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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
土方の企み
24/281

斎藤一



**


八木邸の門の近くに、男の姿があった。


「はじめ君!」


その男、斎藤に、駆け寄る沖田。

沖田のみならず藤堂、永倉、原田、井上までもが

斎藤に歩み寄ってきた。


「皆、久しぶりだな。」


辺りを見渡す斎藤に、沖田は首を傾げた。


「千夜は、一緒では無いのか?」


と……

その声に、近くまで来ていた土方は、歩みを止めた。


ーーみんなと一緒に試衛館で暮らしたの。


そう言った千夜

だが、自分にはその記憶がない。

土方のみならず、藤堂、永倉、原田らも同様だ。

渋い顔をした皆に

「どうしたんだ?」と、斎藤は沖田に視線を向ける。


状況がわかってない斎藤に、沖田は、説明するしかなかった。


斎藤は、沖田の説明を聞き、表情を険しくさせた。


「…そんな。皆が、千夜を忘れてしまうなんて…

あんなに、可愛がっておられたのに。」


と、土方に向かって放った言葉


「千夜は、何処に居るのですか?」


斎藤に遮られ、仕方なく、土方の自室へと斎藤を案内した。


斎藤の姿に


「…はじめ…」と、声が漏れた。


足早に千夜に近づく斎藤

そのまま、痩せた千夜を抱きしめた。

これで、確信した。私は、この世界に存在している事を…。


***



懐かしさに酒を酌み交わす男達。


それを、遠くの山崎の部屋から見つめる、男と女。


「えぇん?混ぜてもらわんくて、」


そんな山崎の言葉に千夜は、悲しそうな笑みを見せた。


「私は、仲間って、認められてないから。」


「ちぃ。」


「いいの。はじめが来た事で分かった事があったから。」


「分かった事?」


「それより、烝は、よかったの?混ぜて貰わなくて。」


「俺は、別に、」


「ふぅん。」


「ふぅん。って。」


関心が無いなら聞くなやっ!


「ねぇ。烝。頼みがあるの。」


ニッコリと笑う女。何かを企む様な笑みに山崎は、少し後ずさる。


「な、なんや。頼みって?」


「そんな、身構えなくてもいいでしょう?

なにも、とって食う訳じゃなし。」


近寄ってくる千夜の迫力に、また、後退する山崎。しかし、背後は壁。逃げ場は、無くなってしまった。


「とって食う。とか言うなやっ!」


女やろっ! ?


慌てた山崎に千夜はため息を吐く。


「なんで逃げる訳?

肩、なんかついてるから取ろうとしただけなのに。」


ほら。っと枯れ葉らしき物を見せた千夜。

ズルッと腰を床につけた山崎。

なんや、迫ってきた思ったわ。


「山崎烝。」


その声で、名前を呼ばれると背筋が伸びてしまうのは、

こいつが、俺の護るべき相手だから。


「私を、助けて?

壬生浪士組の未来を変えたいの。

だから、力を貸して?」


今にも、涙を流しそうなそんな表情。

俺は、女の前で片膝を着き頭を下げた。


「御意。」


「ありがとう。烝。」


そう言って、視線を俺に合わせた、ちぃは涙を流した。

涙を流した千夜の頭を撫でる山崎。

はじめが屯所に来た時の、あの目が忘れられない。

よっちゃんは、私を追い出そうとしてくる。


それでも、私はーー逃げる訳にはいかない。

頭を撫でるあったかい手、


「ちぃ?お前、なに考えとる?」


発せられる声。


「烝……、抱きしめて。」


全部、生きてる時しか感じられない。


「は?」

「心臓の音が聞きたい!」



おずおずと、伸びてくる手。抱きしめられた温もり


烝に抱きしめられるって変な感じ。


ドクンドクンと聞こえる心臓の音。


その音は、————私の希望。


私の大事な仲間。生きている大切さ、

誰も欠けさせたりしない

その為なら、この命かけてもいい。


「丞、助けて。……ん…」


唇が触れる。


「ちぃの為なら、やったる。」


ふっと笑ってしまった。


「愛を知らない私でも?」


「愛より誠やろ?」


「せやな。」


真似するな。そう言って、唇がまた重なる。

そこには、愛は存在しない。


ただの、同情、哀れみ、慰め。忠誠。

そんな意味が込められた口付けーー。



























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