表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
戻って来た幕末
20/281

喘息

明け方


まだ日の出前で真っ暗な時間、


目が覚めたら、隣で寝ていた筈のちぃちゃんの姿が無く

慌てて、身体を起こした。


ゴホゴホッ…ゴホゴホッ…ゴホゴホッ


酷い咳が聞こえ急いで廊下に飛び出し、部屋のすぐ近くの中庭で、ちぃちゃんが苦しそうにうずくまっているのを見つけ駆け寄った。


「ちぃちゃんっ!気持ち悪いの?」


そう、声を掛けた途端に吐いてしまった彼女。

寒空の中、中庭で声を押し殺し、きっと耐えていたのだろう。身体はすっかり冷たくなっていた。


一人で苦しまなくてもいいのに…


「ハァハァ……総ちゃん。ごめん…起こしちゃった。」


今は、そんな事言ってる場合じゃないのに。


「井戸に行こう。」


口をすすがせ、部屋に戻る。火鉢に火を起こし、着替えを準備した。おでこを触ると、昨日よりも熱い。


ゴホゴホッ


僕が出来ることなんてない。


「いい子だから横になってて?」


コクコク頷くちぃちゃんを部屋に残し、僕は、

朝からあまり会いたくない人の部屋に走った。


「山崎君?起きてる?」


サッと開いた襖


「おはようさん。

今起きたとこやけど、どうしたん? こんな朝早く。」


「ちぃちゃんが……」


熱が高くなってる事。ついさっき、吐いた事を話した。



「わかった。薬やら準備して部屋行く。

寝かしてやらなあかん。多分、昨日寝れてないやろ」


「寝れてないって……」


僕、一緒に居たのに…


「昨日、夜中に千夜を見た。

井戸におって口すすいどった。

吐いてしもうたんなって思ってんけど、今朝も吐いたなら…」


少し考える様な山崎の姿


「僕は何をしたら…?」


側に居るなら何かをしてあげたかった。


「側におってやったらええ。」


部屋に戻って、ちぃちゃんの背中をさする。


「ごめん。痛かったら言って?」


山崎君の言う通り眠れないみたいで、


背中をトントンしても肩で息をして苦しそうなちぃちゃん…筒の薬を吸い、薬も飲ませた。

代われるものなら、代わってあげたいと思うほどに

彼女は、苦しそうだった。


「沖田さん?入るで?」そう聞こえた山崎の声に

「どうぞ…」と返す沖田。


入ってきた山崎の姿に千夜は首を傾げた。


「す……。ゴホゴホッ」


「おはようさん。」


何で山崎君がいるか、わからない様子の千夜。


「沖田さんが朝来てな、苦しそうだって言うたから…

ほら、白湯飲めるか?」


差し出された湯呑みを見て、ちぃちゃんはすぐにお盆にかえした。


「やっぱあかんか?」


「白湯飲めないの?」


「睡眠薬盛ったら、バレてしもうてん。」


サラッと睡眠薬を盛った事を暴露した山崎

「睡眠薬?」


ちぃちゃんは、危険回避の為か布団に潜る。

容赦なく山崎君が布団を剥ぎとった、


「ずっと寝れてないやろ?ええんか?

沖田さんめっちゃ、千夜の事心配してんねんで?」


また無理して起き上がるちぃちゃん。

僕の顔をジッと見て山崎君の顔を見て、湯呑みを手にした。


「少しだけ眠るだけや。な?」


湯呑みの白湯を飲む、彼女。途中で湯呑みが布団に転がった。


「ゴホゴホッ…馬鹿…丞。」ゴホゴホッ


「馬鹿で結構や。」


崩れ落ちる千夜を山崎君が支えて布団に寝かした。


「山崎君?」

「あぁ、こいつの事や

気絶しんようにクナイや刃物持たれたらマズイやろ?

だから即効性にしたんや。で、」


また山崎君が手拭いを取り出す。


「手拭いの睡眠薬?」


「せや、今日一日は寝かしてやらなあかんわ。

可哀想やけどな……

いやや、いやや言うてもな、いややだけじゃ、ダメな時もある。

まぁ、今日は寝かしときぃ。なんかあったら呼んでや。

あぁ、

たまに咳出たら背中さすってやればええから。」


そういって山崎君は去っていった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ