増える入隊希望者
「ちぃ。お前は何をしようとしている?」
俺に捕まれるのに千夜は笑った。
「壬生浪士組の為に命を賭ける。
私はあなた達の運命を変える為にね。来たの。未来からね。」
嘘でもいい。今は嘘でも、
必ず変えてみせるあなた達の未来を
例え、この命尽きようと……。
もう、死にたいって思ってる訳じゃない。
私は、もう充分に生きた。だから、この人達の為に死ねるなら私は後悔なんてしない!
後悔ばっかりして来たんだ。
最後ぐらい 、笑って生きよう。
どんなに辛くても、笑ってあなた達と
共に、最後を迎えたい……
翌日も、ちぃちゃんは文机と睨めっこ。
「何してるんです?ちぃちゃん。」
とりあえず、土方に聞く沖田。
「ちぃは、入隊希望者の振り分けしてるんだよ。」
入隊希望者の振り分けってなんだ?
沖田は首を傾げる。
「まぁ簡単に言ったら、新人になった時に俺の仕事が楽なんねん。身元とか、調べんでよおなるからな。」
「山崎君の為ならやらなくていいのに。」
「なんでや?沖田さん、そんな冷たいこと言わんでや!」
泣き真似して大袈裟に沖田に縋り付く山崎は鬱陶しい事この上ない…。
「最近、入隊希望者が増えたのは総司も知ってるだろ?」
「それは知ってますけど。」
まだ足元にいる山崎を足蹴にする沖田。
「痛いわ!沖田さんふざけてるだけやのに本気で蹴るのやめてぇーや。
まぁ、喜んでいい事やけどな。
身元を調べるのって結構大変やねん。偽名の可能性もあるしな。」
蹴られた所を摩りながら山崎は千夜を見る。
「一週間の仮入隊の期間にどうするか決めなきゃいけねぇ。ちぃに仕事やらねぇと、小性の意味ねぇだろ?」
入隊希望者の増加。
はっきり言ったらあり得ない事。
別に大捕物などがあったわけでもないのに。
それでも増える入隊希望者、不審に思った土方が
山崎にその件で調べてもらっていた。
調べによると、町の中で
壬生浪士の噂を流す輩がいるらしく、それを辿った…
何人もの人に聞いて行き着いた先、
それが、近藤の暗殺を暗殺しようと企んだ殿内に雇われた男だった。
恨みつらみを噂にした訳じゃない。
むしろ、壬生浪士組の評判を上げるもの
だが、噂には尾ひれがつきもので
壬生浪士組には、天女がついている。など
それなら我慢できる。そんなものは存在しないのだから
土方が頭を抱えたのは違う理由
千夜の特徴が噂の中にあったからだ。
殿内の件で、近藤と千夜には少しみぞがある。
下手したら、千夜は追い出されてしまう可能性があるのだ。考えたくないが…
考えれば考える程、土方も山崎も身動きが出来なくなる。
まるで、泥沼にはまったかのように…
その噂で隊士が増えれば増えるほど
千夜の危険度は高くなる。
男として、ここに居る彼女を女として置くのは危険過ぎると二人は考えていたのだ。




