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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
噂話し
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文久三年五月十一日



将軍 徳川家茂、京に入る


壬生浪士組は警護として同道し帰京。


****


やっと帰ってこれた屯所

門で、平隊士が出迎えてくれた。そのまま、中へと進もうとしたら、ガシっと手を握られ、驚いた千夜が、振り向くと、満面の笑みの中村の姿。


背筋がゾクゾクしたのは、言うまでもない。


「千ーー」ゴツンッ


よっちゃんから拳骨をいただいた、何もしてない中村。

哀れ………。



「出迎えご苦労だったな。隊務に戻ってくれ。

中村、お前には話しがある。」


ズルズル引きずられてく中村、なんだか、少し可哀想。

そんな事を考えていたら、後ろに影。


「千夜、お前大丈夫なのか?」


大丈夫って?と、考えながら振り返れば、そこには、芹沢の姿。介錯の事か。と、一人納得して、口を動かした。


「大丈夫だよ。芹沢、お前は心配しすぎだ。

体ちゃんと休めろ。」


そう言って、八木邸に入っていく千夜。



「心配しすぎ。か。千夜、その言葉そのまま返すぞ。」


そう言って、笑った芹沢の声は、千夜には届かなかった。




中村をズルズル引きずり、副長室に放り投げる。


「ウオッ。ビックリした~」


副長室に山崎がいたらしい…

そりゃ、人が急に目の前に転がり込んだら驚くわな。


「留守中なんかあったか?」

「いや、なんもあらへんけど?」


山崎の視線は中村へ。こいつ、何したん?とでも言いたげな山崎の顔。


パタンと閉められた襖。

相変わらず、俺の部屋は、墨と煙管の匂いしかしねぇな。

と、思いながらも、本題に入るべく、頭を切り替えた。


「中村、噂を流したのはお前だよな?」

「えっと、そうです。」

「なんで、噂なん流した?」


視線が泳ぐ中村。


「た、頼まれたんです。千夜さんに。」


土方と山崎は、顔を見合わせる。

スパーンと、開け放たれた襖。


「中村生きてる?」なんとも、物騒な言葉を言って入ってきた千夜 と、新八。


「なんで、新八が?」

「頼まれたんだよ。千夜に 。」

何をだよ!


「んっと、新八さんには、中村を引き取ってもらえるように頼んだの。で、中村に噂を流してもらったのは私。」


「何でそんな事。」


「壬生浪士組の評判が少しでも良くなるようにね。

でも、ダメだった。変な噂がくっついて、

……ごめんなさい……」


はぁ。っと、ため息をした土方。

ポンポンとちぃの頭を撫でる。

まぁ、こいつなりに考えての行動だったが、珍しく、思い通りにはならなかった。そういう事だろう。


しかし、いくつか疑問も残る。千夜が中村に川で溺れろ。などと言うはずが無い。しかし、こいつは、溺れたから、今、此処に居る訳だ。


「中村、お前は、何で、川なんかで溺れたんだ?」


疑問をそのまま、中村へと投げかけた土方。


「千夜さんが見えて、溺れて助けてもらえば

組の評判も良くなるって、考えて、川にーー!」


ゴツンッ


「ーーっ!」


悶絶中の中村。


「お前はバカか?」


「バカって、俺、壬生浪士組に入りたいんです!

千夜さんが、何でこの組が大事なのか知りません。

でも、命の恩人の信じた道を、

俺にも一緒に歩かせて下さい。お願いします。」


勢いよく下げた頭。それは、畳に当ってしまう程に低かった。


「俺は、いいと思うぜぇ、土方さん。

こいつが組に入るなら面倒は、俺が見る。」


新八さんなら、そう言ってくれると思った。


「はぁ、わかった。中村金吾、

今日から、隊士同様に扱うからな?覚悟しとけ!」


「はい!」


案外簡単に決まった中村の入隊に、千夜はホッと胸を撫で下ろした。所詮噂は噂。


千夜の事など一瞬にして消え去り、新たな噂が上書きされる。

それが、

嘘か、誠か、わからないまま、————噂は広がる。










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