桜を見ながら休憩
入隊希望者の仕分け作業がひと段落ついた頃
日も高くあがって、今日はあったかいな。春だしね
なんて、桜の花を見ながら、
よっちゃんの部屋のすぐ近くの縁側でお茶を飲んでいた。
「ちぃ?」
少し思い詰めた様な、よっちゃんの声に少しばかり身構えた。
「なに?」
なるべく明るく振る舞う
私は、朝、聞いてしまったから… 。
丞の報告を———
振り返れば情けない顔のよっちゃんの姿
言ってやりたい。
お前は、鬼の副長だろうが!ガキに振り回されるな!
と…
それでも言えないのは、私が、ここにしがみついてるから。
「横、いいか?」
私の隣を指差すよっちゃん
「どうぞ。」
と声をかければ、よっちゃんはドカッと私の隣に座った。
「ちぃ、お前此処に…壬生浪士組に居たいか?」
「居たいよ。」
そうか…。とよっちゃんの声。
春の風が桜の花弁を舞い上がらせる
ふわり、ふわり。とゆっくりと舞い上がった花弁は地面に落ちる。
「儚いな…でも来年も見てぇって思うんだよな。」
何かを言いたいのか?
ただ、桜を見て思った事を言っているのか?
ただ、私は、「そうだね。」そう言うしか無くて、
よっちゃんの言葉を待った。
「ちぃ、お前は、桜みたいになるんじゃねぇ」
フッと笑った
「”桜”じゃなくて”俺たち”の間違い?」
冗談のつもりだった。
だけど、みるみるうちに
よっちゃんの顔が強張っていくのが嫌でもわかる。
「……そっか。俺たちみたいになるな。か…」
声が震える。
私が追いかけてきたみんなの背中。
壬生浪士組
新選組
彼らを助けたいと、未来を変えたいとそう思ったのに
”俺たちみたいになるな”
よっちゃんの言葉が突き刺さる
過去に飛ばされた意味。隊士達の魂。
私がやろうとしてるコト。
誠?それとも、自分のエゴ?
考えれば考える程、自虐的になっていく。
よしっ!考えるのをやめよう。
此処にはよっちゃんがいて、総ちゃんがいて、みんながいる。平成より、幸せだ。なる様になる。
私、次第。
よっちゃんが、否定するならすればいいじゃないか。
…辛いけど…
人にはそれぞれの考えがあるんだ。
そうだよ。
何、悩んでるんだろ?私は私。変わらない。
ただ、これから起こることを少し知ってるだけ…
桜を見ながら
ただ黙って座っている俺たち
俺たちみたいになるな。随分上からモノを言ったもんだ
「よっちゃん、桜ってね、
一年中頑張ってるのに、春のが見上げる回数多いんだよ?」
傷ついてるハズのちぃ。傷つけたのは俺
「人って勝手だよね。春の桜だけ綺麗って言うんだよ。
桜は、一年中、そこに立ってるのに。」
ココから立ち去ることも出来るのに逃げねぇんだな。
ーーお前は。
ギュッ
「よっちゃん、夏にね桜の花が咲くの。そして、秋に一つ花が散る。」
夏に桜の花が咲くわけが無い。
桜は、俺たち。夏に、何かがある。秋は、芹沢か?
握られた俺の右手。振りほどけない右手。
そして、見ちまった、ちぃの瞳。
「お前は、ずりぃ。」
思わず、声が出た。
「なにが?」
キョトンとする、ちぃ。絶対わかってるだろ?
と、突っ込みたい。
言えるかよ。お前の目を見ると揺らぐ自分が居るなんて
情けなくて言えるわけねぇ




