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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
長州の志士達
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将軍御乱心?

 

文久三年十月。将軍が大阪に下るため、新選組は警護にあたる事となった。警護と言っても、将軍様は、かなり遠い場所に居るわけで、ただ、長い行列について行っている感じだ。

こんな所で、いえもち君なんて呼んだら、一発で死ねそう。


「ちぃ?お前、大丈夫か?」


「…あ?っとごめん、ボーっとしてた。何?」


まさか、将軍の名前で、考え事してたなんて、言えやしない。


「大丈夫か?って聞いたんだよ。」


「うん、大丈夫だよ。でも、今回、近藤さん来れなくて、残念だったね。」


近藤さんは、会議の為、京に残った。

かなり、来たがってはいたが………。


「あー。行きてえって、ガキみたいに、泣きつかれた。」


近藤さんらしい…すぐに想像できる光景に、ただ笑った。


「総ちゃんも留守番だからねー。」

「あいつは、この前問題起こしたからな。」


力士の事か。

で、結局、今回の警護のメンバーは、よっちゃん、山南さん、新八さん、平ちゃん、はじめ

と、平隊士だ。

急に、動きを止めた大名行列。

ざわざわと、前の方が騒がしい。


「なんかあったのかな?」


普通に考えて、将軍に何かあったか、奇襲にあったか、どちらかだ。


『将軍が!』


そう、聞こえてきた。


慌てた私達は、どうにか、将軍の籠まで近づいた。奇襲かと、思われたが、将軍の籠が開け放たれてるのを見て、千夜も土方も、ホッと胸を撫で下ろした。


「奇襲じゃ、ないみたいだね。」

「あぁ。でも、将軍様を見られるとは、思ってなかった。」


この時代、普通、将軍なんて目にする事は出来ない。開け放たれた、籠。そこから見える、いえもち君は、煌びやかな着物を着ていた。顔色は、悪いな。放置されてる将軍。近くに医者が居るが、誰だろ?背伸びをして、医者が誰かを見る千夜。


「松本先生?」

ざわざわしてる中、私の声は、よく通ったらしい。将軍の周りにいた幕府の人たちに、刀を一斉に、突きつけられた。


「…ちぃ、お前は…」


土方の呆れた声が、耳に届いた。

新選組は、まだ有名じゃない。だから、警戒されても仕方ないんだけど、だったら警護に呼ばなきゃいいのに。とは思うがこればっかは仕方ない。


「ん?あぁ、千夜君じゃないか。君達、刀を下げなさい。」


松本良順先生が、私を覚えていた…?

なんで?

向けられていた刀は、下げられたけど、今度は、みんなの視線が痛い。

「…知り合いか?」


後ろから、よっちゃんの声。


「うん。松本良順先生だよ。」

過去では、会った事があるが、

この世界では、初めまして。の筈なんだけど?


「千夜、来てくれ!」


突然、来てくれって言われても…。


「は?」


いやいや、何処に?


「私には手におえん。手を貸してくれ。」



「いいけど、周りの警護、新選組に変えて。

今、すごい視線が痛い。」



周りの警護を、新選組に変えてもらって、私は、いえもち君に近づいた。

多分、熱中症だ。こんな籠の中にいたんだから、無理もない。とりあえず、首やら、冷やせる場所は冷やし、彼の帯を少し緩ませた。


「……椿……」


「私は、新選組、芹沢千夜です。家茂様。」


フッと笑って、「そうか…」と言った、いえもち君。


「水飲めますか?」

「あぁ、少し楽になった。お前の…、仲間か?」


周りの新選組隊士達を見て、少し、悲しそうな表情をした、いえもち君…

どうしたんだろうか…?


いえもち君と、私は、年が近い。私は、だいぶサバ読んでますが…生きてたのが、150年以上ですからね。数えるのヤダよw


いえもち君に敬語で話すのは、嫌がられてるけど、この場で、敬語使わなかったら敵も味方もあったもんじゃない。みんな、気がたってらっしゃるから…。


将軍様の近くに、千夜がいるなんて、前代未聞。名も知らない護衛が将軍に近付くなんて、と。周りの家臣や土方らは、気が気じゃない。


千夜からしたら、ただの友達だし、それ以上はないのに………。

しかも、治療してるだけで、色仕掛けしているとみなされる。治療を手伝ってるだけなのにだ。相手は将軍……



いえもち君の脈を診たり、汗を拭いてやったり、必要以上に触れない。周りの視線が痛すぎる。


大体、松本良順先生が悪いのだこんな大勢居る中で治療など…

ふわっ、と抱きしめられる感覚に、思わず、ため息がこぼれ落ちた。


————私、男装したままなんだよ?


「家茂公っ! !」


いえもち君に、抱きしめられた。


あーあ。家臣達が凄い形相で、こちらを見ている。今にも刀抜く勢いなんですけどっ!


上様御乱心?笑えないよ…


「……椿……」


何かに縋るように、私を抱きしめたまま離さない。


「上様に何を!」


いやいや、どう見ても私の腕は、いえもち君を触ってもない。


「上様は、気が滅入ってらっしゃるのだ。治療を手伝ってもらっているのに、言いがかりをつけるのはやめよ!」


松本良順先生の太い声がその場に響いた。

なんとか、家臣達は黙ったが、助かったのか、助かってないのか、視線は相変わらず痛いまま。


「…新選組…」


「どうしました?」


「新選組に会ってみたい。」

ダメか?


なんだか、子犬の様に見えるのは…私だけだろうか?


辺りは騒めく。ふわっと笑った上様を見て。

「喜んで。」と、笑って答えた。


将軍だからと、偉そうにしない彼。だけど周りは、決まり事で縛り付ける。それは、全て、彼を守る為だと…それは、本当に彼を守る為なのか?将軍に、幕府に、生まれたから自由がない。そんなの……辛すぎる…。


周りが縛るなら、私は、少しでも、その鎖を断ち切りたい。


































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