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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
噂話し
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見えない右目

土方の部屋に千夜を運び、怪我の治療をする山崎。

出血はすごかったが、どうやら痛みは、其れ程は無いと彼女は、言う。


あの光が、小さな千夜が言ってた力という物なのか?

考えても、わからない。血塗れの寝間着のまま、不意に千夜が、視線を上げた時、ちょうど山崎の視線が交わった。


うわ。気まずっ!烝に、ストレートに自分の気持ちを言われた時にはさすがに困った。


山崎も、視線を外し、今は、治療する準備をしてる。

その姿を、視界の端に入れながら、ただ、押し寄せる恐怖を押し殺す。


「ちぃ、白湯のめるな?」


烝、これ、睡眠薬入り…だよね?と確認したくて顔を上げる。だが、

顔が怖いです。飲まなきゃダメって、ことですよね?


諦めた様に、千夜は、おずおずと湯呑みを受け取る。

目で”飲め”って言ってる山崎を見て、覚悟を決めて飲み干した。


身体から力が抜ける感じがして、土方が千夜を、自分の膝に乗せる。煙管の匂いに、安心したかの様に千夜は、肩に顔を埋めた。


右肩から右腕に刀傷。芹沢が暴走して斬った傷は、

下から上に向かって斬られ、少し顔をかすって右目で止まっていた。酷い傷。


クソッ


右側から、体を拭かれ意識が朦朧とする。

薬が効いてきたらしい。浮遊感が千夜を襲う。


スゥーちぃの寝息が耳に聞こえてきて、土方は

「寝ちまったか。」ポツリと、そう呟いた。


「白湯に睡眠薬盛りましたから。」

「なんだと!」

「土方さん、ちぃちゃんの顔見えてないから…」

顔?治療も終わった右腕に、新しい寝間着をきせ

総司と場所を交代する。


目に涙をため、少し息遣いが荒い彼女。

その表情は、艶っぽい。


なんとなく、総司が言いたいことはわかった。が、

総司の視線は、千夜の胸に……


「総司、てめぇは、どこ見てやがるっ」


「あんな顔みたら、少しぐらい見てもーー…」


ゴツンッ


「てめぇ、追い出すぞっ!」


「痛ったいなぁー!冗談ですよ。冗談。」


冗談じゃなくて、ガン見してたのは、何処の誰だ!


「目は、もう見えへん。」


「ーーッ…そうか…」


「ちぃちゃん……。」


「………」

「………」


「あの光って、前見た光と、同じ。なんでしょうか?

ちぃちゃん、大丈夫って言ってたけど……。」


「わからねぇー。」


ちぃを抱き上げ、布団に寝かす


目は、もう見えないのか。スッと顔を撫でた。

治療の道具を片付けながら、

 

「土方さん、中村。言う奴はどうします?」


山崎の声に、あぁ。そんな奴も居たな。と思い出す。


「とりあえず、調べてくれるか?ちぃが多分調べたと思うが、」

「その通りで、屯所に帰ったら、ちぃから、これが、、、。」


一枚の紙が土方の前に置かれる。

それを見れば、”中村金吾 備中国出身”とだけ書かれていた。


「え?ちぃちゃんが調べて、コレだけ?」


千夜は、入隊希望者の仕分け作業でも、偽名を見破ったり

少し話して出身をあてたりしていた。なのに、

一枚の紙に、それだけしか書かれていない不自然さ。


「はぁ。少し様子を見るしかねぇって事か。」


「噂はどうするの?」


二人は、一斉に沖田を見た


「お前も、知ってたんだな。」


「あれ?僕、言いませんでした?」



と、惚ける沖田を見て、ため息を吐いた。

俺たちが隠し続けていた意味は、無かったらしい。



朝、よっちゃんが朝餉を取りに行ってくれた。


はぁ。

震える手を、ギュッと握りしめる。

この先どうなるかなんて、わからない。

この先の事も、今の私の現状も、


『右手力入らんとちゃうんか?』

『何で無茶ばっかするんや!』


泣いて縋れば、歴史が変わるなら、私は、幾らでも泣くよ?


右手、右目。何を奪われても私は、皆んなを助けたい。

みんな一緒に明治を生きたい。

普通に、穏やかな日々を過ごしたい。


だから、無茶でも

私に出来ることならなんだってするっ!


右目が見えないなら左目と右耳を使うし、

右手も、リハビリすればいい事だ。指も腕も動くんだから……。


私は、みんなより生きた。

今、此処に居る事が、壬生浪士組に居る事が幸せ。

だから、何も望まない。私の幸せは此処にある。

みんなが、笑った顔が私にとっては宝物。


「……クシュンッ!クシュンッ!」


全く忘れてた。私、昨日川に入って風邪気味でした。

マズイな、この時期、夜と昼の気温差、ましてや、風邪気味。これで、喘息出たら最悪だ。


今日は大人しく寝ていよう。









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