弐
「ちぃちゃーん」
突然、スパーンと開け放たれた襖。
総司が部屋の中の様子を知るはずが無い 。
いつもの様に現れた総司は、
中の様子を見て、すぐに襖を閉めた。
「土方さん!ちぃちゃんに、何したんですかっ!」
土方に掴みかかる沖田。二人の温度差は、一目瞭然だった。
見りゃわかるだろうに浅葱色の羽織から
ちぃの足だけ出てるんだから。そう考えてる土方に、
「抱いた。」
土方を掴み上げ、怒りをあらわにする沖田。
「何で?どうして!ちぃちゃんは、
抵抗しないって、わかってるじゃないですか!」
「だったら、テメェは、
ちぃに、島原に潜入させてもいいっていうのかよっ!」
「……へ?ちぃちゃんが、島原に?なんで!」
「わかんねえよ……わかんねぇから……
止めたくて、脅しのつもりだったんだよ。
なのに、最後までしちまった。」
土方さんが、泣いていた。あの鬼が、涙を流した。
「ちぃが、全部終わった後に、泣かないで。っつたんだよ。何でだよ……。
何で、手首縛ったり、目隠しした奴の心配なんか出来んだよ。」
沖田は、掴みかかったままの手を離した。
はぁ。
「鬼の副長が、泣きながら女を抱いたんですか?まったく。」
いつもの口調だから、こっちが戸惑う。さっきの威勢はどこに行ったんだ?殴ってくれた方がまだマシだ。
「殴りませんよ」
ちぃの腕の結紐を解きながら、総司がこっちを見る
驚いた表情を見せれば、
「土方さん、全部口に出してますよ?心の声。」
「今帰ったでー。なんや?この状況は。」
山崎が帰ってきやがった。
沖田が山崎に説明をしている肩身の狭い土方。
自分の部屋なのに、
「土方さん、呆れてモノ言えんわ。」
今喋ってるじゃねぇか、
「ガキみたいな事考えて、ちぃを傷つけたらあかん。って
俺、言ったやろ?」
「言った。けど…。」
「けどやない。それは言い訳や。」
仰る通りで、言葉が出ない。
「ちぃが島原行きたいゆうなら、行かしてやったらええ。」
「それはダメだ」
「はぁ。土方さんわかってない。
ちぃが抵抗出来んのは、俺ら仲間だけや。」
そうだとしても————。
そういえば、なんでこいつらちぃがこんな格好なのに、
落ち着いてるんだ?
総司、ちょっと前まで鼻血出してなかったか?
「総司、お前、ちぃに、手を出してねぇよな?」
「ん?あれ?烝?総…ちゃん?」
聞きたい事を口に出したのに、沖田の返事が返ってくる前に、千夜が起きた。




