↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
長州の志士達
PR
105/281

虫歯


帰りも、将軍家茂公の警護だ。京に、上京する道中。コンクリートで道が整備されていない。

この時代の道は、砂利だらけで、歩きづらい。


千夜も、もちろん、将軍の護衛の真っ最中なのだが、行きは、将軍の籠すら見えない位置に居たのに、今は、新選組の真横に、将軍さまの籠がある。


そして、ニコニコしたケイキの姿に千夜は、脱力する。しかもこの方、籠にも乗らず千夜の横を歩いてる。突き刺さる家臣らの視線は、相変わらず痛いまま。


新選組はまだ無名。名を轟かせるのは、池田屋事件。名を知らぬ者たちが、将軍の籠の横に居るのだから、その視線を浴びるのは、致し方ない。

千夜の中に、迷いが生まれたのは、この頃だった。

はじめ、長州に新選組を持っていって、薩長同盟に参加する予定だった。


ケイキ、いえもち君。


二人とは、血縁関係があるからか、助けたいと思ってしまった。幕府は衰退していく。

何をどうすればいいか、わからない。


ブツブツと、考え事をして歩く千夜を見て

藤堂は、土方に話しかけた。


「ねぇ土方さん?ちぃ、何、呻いてんの?」


「うーん。」


と、何やら考えてるらしい千夜をチラリと見て

小さな、ため息をもらした。


「わからねぇが、———おい、ちぃっ!」


少し控えめに言ったつもりだったが


「はひ! ?」


千夜は、驚いた上に噛みやがった。


「今は、警護中だ。」

「……ごめん。」

「ちぃ、口大丈夫か?」

ケラケラ笑う藤堂。

みんな真剣な中、そんな事をしたら、さらに突き刺さる視線に、みんな黙るしかなかった。


*


しばらくして、やっと休憩。

それでも、警護は解かれる事はない。


「いえもち君、籠の中大丈夫?」


行きに熱中症にかかった、将軍の体調を気にかけた千夜は、籠を開け放ちながら声をかけた。


「あぁ、椿か。大丈夫だ。」


竹筒の水を渡し、水分を取るように促す。

私は、千夜だって言ってるのにな。


「いえもち君は、佐幕?」


悩んでたからか、唐突に、そう、聞いてしまった。


「椿は、本当、可愛いな。」


そんな事、聞いてません。なんなんですか?人が悩んでいるのに。


そう思っていたら、急に、自分の頬に手を当て顔を顰めた将軍。


たしか、虫歯が酷かったって、、、。読み漁った、歴史書に書かれていた事を思い出す。


「歯、痛い?見せて?」


顔を近づけてくる千夜に、将軍の顔は、赤く染め上がる。


///


いや。顔を赤らめる意味がわからない。


「歯、見るだけだよ?」


口開けて?と、お願いすれば、なんとか口を開けてくれた。


歯を診る千夜だが


————…あれ?虫歯があんまりない?


確か、31本中30本が、酷い虫歯だと書かれていた。今、二、三本は確認できたけど、それ以外は、虫歯らしきとこはない。



————…なんで?


死ぬまでに増えたとしても、そんな、病になるぐらい酷く、しかも30本も増えたりしないもっと、酷いかと思っていたのに。



これを意味する事、家茂君は、病気で死ぬのではなく、暗殺されるんじゃないか?


なんで?だって、いえもち君は、13歳の時から将軍になって家臣からも慕われてた。


いえもち君が死んだ時、


『今徳川は死んだ』と言われた程だ。


暗殺される理由がわからない。

歯を見終わり、

「ありがと。」と、言った千夜は、どこか、上の空で、家茂は、先ほどの千夜の問いを思い出し「椿、俺は尊王攘夷だよ。」そう、告げた。


将軍が、尊王攘夷を掲げている。

おかしいか?と、言われたら、おかしくはない。


ケイキも尊王攘夷。将軍だからって、佐幕を掲げているとは限らない。ただ、口にしないだけ、家臣達が迷わないように。


そんな大事な事を、私は、今、聞いてしまった。



「ごめん。」

「椿、おいで? 」


ふわっと、抱きしめられる。


こんな警護がたくさん居る中で、、、。

そう思ったけど、引き離せなかった。


いえもち君の手が、僅かに、震えていたから。



震えた体を、抱きしめ返してあげる手を、私は持っていない。


幕府を利用しようとした。あわよくば、裏切ってしまおうと考えた私に、————そんな手や腕はない。


どれだけ、いえもち君が悩み、苦しみ将軍に居るのか、今頃、気づいた。


将軍だって人間。自分の思想すら、押し殺さなきゃいけない。自分の考えなんて通らない。好き勝手に生きれない。それを13歳の時から


将軍だから、自由気ままって訳じゃ無かった。


私なら耐えられない。そんな重圧を抱えた、いえもち君。

「————…ごめんなさい。」



それしか、言葉にしてあげられなかった。



****


護衛を終え、壬生の屯所にやっと戻ってきた。


頭の中は、幕府、長州、尊王、佐幕、攘夷、開国。いろんな思想を持ちながら、共に同じ国で生きれないのだろうか?


そればかりを考える。


LOVE&PEACE。そんなので、世界は平和なんかにならない。


こんな言葉、平和だから言える言葉。


刀振り回されて、愛を語ってたら、ただのバカだ。愛があれば平和に、なんて、なるわけない。


「ちぃちゃーん。おかえり~」


屯所の門間で着けば、ガバッと効果音がつくほど勢いよく、飛びつかれる。

そのまま見事に、地面に押し倒されてしまった。


犯人なんてわかってる。


「ちぃちゃん、ちぃちゃん!」


総ちゃんだ。


大型犬じゃあるまいし、やめてくださりませんか?頭おもいっきり打ったし、


「総ちゃん、痛いよ。」


倒れたまま文句を言ってみる。


「おかえり、ちぃちゃん。」


満面の笑みで、お出迎えしてくれた。今の総ちゃんに、文句なんて通用しなかった。


「ただいま。」


寝転んだまま見る空は、青かった。


青い、青い空。清々しい程だ。誰も争いなんて望んでないのに、なんで、話し合いという方法では、解決しないのだろうか?


どうして、殺し合いと言う選択肢しかないのだろうか?



「総司!屯所の真ん前で、ちぃを押し倒してんじゃねぇ!ちぃもサッサと起き上がれ!」


————騒がしい。


「なんなんですかぁ?

土方さん、ちぃちゃん独り占めしてさぁー」


口を尖らせて言う沖田だが


ちげぇだろ?


「いつ、俺が独り占めした?あぁ?

将軍様の警護に行ってたんだよ!仕事だ!」


「さぁ、ちぃちゃん、鬼がなんだか騒いでるから部屋もどろう?」


え?は?怒らせたのは総ちゃんだよ?


「帰って早々これだよ。」


呆れた平ちゃんの声。


「まぁ、元気な証拠ですね。」


ため息をつきながら、山南さんの声がつづいた。


「騒がしい思うたら、門の前でなにしとるん?」


呆れた山崎


「おー帰ってきたのか!おつかれさん。」


原田の声が聞こえる


「————…眠い。」


「おい、ちぃ!そんなとこで眠るな! !」


だって、みんなの声がして、


青空の下だし、お昼寝にはもってこいだよ?


やっぱり、みんなが居る屯所が一番落ち着く。


「……」


「おい、ちぃ?」


静かになった千夜。


「あー!ちぃちゃん寝ちゃった!」

「……」

「……」

「……」


スースー


マジか! !



「おいおい。千夜には、危機感ってもんはないのか?」


「本当によく寝る子ですねぇ。」

「ちぃちゃん可愛い!」


「まぁ、俺らいない時、不逞浪士の撃退もしたしな。あれ、ほとんど、ちぃが仕留めたし、疲れたんだろ?」


「え?ちぃちゃん戦ったの?」


なにそれ、僕きいてないんだけど?


「あー、俺は見てねぇけどな。はじめ君が一緒だった。」


斎藤にみんなの視線が向けられる


「————…なんだ?」


斎藤に、不逞浪士との戦いでの、千夜の様子を語らせるのは無理みたいだ。


「すごかったですよ。千夜さんは、敵を一撃で確実に仕留めて、しかも銃でも、外さなかったですからね。」


私も助けられました。そう言った山南。


「見たかった。土方さん、やっぱりずるいですよ!」


ずりぃとか、そういう問題なのか?


でも


「舞ってるみたいに戦ってたぞ。あれは、かなり綺麗だった。」


「はぁ?やっぱりずるいです!」


「ああ、あれは————ズズズ」


「はじめ君、鼻血!」


「なに想像したの?僕かなり気になるんだけど!」


「ああ、すまない。————…のぼせた。」


なにに、のぼせるのさ!涼しいよ?今10月!


「俺もみたかったなぁー」


そんな藤堂の声に、皆が頷いたのだった。




















































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。