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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
噂話し
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介錯

朝餉を食べてて、時折、よっちゃんの視線を感じた。

心配してる、んだよね…?



食べ終わって、しばらくボーッとしていた。

「土方、少しいいか?」

芹沢の声に

「ああ、芹沢さんか、、、。どうした?」


さん付けで返した土方。


「すまんな、家里の件だ。あいつは、大阪にいるかもしれない。」


家里、殿内が捕まり逃げ出した、隊士だ。彼も、芹沢派の人間。


「あと、千夜と話しがしたくてな。」


ああ…

「わかった。俺は出てるから。」と、気をきかせてくれた。



入ってきた、芹沢は、千夜を見て、顔を顰めた。


「体調は、大丈夫なの?芹沢。」

急に、フワッと、暖かな体温につつまれる…。


「馬鹿者がっ!人の心配している場合かっ!」


あーそうでした。私のが重症でした。


「芹沢?」

私の頬に手を添えた芹沢。


「誰も悪くない。」

どうせ、目や腕を気にしたんだろう。


「すまぬ……」と、芹沢が謝罪。

「あはは。鬼が謝るなんて。」

睨まれた。


「女子にーー

「女子、女子うるさいよ。嫌いなんだよ。そう言われるの。」


「子の心配をしない親が何処におる?」


「………。」


「ならば、教えてやる。子はな、泣きたい時に泣けばいい。辛い時は辛いと言え。親はな、子を絶対守る者だ。」


「私にはーーーー

「儂がお前の父親だろう?千夜、何故、お前を養子にしたと思う?お前は、壬生浪士組に残る手段に過ぎぬかもしれん。だがな、

儂は、お前に芹沢の性を名乗って欲しかった。」


は?芹沢の性を名乗って欲しかったって、どういう事?

私、良いように解釈するよ?

ねぇ、私、認めて貰えたって事?


「本当は、妾に欲しかったがな。」


殴り殺していいですか?いっそ、この場で暗殺しようか?


「…………冗談だ。」

「その言葉、もう少し遅かったら斬ってましたよ?」


「身体が冷たい。

また風呂に投げ込むぞ、クソガキが。」


「うるさいよ。クソジジイ。」

本当お互い素直じゃない。



「芹沢、これだけは言っておく。私は、お前を利用した訳じゃない。本当は、怖いんだ。自分がやろうとしてる事が正解か、わからない……。

誰を助けて、誰を助けたらダメなのか、

みんなを助けたいのに————っ。


「だったら、皆助ければいい。」


「無理だよ…」


「やる前から諦めるのか?お前が言ったんじゃなかったか?命の尊さ、重さを。」


「わかってるよっ!」


グッと胸を押さえる、


「私が助けたいのは、壬生浪士組のみんなだけじゃない!

この先の戦争、今起きてる辻斬りや追い剥ぎの被害者、幕府、長州、薩摩。他にも沢山の命

全部助けたいっ!だけどーー私にそんな力はないっ!

先を知っていても、どうにも出来ない事のが多すぎるんだっ!!


私は…私————は、小さな子供達が、焼け死ぬのを

ただ見ている事しか出来ない、ただの、臆病者だっ!


何故、みんな、死んでしまった?私は、何故、生かされた?何故、私は、戻れたの?

——私の生きた時を、少しずつ皆に分け与えれたら、いいのに。」


「千夜……」


「芹沢、家里を探しに行くんだろ?

私が、家里を介錯する。お前は、しっかりーー見届けてやれ。」



文久三年四月二十一日


将軍、家茂が大阪城に入る


壬生浪士組は護衛のため同道し

八軒家京屋忠兵衛方に泊まる



同年四月二十四日


大阪常安橋会所にて



家里次男 切腹



殿内も、もう一人の仲間もいなくなり

孤立し出奔した家里は、逃げも隠れもしなかった。


ただ、芹沢に、深く、深く、頭を下げた。

家里の介錯は、もちろん、みんなに反対された。

女子がやるもんじゃないと


それでも、私は、押し切った。壬生浪士組の隊士として

芹沢の子として、性別なんか関係ないと、


フッと苦笑い


壬生浪士組の隊士、として。か。

本当は、ただ芹沢に殺させたく無かっただけ。


短い月日だが、壬生浪士組に身を置いた家里。

殿内同様、監視目的で身を置いたとしても、芹沢にとっては仲間。本人は口にはしないが殿内が死んでから、

芹沢が酒に溺れる日が多くなった。



人の命が尊いと言った筈の私が介錯なんて…。


手にベッタリとした赤を見て、ただ思う。


————この死を忘れるな。と…。

なんとか、力が入るようになった右手を握りしめる。


史実通りに進む歴史に、



いつか



歯止めをかける日が来るのを願って。























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