死を求めて…弐
なのに、いく度目かの診察の日、
病院に行って、再び検査を受けた。
余命。その言葉が、脳裏に浮かんだのに、
「完治してますね。」
医師から言われた言葉に、彼女は目を見開いた。
意味がわからない。
薬には、一切手をつけなかったのに治るって、どういう事?
家までの帰り道が、いつもより長く感じた。
本当なら逆なのだろう。喜ぶべき場面だ。
薬を飲まずに完治した肺結核。
私は本当に、化け物になったのだろうか?
この世には、神も仏も居やしない。
私には…………か。
見放された。
もう、私には、死神すらついてはくれないのか。
家に帰っても誰も居ない。
殺風景な部屋。
本当に女の部屋?ってぐらいに……。
部屋の片隅に大量にある新選組の本が山積みになっていてその横には薬の山。
新選組と名がついた本は読み切った。
彼らが近くに居る様で、何故だか手にとってしまう。
パラパラ本を手にとり、読み進める。
そこには、かつて共に生き、共に戦った仲間の事が綴られている。
「……会いたい。みんなに…!」
会いたくて、会いたくて仕方がない。
自分の思いを押し殺しノートとペンを持った。
日記なんか書かない。
彼女のやる事は、薬の成分を書き記す事。
江戸時代の薬の本を見たり、薬草の本を読んで
現代の薬を江戸で使えないか考える。
労咳の薬の作り方をスマホ片手に調べて書き写す。
ふと、我に返り、いつもこう思うのだ。
何をしてるのか、戻れやしないのに…。と……。
ポイっと投げ捨てるように置いたノートとペン。
ペンは、コロコロと転がり、机の上から転がり落ちた。
彼女は、新選組で観察方についていた。
それの癖なのかわからないが薬を手に入れたり
薬草の名前をみるとノートとペンを持つ癖があるみたいだ。
押さえ込んだ感情が、再び溢れ出る。
「ーー…会いたいよ…。
皆に会いたいよっ!何で私だけっ…私だけ残ってるの」
一人暮らしの部屋に、彼女の叫び声が、部屋の中に虚しく響く。
本の中にある、よっちゃんの写真と近藤さんの写真を見て再び涙する。
もう、連れて行ってよ…
「死なせて……?」
ずるりと体から力が抜けて、ベットに倒れこんだ。
何か理由があるのか
私が肺結核になったのも理由があるのか
ふと、そう思った。
私が、150年以上生きている時点で、既におかしいのだ。
戻れるかもしれない?
淡い期待が私を支配する。
薬があれば、総ちゃんは、生きられた。
この、飲まなかった肺結核の薬が、あれば………




