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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
戻って来た幕末
21/281

喘息…弐

 

「おはようございます~」


もちろん朝。


スパーンと開け放った部屋の主人は、まだ、布団の中で眠っている。


「やだなぁー

もう朝なんですから起きてください。」


言葉は優しいが、部屋の主人を足蹴にする

沖田総司……


コロっと転がって、布団の外に出された

部屋の主人、土方歳三


「総司!

てめぇは朝はまともに起こせねぇのか!?」


鬼の形相も知らん顔で、先ほどまで土方の寝ていた場所に千夜を寝かして、掛け布団まで剥ぎとられた、部屋の主人


「何でこいつ……。」


「こいつって、ちぃちゃんですって。」


そんな事はわかっている。


「総司、何で俺の部屋に

その、ちぃちゃんとやらを寝かしてるんだ?」


土方の千夜の呼び方に、沖田は、イラッとしながらも


「ちぃちゃん、

今、睡眠薬で眠っているんですけどね、

僕、朝稽古行かなきゃいけないし、診てあげる人居ないんですよー。」


沖田は、ニコニコと続けた。


「だから、何で俺なんだよ…」


「やだなぁー、

土方さん部屋に閉じこもりじゃないですか?

他の幹部隊士も、稽古や雑用があるし、土方さんなら部屋にいるからいいかなって。」


「閉じこもりって俺は、仕事してんだよ!

閉じこもりで暇な奴みたいな扱いはやめろっ!」


「あぁ、そう聞こえましたか?」


シレッとした顔で言ってんじゃねぇよ。


「珍しいな、お前が女なんて…。」


「何です?ヤキモチですか?

やめてくださいよ……。気持ち悪い。」


お前の発想のが気持ち悪ぃんだよ!鳥肌立ったわ!


「ちぃちゃんの事、思い出さないんですね。」


「あ?あぁ…」


「別に思い出さなくていいですけど、

土方さん、過保護だったし、」


過保護って、俺は親かよ。


「そろそろ僕、朝稽古行かなきゃ。

ちぃちゃんは、ずっと寝てると思いますけど

咳したら背中さすってあげて下さい。

多分、山崎君も様子見に来ると思うんで。

じゃあ、ちぃちゃんの事よろしくお願いします。」


そう言って部屋を去る総司。

はぁーー。寝起きは最悪。

寝間着のまま、布団から出されたままだったことに気付き、着替えるか。と、土方は、腰を上げたのだった。


着替えた土方は

文机にむかう。



いつもと、変わらない。墨をすり書類を書く。

ただ、何時もと違うこと、千夜という女が部屋にいるということだけ。


しばらくは静かだった。


ゴホゴホッと咳をした千夜の背中をさすってやる為に立ち上がったが、ゴホゴホッゴホゴホッ…ゴホゴホッ咳が止まらない。

起き上がらせたら、薄っすら目を開けた千夜。


「よっちゃん?…ゴホゴホッゴホゴホッ」


苦しそうに、俺の着物にしがみついてくる千夜。

どうしてやればいいか、そう考えてしまう自分に苦笑いする。追い出そうとしている女なのに………。

しかたねぇ。相手は病人。

しかも苦しくしがみついてくるんだから、そう、言い訳した。別に嫌だとかそういう感情は、無かった。


まぁ、女だからな。と、土方は軽く受け入れた。


抱きしめた千夜は熱い。

背中をトントンと叩いてみる。


ゴホゴホッゴホゴホッ


咳を止めたいのに、背中を叩くのは、逆効果だったらしい。


ハアハア……。苦しいのか土方の着物を強く握る千夜

何かしてやりたいが、できないもどかしさ


「千夜?お前薬は?」


ふと気付いて声を掛けてみた。


「……薬……ゴホゴホッ」


懐から出された筒状の薬を吸い込み、しばらく咳き込んだが、落ち着いたのか、違う薬を手探りで探す千夜

近くに落ちていた薬を千夜に渡し水を渡す。

それをのみ、疲れたのか、そのまま眠っちまった。


「俺は、よっちゃんじゃねぇんだぞ?わかってんのか?」


そんな言葉を寝ている女に投げかけた。


返事なんて、返ってくるはずがないのに———。



「はぁーー。」


やっと、咳が止まりため息が出た。

千夜を布団に戻そうとするが、しっかり首に腕を回され寝かすのは不可能。だからと言って、

このまま座ったままだと仕事が片付かない。


ヒョイと抱き上げ、文机の前に座る。


横抱きのままで座れば、暴れたからか、着乱れた襦袢から

千夜の足が自然と視界に入る。


所々赤く腫れた白い肌、


俺たちが、やったんだよな?

なんで、こいつは文句も言わねぇんだよ。


寒いだろうと、自分の手の届く場所にさっきまで着ていた寝間着があったから千夜に掛けてやった。


肩から掛けても

千夜の足先までちゃんと覆ってくれた土方の着物……。

それだけ千夜が小さな事を物語る。


こんな小せえ体を…。


土方は、千夜の寝息を耳元に感じながら筆を握った。

スルスルと紙を滑る筆の音しかしない室内。


「土方さん?」


スーッ返事もして無いのに開かれた襖、

なんでここの奴らは返事を待てないんだ?

とは、思ったが、怒鳴れる状態じゃない。


「平助か、どうした?」


入り口を見るとこちらを見て固まっている様子。


「平助?」


「土方さん、す、すすす……、済まねぇ!」


「あ?何がだ?」


またなんかやらかしたのかと、眉間の皺が酷なる。


「い、いやぁ…。まさか土方さんが…、

女連れ込むとか考えてなくて。」


「は?」


自分の膝に千夜を乗せているからか、


「平助、少し落ち着け、

と言うか、とりあえず入って襖を閉めろ。」


「あ、あぁ…」


挙動不振の平助。


「お前は、俺が女を連れ込む様な奴だと思ってやがるのか?」


今、千夜を抱いた状態じゃ説得力の欠片もない。


「え?……えっと……。」


平助もなんと言っていいかわからない。

ただ、目の前に鬼の形相をした土方がいる。

何か答えなきゃいけない。


「ひ、土方さん、朝餉はどうする?」


困った平助が選んだ答えは、部屋に来た用事を済ませてしまおう事。


ゴツンッと拳骨を頭に頂いた平助。


「痛ってぇーー!」


「うるせぇ。朝餉の話しなんかしてなかったろうが!

平助いいか、こいつは千夜だ喘息が酷いらしくて

一人に出来ないから俺の部屋に総司が連れてきた。

苦しそうにしたから、この体勢になっただけだ!わかったか?」


「え?千夜なの?」


千夜だとわかると近寄って来る平助。

顔が見えて無かったらしい。


「そうだ。お前暇なら千夜抱いとけ。」


土方の提案に、ボンッと赤面した平助。


「む、無理だって、お、俺朝餉の支度手伝ってるし、

だ、だだだ抱いとけってっっ!」


慌て過ぎだろ、


「わかったから、落ち着け。朝餉は部屋で食べる。」


「う、うん、じゃあ持ってくるな。」


平助もまだまだガキだな。


はぁっ。と、ため息をついた土方だった。






































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