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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
殿内
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暗殺未遂

ハァハァ!

こんなに走るのは久しぶりだった。

知らせを受け、土方が屯所に帰ったのは日の出近くで

局長室は、赤く染まっていた。


「千夜?」


ーー私は、此処から逃げたりしないなら大丈夫。


なんで、どうして、

あの時、此処に居ろ。と、言わなかったのか?


土方を襲う、後悔という今になったら取り返しのつかない、どうにもならない想い。


部屋に入った瞬間に、胸倉を掴まれ


「何で、何でちぃちゃんを一人にっ!」


したんですか?とは言葉は続かず、

ずっと泣いてたのか目が腫れた総司の姿。


やり場のない怒り、

俺に、それをどうしてやる事も出来ない。



怒っても、もう起きてしまった事は、変えられない。


「ーー。すいません。」


沖田にだってわかっている。

土方から手を離した沖田は、千夜の近くに歩み寄る。

誰が見ても痛々しい、その姿に

目を背けそうになるのを必死に堪えた。


「ちぃちゃん、土方さん、帰って来たよ?」


千夜の手を取り、自分の胸に当てる総司。


千夜の腕には包帯。首にも

左頬の腫れは昨日のままに、反対に切り傷。


俺も千夜の近くに座ったが、何て声をかけたらいい?


「千夜?ただいま。」


これしか言えなかった。


俺が、どんな態度をとっても

こいつは、必ず笑って出迎えてくれた。


『よっちゃん。おかえり。』


そう言って。


「山崎、襲撃した奴らは?」


少し疲れた顔の山崎に、そう声をかけた。


「生きとるよ。」


まさかの言葉に、俺は山崎の胸倉を掴み上げた。


「何故!」



なぜ生かす?千夜がこんな姿になったのに、

近藤さんが狙われたのに!


だけど、幹部隊士を俺が責める資格はあるか?



あるはずない。

こいつらを責める資格を俺は持ってない。


ずっと、追い出そうと傷付け続けた、俺には、


「それが、ちぃの願いやから。」


土方の見開いた


「千夜の、願い?」


「ちぃが、意識を飛ばす前に、


『す…すむ……

殺…すな……こいつらを…殿内を…絶対、助けろ……』


それが、ちぃの言葉や。

何言ってるかわからんかったわ。

撃たれて皆、死んどる思ったから。誰一人死んどらんかった。みんな、急所外れとったわ。

自分、こんなに、斬られとんのにっ!

何で、ちぃ斬った奴らなんか治療せなあかんねん!」


どこにもやれない憤り。


治療が仕事の山崎の悲痛の叫び。


何がしてやれる?

千夜、お前の斬った奴らを裁く以外なにがしてやれる?


千夜の手を総司と同じ様に自分の胸に当てた。


「生きろ。千夜。

俺と、俺たちと一緒に、生きてくれ。」


千夜が返事が出来るわけなく、


しばしの沈黙。



「血が、流れ過ぎて、

今、出来る治療はした。けど、

わからんねん。どうなるか、、。」


どうなるかわからない。


その言葉に俺、総司、斎藤、平助、左之助、新八、

言った山崎が涙する。


湿った空気の中

ただ、横になったままの千夜を見つめていた。



広間に千夜を移動させ、

幹部達が、思い思いに腰を着ける。


「副長、局長二人がお見えです。」


山崎の言葉に、何か言おうとした総司の口を塞ぐ


「ふグッ……」


二人?近藤さんと、芹沢?

何で芹沢が! ?


総司に睨まれるが、

すぐそこに居るのに、何か言ったら困るんだ。

わかってるな?と、視線を送る土方。


コクっと頷く皆の姿を確認し、

口を塞いだままの手を離せば、ゴシゴシ顔を拭きだす始末。


あーあーそうかよ俺は汚いってか?


はぁー。


芹沢の目的なん、殿内の解放か、ちぃの見舞いか、

どっちかだろ。


「通せ。」


どうせ、何を考えても、

俺が言えるのはこの言葉だけなのだから









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