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鈴の音を聞きながらBサイド  作者: セオドア.有羽
5/30

6分間だけの恋人1

3月のまだ肌寒く少しだけ優しい風が僕の頬を撫でていく。

あれから僕とマナは毎日の様に連絡を取り合い、お互いの仕事のズレもありながらおはようとおやすみは必ず言い合うようになった。週に一度電話で話し幾度となく二人で会いたいねと話し合う。月末になるにつれ彼女の仕事は忙しさをまし、休みの日に電話で話していてもそのまま寝落ちする事もあった。彼女の寝息を聴きながら僕は静かに

「マナ…大好きだよ。誰よりも…この時間がずっと続けばいい」

そう告げた。

少し前から僕は夜中に急に目が覚める事が多くなった。長時間熟睡出来なくなったんだ。最初は体調不良かと思ったのだけど、

どうも違うようだった。今にして思えばマナとの不安定な関係と2月に起きた出来事からいつかまたマナが自分の手を離れてあの人の元に行くんじゃ無いかという不安な気持ちがそうさせていた。

未だ僕は妻とは連絡が取れず、形式上既婚者のままだった。つまるところ今の段階では二人の関係は不倫になってしまう。離婚する事はきっと変えられないだろうから問題は無いのだけど、そんな後ろめたさからか僕は二人の事を誰にも打ち明けられず、一人の時間があるときに悶々としていた。

SNSでマナがやり取りしている人は軽い調子でマナ事エミリさんを口説いている。

それを見て自分の立場に優越感ではなくて羨ましいさえ思えていた。SNS上で僕らの関係は秘密だったから表立って仲良くしすぎないように気をつけてやり取りをした。

マナの忙しさですれ違う事が多くなった中でSNSはマナの状況を知るツールになっていた。だからこそ彼女のメッセージ送る言葉の温度の違いがわかるようになってきた。どの人がお気に入りでどの人が苦手なのか。まあ曖昧だったけど。

僕の仕事は朝が早かったから当然のことだけど夜も早かった。

マナが

【ともは早く寝なきゃだよ】

と気を使って言ってくれてる事が最初は嬉しかったのだが、すれ違いが多くなるにつれて少し厄介な感じに思えてきた。彼女の優しさはわかっているのに、もう少し時間が欲しいと思う気持ちが良くない方向に気持ちを誘導しようとしていた。

何度となく辛い言葉を彼女にぶつけてしまって後悔する事が多くなった。

季節は巡り春がくる。自分の中で僕らはずっとは続かないかも知れない覚悟ときちんと向き合って次の段階に進みたかった。だからこそ会って直接顔を合わせて約束を果たし言葉を交わしたかった。彼女の顔を真正面から見つめて色んな想いがこもった“愛してる”を告げたいと思っていた。

しかし僕らはどこかで食い違っていたのかも知れない。長い間連休をはさみ季節は夏に向かおうとしている。だんだんと僕の仕事も忙しくなってすれ違いは多くなっていた。SNSのダメなとこはこんな時に見ると疑心暗鬼を引き起こす事だ。そこに綴られた事だけが真実ではない。それはわかっていても、彼女が発信する誰かへの想いは酷く僕を苦しめた。マナの中にはまだ彼がいる。わかっていてもやるせない気持ちでいっぱいになった。

不意に深夜0時に話したいと連絡が来たのは、僕が仕事でむしゃくしゃする事があった日だった。僕は一旦眠って夜中に起きマナに電話した、

「とも…とも…」

電話の向こうで何かに押しつぶされ泣きながら話すマナに僕は大丈夫だよと告げることしか出来なかった。

「最近ね…あんまり話せないから…迷惑じゃ無いかって…仕事もね…全然上手くいかなくて…ダメなことばかり考えて…」

「マナ大丈夫だよ。俺はちゃんと受け止めるから。まだ離れたりしないから。」

「うん…うん…とも…寂しいよ。」

こんな時に距離が恨めしい。そばに行って抱きしめてあげることが出来ない辛さ…抱きしめてもらえない辛さ…両方が僕の心を重くした。そして不意に寂しがり屋の彼女に遠距離の自分が恋人になってたくさんしてあげれない事の方が多いのに良いのだろうかという問いかけが頭の中を駆け巡った。

上手く寝れないと肝心な時に思考能力が働かない、その頃からマナには近くにいて寂しい思いをさせない人のほうが良いのかもしれないと思うようになっていった。

馬鹿な考えだった…だけれどその時の僕に彼女にとってそれが一番なのだと思ってしまったのだ。例え自分が傷ついても…

こうやって思い起こすと自分が恋愛ベタなのが悔やまれる。だけど何よりマナにはいつも笑って欲しい。そんな願いが僕を馬鹿な行動に突き動かした

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