あの日僕は晴れ間の広がるとこに君を連れ出したかった4
ふと気がつくと時計が3時を指していた。
もう一度時計を見直してほぼ一日寝ていた事に気がついた。寝すぎたなと重い身体を引きずって冷蔵庫から取り出したお茶を一気に飲み干す。昨日の事は夢だったんじゃ無いかと思ったが、テーブルの上に置いた財布と共にあの女の子から貰ったハンカチがあるのを見てそうで無いのを実感する。
ベッドに戻り携帯を確認するとマナから何度か着信が入っていた。 そして…
【話したい事があるから明日連絡ください】
とメッセージが入っている。
今すぐにでも連絡したかったが流石にこんな早朝に連絡するわけにいかず、
【夕方の4時に連絡する】
そう送信してシャワーを浴びセットしておいたコーヒーと味気のないパンをかじって空腹を満たした。食事をしていなかったが不思議とすぐにお腹が満たされた。
時間までSNSを見ながらフォロワーさんの呟きにコメントを残す。
俺が呟いたあの大きな駅の写真にいいねがたくさんついていてびっくりした。
仕事着に着替えバスを待って職場に向かう。どこかうわの空の中でやり遂げた仕事は珍しく上司に褒められた。無心とはこんな事なのかも知れない。
仕事が終わりになって彼女にメッセージを送った。すぐに彼女から連絡がくる
【とも…こっちに来てたの?どうして?昨日連絡取れなかったけど大丈夫なの?】
【声が聞きたい…】
それを見て僕はすぐに彼女に電話をかけた心臓は割れんばかりにバクバクいっている。
「はい」
彼女の綺麗な声が耳の中を駆け巡る
「とも…大丈夫?何があったの?」
そして僕は一昨日の顛末を彼女に打ち明けた。
「ごめん、迷惑だったよね。でもどうしようも無かったんだ。」
「ううん。嬉しいよ。会えなかったけどともは会いに来ようとしてくれたから。正直そんな事する人だって思わなかったから…」
「とも…聞いて…彼とはどうにもならなかったよ…ごめんね、やる事はやったんだけど、ともの事が頭に浮かんで全然気持ちよく無かった…」
「そっか…良かった。」
「ん?」
「マナがその人と付き合う事にならなくて良かった…」「…うん。」
「もう少し俺のそばにいて欲しい」
「うん…」
「マナ?」
「お願いがあるの…」
「ん?どんな?」
「ともは今そんな状態だし…私も上手く行かなくて…だから少し時間が欲しいんだ…」
「わかった」
「それともし私達が上手く行かなかったら冬になったら私を思い出して欲しい…それだけで良いから」
「わかった。その時は寒くなればマナを思い出すよ。ずっと、ずっと」
「二人だけの秘密だね」
「うん。大切な約束だね」
「とも…今度は私が会いに行くね。仕事が忙しくなるからすぐには無理だけど」
「本当に?やったー。待ってるよ。会えたらマナを抱きしめたい。」
それから僕は10キロの道をバスを待たずマナとの会話に費やして歩いて帰宅した。
その間、マナの相手の事をあーでもないこーでもないと話し人気の無いとこでクサイ台詞を言ったりもした。
数十分の時間があっと言う間に流れた。
その時はただただマナとまだ繋がっていれること幸せに浸っていた。だけれどこの日の出来事が僕の胸に大きな傷をつけていた事に気づいたのはそれからかなりたってからだった。
季節は3月に向かおうとしていて春を告げる暖かな風が時折ふいていた。
季節は巡ろうとし僕らの関係も少しだけ変わろうとしていた。




