜か?」
新八と左之がちぃに詰め寄る
「そうです、けど?」
「だってお前、目。」
「ああ、カラーコンタクト。ちょっと待って」
人の、居ない方を向いてなにやらゴソゴソして振り返ると
いつものちぃの碧い瞳。
「おおー」
「驚くとこ?そこ?」
まぁいいや。
「なぁなぁ、ちぃ、ちぃ。」
子犬が見える。かわいい!
手が勝手に平ちゃんの頭に…。撫で。撫で。
「これ投げて?」
いぬだぁー!
何?このかわいい生物。
ぐふっ
「千夜?平助が、息できねぇってよ。」
見ればいつの間にか平ちゃんを抱きしめてたよう…
「ごめん平ちゃん。」
コレってどれ?って見れば、クナイ。
「………」
苦無を見てると何故か、期待の眼差しが平ちゃんから。
クナイを部屋の何処に投げろと?
少し考え、スッと投げる
「うお、ちぃだ!」
平ちゃんの判断基準がわかりません。
スパッと刺さった先で
「うおっ!」と叫び声
「烝!そんなとこ居ないで一緒に呑も。」
黒装束がのっそり出てきた
「ちぃ!そんな格好で、苦無なんか投げたら、危ないやろが!」
そう言いながらも苦無を返してくれる烝。
返してはくれるんだ。
誰のか知らないクナイだけど……。
何故怒ってるのでしょうか?
誘っただけなんですが、、、?
「山崎、とりあえず座れ。」
う……
山崎丞、副長の命令口調には弱い。
しばらくは、楽しかった。
左之さんの切腹話しを聞いたり、みんなにお酌したり。
お酌をしながら思う。
右手は動かしているからか徳利も普通に持てる。
ただ、目は、見えないまま。
こうしたガヤガヤしてる場所じゃ、耳が役に立たない。
はぁ。と、ため息が出てしまった
「ちぃちゃん?」
「ちぃ?」
「ごめん、何でもないよ。」
……ガシャーンッ
キャアァアア!
「あ?叫び声?」
「なんか、あったのか?」
スパーンッ
「君菊っ!」
慌てた様子の女将。
あぁ、またか。と、千夜は、脱力する。
「すいません!今行きます。」
土方達は、何が起こってるのかわからない
「芹沢局長や。ちぃが入る少し前から芹沢局長暴れる回数増えたらしゅうて、ああやって暴れると、ちぃが止め行きよる。」
シュルッっと、迷いもなく着物を脱ぎ捨てていく千夜
「お、おいちぃ!」
「全く熱くてしょうがない。着物を何枚着込めばいいんだか。」
脱いだ、ちぃ。
の筈が下には、いつもの袴と着物。
いつの間にやら髪は桜色。サッと手拭きの手拭いで顔を拭く。髪をザッと持ち上げ髪を結う
さっきとは全く違う顔。目は一点を見つめ
「ごめん、行ってくる。」
「戻ったら呑み比べしようぜ。」
「俺が勝つけどな!」
「左之さんも新八さんもズルイよー
俺も混ぜろ。」
「きおつけろ。」
「ちぃちゃん待ってるからね~。」
「怪我すんなよ。」
「行ってこい、ちぃ。」
「はい!」
騒ぎが起こっただろう部屋にかけていく。
たった一本の苦無を持って、
芹沢を止めに、、、。




