揉める近藤派と芹沢派
さっきから、
この部屋の空気は重苦しい
この部屋とは、芹沢の部屋なのだが、12畳の広さのその部屋に、近藤さん達が来て、平間さんがお茶を運んでくるまで、窓開いてる?ってぐらい、空気が重苦しい。
決して、人数が多いとかではない。
まぁ、原因は、よっちゃんと芹沢の睨み合い。
「ちょっと!今から話をしようとしてるんだからさ、睨み合うのやめて。」
「ちぃ、何故、芹沢派に」
出たよ。
「あのさ、その芹沢派とか近藤派とか、同じ組みなんだからやめなよ。私はどっちかに着くつもりもないし、間違ってる事は間違ってるって言うよ。
組の中で派閥作ってどうなるの?協力出来ないわけ?」
まぁ、派閥が出来た理由ぐらい、私にはわかるけど…
「文久三年、つまり今年二月十日。芹沢が、大焚き火を起こした。それが、派閥の理由?」
「当たり前だっ!家、一軒分燃やしちまったんだぞっ?」
「知ってるよ。
清河八郎。全部あいつの策略
近藤さんに宿をとらせ、隙あらば暗殺してしまおうと企てた。だが、近藤さんに隙がなく、面白くなくなって予約した宿の亭主を脅し、予約をないものとした。」
「なるほどな…」
本当に、必要な事しか言わない奴だな…
「隙あらば暗殺って、知ってて殿内をにがしたの?」
「総ちゃん、この先、命なんていくらでも狙われるよ。
その度に、暗殺してたらきりがないでしょ?芹沢も同じ。現に今も狙われてる。
だけど芹沢は、殺そうとはしない。何故かわかる?
手にかけぬのは、情けでもなんでもない。
敵の動向をみるため。
それが、私が芹沢の養子になった理由だ。無意味に人を殺すだけが武士じゃない。確かに芹沢は、横暴で自分勝手だ…芹沢、近藤さん、派閥を作るのをやめろ。
色んな考えがある。人それぞれの思想がある。
当たり前の事だ。生きてきた境遇も育った環境も違うんだ。剣術と同じだ。色んな流派がある。
それと同じ様に色んな人間がいるんだ。思想を共有しろ。」
「そんな事出来るわけねぇーーーっ」
「よかろう。千夜。」
相反する答え……
そう。芹沢は、近藤さんを気に入っている。
口には出さないが、だから面倒なんだ。
「よっちゃん、芹沢は、近藤さんを認めている。
じゃなかったら、同じ組にいる訳がない。
もう芹沢は、長くないからね。」
長くはない。その言葉で声が出せなくなった俺。
「なるほど。千夜さんが芹沢さんの養子になった理由はわかりました。しかし、大焚き火。あれは、近藤さんを土下座まで追いやったんですよ?
近藤さんを支持する者から見れば、屈辱的な行動。」
そうではありませんか?と、言わん限りの山南。
大焚き火の事を、根に持っている。か。
そうだろうね。私も目の前で見た時はそう思った。
でも、
「屈辱的?あれは、近藤さんの誠意ある行動の間違いでしょ?自ら犯してしまった過ちを謝罪しただけ。
騙されていたとはいえ。ね。
近藤さんの誠意を踏みにじってまで、組を割る必要は、私には、あるとは思わないけど?
確かに、芹沢が大焚き火をした事を、私は良し。とは思わない。むしろ、悪いと思ってるよ。」
人々の叫び声。今でも忘れてなんてない。
あの、惨劇を、、、。
「でも、忘れてない?山南さん。
京に上洛し、組ができたのは、芹沢が居たからだ。
知ってる?芹沢は、江戸より病気を患っている事を
命をかけて組を作り上げた人間。
確かに、頑固オヤジで、横暴で、肝心な事は何一つ言わないけどね今、壬生浪士組があるのは、芹沢がいるからっ」
よっちゃんの顔が歪んだ、
そういう時代なんだよ。
よっちゃん、
農民は農民。町民は町民。武士は武士。
そういう風にしか生きられないのが、いままでの時代なんだ、実力があっても、のし上がる事が困難な時代。
「ちぃ。」
力ないよっちゃんの声。情け無い。
「近藤さんは、芹沢を認めてないと?」
そう言えば、よっちゃんを見ようとする近藤さん。
ハァ。よっちゃん頼りですか?
「あのよぅ。俺は難しい事はわかんねぇけど、
今、千夜が言ったのは、正論だと思うわ。」
新八さんが声を上げ、
「俺も、新八に賛成だ。男が頭下げた事を今更グチグチ言ってても何も始まらねーだろ。」
左之さんまでもが、賛同してくれた。
が、
「何言ってやがるっ!
芹沢さんよぉ、ちぃがついたからって、俺たちを丸め込めると思うなよ」
怒鳴るよっちゃん、
だから私は、どっちにもつかないって言ったのを忘れたのか?芹沢の後ろには新見と平間が、今にも刀を抜きそうだし、近藤さんの後ろに居た総ちゃんも刀に手をかけている。
屋根裏には、山崎の気配。
本当、話し合いと言うものが出来ない人達だ。
懐から取り出した拳銃。
もちろん打つ気すらない。威嚇だ。
「よっちゃん、ちょっと黙ってて。
いい?烝っ話し合いが出来ないなら打つよ。
さっさとおりるっ」
黒い忍び装束の烝がふってきて、両手を上げ降参のポーズ。チッっと舌打ちされる始末。
ハァ、本当面倒臭い
「近藤さんは、近藤勇は、どう思ってる?」
私は、そう近藤さんに言葉を投げかけた。




