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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
戻って来た幕末
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彼女の望み

「女の君に、手を上げ怪我までさせて、

本当にすまなかった。」


千夜の前で頭を下げた、近藤ら幹部達


頭を下げて欲しいわけじゃない。

違うんだよ。

私は、此処に、貴方たちと一緒に居たいだけなのに…

もし、ココで許せば、私は、此処から追い出される。


「………。嫌です。」


頭を下げるのをやめず、


「君の怒りはもっともだ。慰謝料なら払おう。」


払う金なんてないのに、そう言った近藤さん。

慰謝料なんて、要らない。


「だから、この件は、水に流してくれないか?」


京に来て、清河に裏切られ、浪士組は、京に残れるかわからない状況。無実の、しかも女を拷問したとなれば、幕府からのお叱りがあっても可笑しくはない。

だから、こんなにも必死なのだ。


でも、私も、引くわけには、いかなかった。


「嫌です。」


皆が、驚きの表情で私を見た。


「では、俺たちは、どうすれば…」


と、周りを見渡す近藤


困った近藤を見かねて土方が口を開いた。


「……。何が望みだ?」と……。



静まり返った部屋の中、彼女の答えを待つ男達。


「私の望みは…、浪士組への加入。それだけです。」


その言葉に、皆、目を見開いたのだった。


「ーーっ。な、何言ってんだよ!お前、女だろう?」


と、藤堂が口を開くが、すぐに周りを見て


「……ぁ…。い、や。

気づかなかったのは、確かだけどよ…」


「嬢ちゃん、そんな、細え腕で剣術なんて無理だ。

女は、女の幸せってのがあるだろう?」


と、説得する様に話しかける永倉だが



「そんな幸せ、ーーいりませんから。私。」


そう言った女。


「ーー覚悟はあるのか?」


そう言った土方の視線は女を見定めている様子で。

その視線と合わせながら

女は、「はい。」と返事をしたのだった。


短く息を吐き出した土方は、天井を見て


「山崎!」


そう声を出した瞬間


シュッ!タンッ!タンッ!


布団に突き刺さるクナイ。

しかし、そこには女の姿はない。


そこに現れた黒装束姿の山崎。

あたりを見渡す山崎だったが


「……甘いね。」


山崎の首に突きつけられた、彼のクナイ


その部屋にいる者達は、皆、口をあんぐりと開き

その様子に、ただ、ただ驚いた。


「山崎君が、後ろを取られるなんて。」


信じられないと言った声が上がり


「何モンや、お前。」


首に突きつけられたクナイを見て

女へと視線を向けた山崎。


「私の名前は、千夜。

ーー同業者。とでも言っとくよ。山崎烝。」


「! !ーー俺の名前を…っ!」


「クスッ。知ってるよ。

此処に居るみんなを、——私は、知っている。」


山崎の首に突きつけられたクナイ

布団を見れば、引き抜かれた様子は無い。


という事は、刺さる前に、奴はクナイを掴んだという事になる。相当の手馴れじゃなければ、それは、不可能。


その時、土方と視線が合った山崎。

土方は、小さく首をしゃくった。


「降参や。」


両手を遠慮がちに上げた山崎

ゆっくりとクナイが首から離される。


ニヤリ笑った山崎。腰にあった刀を引き抜き後ろに勢いよく振り回した。風を切る刀は、何も斬ることなく

ピタリと止まった。


「……っ!」


「死んでもいいかな。って思ったんだよ。」


山崎は、自分に突きつけられた短銃を見て、動きを止めた。


「…けど、死ねない理由が、出来ちゃった。」


ーー彼らと一緒に、明治を生きたい。


「山崎、もういい。」


「……っ。御意。」


悔しそうにそう言った山崎。彼の刀は、鞘に納められた。


「お前の話を聞いてやる。」


ズルッとその場に座り込む女


「あいつ、怪我しててあの動きかよ。」


女の前に歩み寄る土方


「お前、どこのもんだ?」


「クスッ。私は、土方歳三の懐刀です。」


「………」



「今からお話しする事は、嘘偽りない事実です。

貴方達が、信じようと、信じまいと、構わない。

話しをしても、いいですか?」


「……。あぁ。」


女は、話し始めた。


幼い時に、土方歳三に助けられ共に過ごし剣術を習った事

試衛館に出入りをし、近藤、沖田とも知り合いだった事

食客だった三馬鹿と山南の話し

浪士組に観察方として参加した事


それから共に土方らと過ごしてきた事

そして、大きな戦があり、自分だけ生き残ってしまった事


それから、ずっと死ねずに姿が変わらず150年以上生き続け、未来から時渡りをした事

全て、信じられる筈ない話し。


だが、彼女の目は、嘘を吐いてる様にはみえなかった。


「……それが、全てです。


私は、此処に貴方達に会いたくて、此処に、来ました。


貴方達が私を覚えて居ないのに、会いに来た。

なんて、信じるはずない。だから、言えなかった。」



震える手。肩で息をする女

目は虚ろで自分を映す碧い瞳


「もういい。怪我をさせたのに、無理させて悪かった。」


返事をするかの様に笑みを浮かべ

彼女はそのまま、土方の方へと傾いた。


それを支える土方。その身体は、熱く、眉間に皺を寄せる。


「山崎!治療してやれ。」


「はい。」


「信じるんですか?今の、話し……」


「いや。信じてねぇよ。

ただ、無実の人間に怪我をさせたのは、確かだがな。」


「…………。」


「…………。」


「…あ、えっと、

どうする?コイツの部屋。」



暗くなった部屋の中を

なんとかしたくて、咄嗟に思いついた言葉を言った藤堂。


広間は、皆が集まり朝餉をする場でもある。


このまま、女を寝かせとく訳にはいかなかった。






















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