初対面?芹沢鴨
翌日の朝、土方の部屋には、沖田や山崎の姿があった。
人を一切入れなかった土方が朝餉に誘ったのだ。
千夜は、土方の横顔を見ながらお膳に手をつけた。
丸々3日ぶりとなる食事
食べれる量は、ごく僅かだったが、箸を進める千夜を見て
土方は、話を切り出した。
「千夜。お前、此処に居たいんだろ?」
唐突に言われた言葉に、箸を咥えたまま、土方を見る千夜。
信じてくれた。なんて、思ってない。何を企んでいるのか?その思いの方が強かった。
「…はい。」
そう返事をした千夜に土方は、
「此処に居たいなら、
挨拶しなければならない人が居る。」
それを聞いて、素早く反応したのは沖田だった。
「土方さんっ!まさか、あなた
ちぃちゃんを芹沢さんの所に行かせる気ですかっ!」
沖田の怒鳴り声
それにも構わず、千夜はお茶を啜った。
なるほど、芹沢は女好き。
私を放り込めば、手篭めにすると、よっちゃんは、そう考えているんだろう。
山崎は、千夜をチラッと見て、箸を動かした。
「行かせるに決まっているだろう?
局長に挨拶をするのは、普通の事だ。」
何も知らないのは、私じゃなく、よっちゃんだ。
「挨拶に行けばいいんですよね。
食べたら、行ってきますよ。」
「ちぃちゃんっ!」
「大丈夫だって。一人で行けるし。」
「違うって!芹沢さんは危険なんだって!」
「気をつけるから。」
沖田とのやり取りを少し口角を上げて見つめる土方。
「いや。逃げられたら面倒だ。俺が送っていく。」
「土方さん、貴方、最低です!」
なんとでも言え。俺は、組の為なら何でもする。
たかが、女一人。芹沢にやるぐらい、どおって事ねぇ。
朝餉を食べ終え
着替えをする千夜
不服そうに、その姿を見つめる沖田と着替えを手伝う山崎の姿
「本当に行くの?今からでも断ったら?」
「総ちゃん、いざとなったら逃げるし大丈夫だって。」
「でも…っ! !」
まだ、納得してくれない沖田に声をかけ様とした千夜だったが「支度は出来たか?」そう、土方の声が聞こえて
襖に視線を向けた。
袴姿の千夜は、女顔ではあるが男に見えなくも無い。
「支度は終わりました。」
「じゃあ、行くぞ。ついて来い。」
スタスタと先に行ってしまう土方を千夜は、追った。
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「珍しいな。土方が
俺に合わせたい奴が居る。と、言ってくるとは。」
鉄扇を開いたり、閉じたりしている芹沢
目の前には、千夜の姿
「で?土方は?」
「先ほど帰りました。」
引き渡すだけで、本当に帰った土方
「何を考えているんだか。まるで、生贄の様だな?」
「私に聞かないでください。」
その返事を聞いて、芹沢はフッと笑った。
「名は?」
「千夜。」
「千の夜か。気に入った。どうだ?俺の妾になるか?」
「なるわけ無いでしょ?」
その返事に、一人の男が立ち上がり刀に手をかける。
「やめとけ。平山。
こいつに手を出せば、お前の首が飛ぶぞ。」
「しかし!芹沢さんにあまりにも失礼ではっ! ?」
「芹沢さんはな、遊んでるだけだ。
昔助けた、姫様とな。」
「姫様! ?」
「覚えて、いたんだ。私の事。」
芹沢は、私の言葉を聞いて深く頷いたのだった。




