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鈴の音を聞きながらBサイド  作者: セオドア.有羽
3/30

あの日僕は晴れ間の広がるとこに君を連れ出したかった3

“藤代智樹”まだ使えたクレジットカードのサインに自分の名前を書きながら僕はチケットを受け取った。18時24発の僕が始めて乗った新幹線は東京へ向けて走り出した。今から5時間の旅だ、ただ何のプランも無い旅。

先週マナは自分の事について教えてくれた。去年知り合った人と恋人でも友人でもない関係であった事、自分が強い想いがあった事、11月にその関係が一旦終わった事。そして2月のこの時期に再び連絡があった事。

SNSとは不思議なもので遠くにいても話していると距離を感じずに済む。だけど一旦そこから離れて個人通しの関係になれば話は別だ、九州と東海。その距離は重くのしかかる。大事な話があると彼女に言われ始めて電話で話した。想像していた以上に彼女の声はまるで鈴の音の様に綺麗で僕の心を鷲掴みにした。だからこそ彼女の告げたい言葉は心を深く突き刺した。

「彼が週末会いにくるって…私達付き合うかも知れない…」

「マナ…行くなよ、俺のとこにいてよ」

どうしようも無いとわかっていて僕は懇願してしまう。「だって…ともは会いには来ないでしょ?彼は来てくれる。だから断われない…ごめんなさい」

そう言って切れた電話を耳に当てたまま僕は知らず知らずに大粒の涙を流していた。

最初は沈んでいた彼女を慰めるだけのつもりだった。自分の今の状況と二人の間を隔てる距離がお互いが恋人になるという事が難しいとわからせていたのに…

金曜日の仕事を終え僕は上司に急用で明日休まなければいけなくなった事を告げ帰宅して着替えると新幹線の到着駅に急いだ。

行ったから何が出来る訳でもない。

大体連絡がとれる見込みも無かった。

それでもその衝動を抑えきれず僕は列車に飛び乗った。今考えると彼女に一言連絡を入れておけば良かった。だけれど僕の頭の中にはとりあえず彼女が住む場所に行く事だけが優先されて思い付きもしなかった。

乗る前に買った文庫本を読み終える前に駅に着いた。

これからどうしたらいいんだろう…

そこで自分が何も考えていなかった事に気づく。あくまでもドラマでは無いのだから偶然的に彼女にあえるなんて事は無かった。頭の中でドラマの主人公はどうして行き先もわからず駆け出して上手く相手にたどり着けるのだろうと宛もなく街を彷徨った。一度電話をかけてみたけれどやはり彼女は取らなかった。

胸が痛くて呼吸が苦しい、目の前が真っ暗になった気分で自分の無力さを痛感する。

ついに僕は駅前のベンチにしゃがみ込んで泣き出してしまった。

これで良かったんだ…彼女は幸せになるんじゃないか…また笑うんだ。それで良いじゃないか…そう何度も何度も自分に言い聞かせた。不意に目の前に白い物体が現れた。見上げると背の低いショートカットの大人しそうな女の子が僕にハンカチを差し出している。

「大丈夫ですか?良かったらこれどうぞ。」

たぶん彼女からしたら精一杯の勇気で声をかけてくれたのかも知れない。差出した手が震えている。

「ありがとう、でも返せないかも知れないから悪いよ」「あっいいんです。ハンカチだけはたくさん持ってるし、そんなに新しいやつじゃないんで」

そう言われて僕は彼女から受け取ったハンカチで顔を押さえる。

「何があったかわからないですけど、元気出してくださいね。みっともないでよ大人の人なんだから」

彼女は精一杯に笑って話しかけてくれた

「それじゃあ、私行かないと…ハンカチ要らなくなったら捨ててくれて構いませんから」

そう言って彼女は遠くへと駆け出して行った。

「大人なんだからか…」

僕はとりあえず動き出したかった、もう今出来ることは何も無いかも知れないけど、もしマナから連絡がきたらどんな結果であれ受け入れよう。

地元とは違う大きな駅の写真を撮ってSNSに投稿した。始発の新幹線が動くまでインターネットカフェで時間を潰し始発の新幹線を待って帰郷することにした。特別に意味のない行動をしたのは自分でもよくわかっている。深夜に長い間外にいたからか電車の中で少し気だるかった。

帰宅して熱を図ると体温計は38℃を示している。それを見て急に頭がぐらつき始めた。着替える事も出来ずに倒れ込んで眠ってしまった。何度もなっていたはずの着信音にも気づかず僕はこんこんと眠ってしまっていた

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