セイチョウ
「よし。結構狩れたな」
先程の方法で、ビッグピッグを効率的に狩る事が出来た。Levelも上がり、ステータスポイントとスキルポイントもある程度取得出来た。
取得したステータスポイントをAGIとDEXに、スキルポイントを髑垂に振る。
(なんだか体が軽くなった気がするな...)
上昇したステータスが、身体への変化をもたらした。
その実感の為、近くに沸いたビッグピッグへと意識を向ける。
ビッグピッグはカナトの敵意を察知し、顔を向けた。
地面を蹴り、ビッグピッグへ向けて走る。
先程までと比べ、風を切る速度が上がっている事を体感する。木剣を振りかぶり、一番ダメージが入るであろう眉間へと振り下ろす。
「プギィィイイァァア!!」
動きが遅く、狙い易いという事もあるが、ビッグピッグの両目の間に綺麗に木剣が打ち付けられた。
(狙った場所に剣が滑るように打てたッ!DEXに振ったからか)
「ブゥブッブッブ、ブビィィィ!!」
怒りに任せてビッグピッグが突撃してくる。カナトはタイミングを見計らって地面を蹴る。突進してきたビッグピッグの頭上を越える瞬間、その体に木剣を打ち付けた。
(体が軽いッ!すれ違い様でも剣をふれる!これがステータスの力か)
自分の身体能力の変化に驚きつつも、ビッグピッグへの意識は切らさない。2撃を喰らい、少し弱ったビッグピッグがまたしても突進してくる。
今度はビッグピッグの左側に潜り込むように転がる。すれ違い様に鋭い剣戟を左脚に浴びせた。
その後も何度かすれ違い様の剣戟を浴びせると、ビッグピッグの体は白い光に包まれて消えた。
(よし!このままAGIとDEXにステータスポイントを振って俊敏な動きと正確な剣戟を手に入れて、髑垂のスキルの力でSTRとVITを補っていこう)
カナトの中で育成の指針が出来た。そうなると、自ずと次にやる事が見えてくる。
新しい武器、防具の取得だ。
先程見かけた男子のように、RMTで手に入れる事も頭をよぎった。この日の為に、カナトもそれなりに小遣いを貯めていた。
が、髑垂のスキルにある【装備の必要STRとVITを軽減する】という部分が気にかかっていた。軽減とは、どの程度なのであろうか?
(軽減率が分からないうちに下手に装備を買っても、装備出来なかった時が怖いな...王都に行けば、お試しで装備出来たりしないかな?)
髑垂の王の力についてより深く理解する為、一度アリストラに戻る事にした。
(でも、どうやって戻るんだ...?)
狩場に来る時にはどこでも宿屋からの転送で来たが、肝心の帰り方が分からなかった。やはり、MMOにおいて情報は非常に大切な物である。
周囲のプレイヤーを観察する。
しばらく周りの新人を見ていると、ビッグピッグを狩る事なく、座って休憩をとっているであろう集団がいた。
(あの人達に聞いてみるか)
集団に向けて歩みを進めた。近づくと、カナトと同じく初期装備に身を包んだ男子の新人4名が、楽しそうに談笑していた。
「こんにちは。ちょっと聞きたい事があるんだけど、いい?」
突然の見知らぬプレイヤーからの言葉に、一瞬驚いた表情をして顔を見合わせた4名だったが、その内の1人が若干警戒しながらも返答をした。
「いいよ。何?」
「ありがとう。王都に戻りたいんだけど、どうしたら戻れるかな?」
「あーやっぱり!?やっぱそこ気になるよね!?おれらも知らなかったから、さっき他のパーティに聞いたんだよ!なっ!?」
カナトの質問で警戒心が解かれたのか、表情が明るくなった4人は口々に「分かりづらい!」「不親切な設計だ!」などと冗談めいて言った。
「アリストラに帰る方法はだな、ずばり!歩いて戻る!な?信じられないだろ?行きはヨイヨイ帰りはコワイって感じだよな!」
1名の発言に他の3名が笑った。
「じゃああの城壁に向かって歩いていけば良いって事だね」
「そうそう!城壁沿い歩いていけば、結構な感覚で城門があるんだってよ!だからとりあえずあの城壁まで行けばいいらしい!」
「分かった。ありがとう」
「おう!新人同士、頑張ろうぜ!」
他の3名も片手を挙げて「頑張れー」「また会ったら宜しくな」「気をつけて行けよ!」と、挨拶を送ってくれた。
4名の新人仲間に別れを告げ、カナトは城壁に向かって歩みを進めた。カナトの新しい力となる装備を求めて。




