暗殺
夜に忍ぶ足音
サッと襖が開き、部屋が月に照らされる。
キラリと月に光るのは人を貫く刃
ズシャッっと五本の刃が
布団に突き刺さる。
憎しみが積み重なった悲劇
それが
ーーー暗殺ーーー
確認の為
布団を捲る、男たち、
でもその布団に、目的の人は居なかった。
空の布団を五人で突き刺した奇妙な行動。
「誰をお探しです?殿内さん。」
千夜の予想は、見事に的中した。
先程まで居なかった人物の出現に男たちは動揺が隠せない。
「お前はっ!土方のっっ! !」
「はい。小姓の千夜です。
こんな夜中に、随分物騒な登場で…」
そう言いながら、鋭い視線を男達に向ける千夜
「うるさい!お前なんかに用は無い」
「局長の部屋に、何の用事ですか?
近藤さんなら、今夜は戻られませんが?」
男たちが刀を構え、千夜に向かって刀を振るう。
一人沈め、刀を奪い上げた。
刀の数は減ったが、千夜に降りかかる刀は四本、
首を掠め、
腕を掠め、
慣れない闇が、動きを鈍くさせる。
ハァハァ。思うように動けないもどかしさ。
助けようと思った奴の
まさかの行動に頭がついていけない千夜。
予想なんて、的中して欲しくなかった。
膝をついた瞬間に、囲まれてしまった。
「あははは。隠れて居ればいいものを、
のこのこでてきおって!」
多勢に無勢。とばかりに笑う殿内。
「私が、
そんなにバカだと思ってるの?殿内……」
そう思った瞬間
バンッと勢いよく開いた押し入れの襖
近藤の姿が暗い部屋の中にはっきりと見えた。
そちらに向かっていく男たち、だが、何か違和感があった。しかし、そんな事を考えている余裕などなく、彼女の身体は動いた。
「近藤さんっ!」
ズシャッという音と共に
近藤の前に立ちはだかった千夜は崩れ落ちる。
「千夜君っ!」
カチャ…
殺したくない。
守りたい命だったのに、私は、、、
手にかけなきゃいけないのか?
流れる涙は敵には見えないだろう。
パンッパンッパンッパンッ
静かな屯所に物騒な音が響き渡る。
倒れた奴らから赤いものが、溢れだす。
「ご、めんなさい。」
その痛みを知らないわけじゃない。
撃ってしまった罪悪感
そのまま千夜は
畳の上にペタリと腰をついた。
腹に刺さった刀はそのままに
ただ、その場に赤が止めどなく流れていった。
千夜の放った銃は
あっと言う間に
幹部隊士たちを近藤の部屋に集めた。
鉄臭い部屋。
赤く染まってしまった部屋は誰が見ても異常。
その中に千夜の姿があった。
肩で息をする千夜、
右頬や左足、中でも酷いのは腹に刺さったままの刀。
「ちぃ!」
駆け寄る山崎。
千夜の姿を見て固まる。
ドクドクと流れる赤は千夜の着物を赤く染め上げ、
黒くなりつつあった。
「ちぃっ!ーーっ!ちぃっ!
あかん、返事せいっ!」
目をあけてるのに、視線があわない。
「す……。」
手拭いを強く押し当てられる。
「す……すむ……」
何言ってるの?ちゃんと座ってるじゃん。
そう言いたいのに言葉にはならなくて、
まだ、私、何もしてない。
こんな所で、死んでる場合じゃない。
初めて願う。
……生きさせて……
と、




