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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
死を求めて…
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死を求めて…

私は、何をしたら死ねるの?


ベッドに沈む身体は、重く感じ、

たった1人、そんな事ばかりを考える。


そして、ゴホゴホッと、嫌な咳が出た。


「またか………。」


彼女は、喘息疾患者で、過度のストレスや埃に滅法弱い。


小さい時から、ずっとだ。

慣れた手つきでステロイドを吸う。


ただ、苦しみに耐えなければならなかった江戸時代。

いまじゃ、苦しみを和らげる薬もある。

死にたい。と言いながらも、この苦しみからは逃れたい。そう思っている自分に、呆れてしまう。


平成の世まで私は、色んな職業に就き、

5、6年を目処に引っ越しし、職業を変えた。


外見が変わらないのが一番の理由だった。

名前を変え、自分を偽り生きてきた。


ついた職業の中には、グラビアなんてのにもなった事がある。


女にコンプレックスを持っている彼女が何故?

そう思う人は、少なくないだろう。


彼女とて、長く生きて居ても騙される事もあるのだ。

働かなければ、生きていけない。

死のうとしても死ねないのだから……。


生きるしかないなら、働かなければいけない訳で

就職活動をしていて工場の面接だと話を持ちかけられた。

それが、グラビアだった。


精神的にも、部屋に篭っていれば

気が滅入ると言うもの。


ただ、単純に部屋にジッとしていられなかった。


その頃の私は、自分を傷つけるのが日常茶飯事で、

ただグラビアを続けた理由は、一人になりたくなかった。



ただ、それだけ。


だんだんと、冷静になり、職に慣れた頃気づいたのだ。


有名にはなりたくない。歳をとらないのだから、

だから、本や雑誌は売れたらしいが2年もせずに辞めた。


目立たない様に生きてきたんだ。


明治から平成まで………。


注目されて、気付いた。

人の目は、怖くてたまらないと言う事を……。



翌日ゴホゴホ…


次の日も咳が止まらない。


仕事先に連絡し、休みを貰った。


病院の待合室、消毒の匂いが鼻につく。

座る椅子すら、治療を待つ人で埋めつくされ、

ただ、壁に寄りかかり、ボーっと携帯を見ていた。


時間を日付けを眺める。

刻々と、時を刻む時計。過ぎ去る日々。


いつになったら、私の中の時計は、

壊れて動かなくなるんだろう。


そんな事を考えていれば、不意に呼ばれた名前にすら苦笑いを落とす。


何度、苗字を変えたか、


何度、名前を変えたか、


数え切れない程だったから。


そして、診察室で


「喘息ではないですね。肺結核が疑われます。」



医師の言葉に、驚きすらなくただ、その言葉に、

あぁ、労咳なんだ…。


やっと、やっと、解放される。



そう思っただけだった。


何週間分の薬を受け取り、帰路につく。


家に帰っても、その薬には、一切手をつけなかった。


病院には何度か行った。その度に、薬は増える。

別に、もう十分生きたよ。私にはなにも無い。過去に戻れるなら生きたい。




でも、

平成の世に私が望むものなんか——何もない。




















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