君が紡ぐ鈴の音を聞きながら6
4月の沖縄は割りと過ごしやすかったが茉奈の体力も考え、咲花一人で観光する事になった。
主催をしている航空会社関連のホテルに泊まったので会場へは送りのバスを用意してくれるらしい。
茉奈が水族館に行きたがったが智樹がなんとか説得して近くの浜辺に行く事で妥協した。
その間手持ちぶさな咲花が観光に廻る事になった。
「う~ーん、海辺の風って気持ちいいね」
ここ最近の茉奈はいつもより体調が良かったから観光に行けないのを少しスネていたが機嫌が戻ったようだった。
「とも…ありがとうね。いろいろ頑張って貰って」
「気にするなよ。」
「うん。ありがと」
二人でするとりとめのない会話。
お互いに何故か知り合った頃を思い出しながらまるであの頃に戻った様な気分になる。
この島に流れる不思議な時間が二人の記憶を呼び戻したのかもしれない。
お昼を過ぎ、ホテルの従業員から三時には出発する旨を伝えられた。
智樹が先に着替えを終えロビーで待つことになった。
不意にこれがまなの希望を叶えてやれる最後になるかもしれないと、寂しい気持ちのまま久しぶりに智樹はタバコに火をつけていた。咲花が嫌がるから極力控えていたが、今日はどうしても落ち着かなかった。
しばらくして、青味がかった紫色の浴衣に見を包んだ茉奈がやってきた。
智樹はその姿を見て初めて茉奈の写真を見た時の様な熱いモノがこみ上げてくる。
「茉奈…綺麗だよ。とても。よく似合ってる」
「ふふっありがとう。ともも似合ってるよ。今日はいつもより素敵。」
痩せて細くなった茉奈の手を握り智樹はバスへと歩きだした。
その後ろ姿を見ながら咲花はまるで自分だけがタイムスリップして若かった二人を見ているような気分になる。
(なんか、不思議…)
会場に着くと、開始が18時だった為しばらく出店を見て回った。
とも喜と茉奈はまるであの時出来なかった事を取り戻す様にはしゃぎ回った。
しばらくして、ホテルが用意してくれた場所に移動する。
沖縄の空に鮮やかな火花が飛び交い幻想的な風景を映し出した。
智樹の手を握る茉奈の手に力がこもる。
「とも…今日はありがとうね。私の願いを叶えてくれて。こんな短い間に沢山思い出を作ってくれて。いろいろ無理させたね。ごめんね…あの時無理にでも会っていたら…こんな短く無くても済んだのに」
茉奈は花火の方向に顔を向けながら話しかけてくる。
「どんなに短くても、どんなに辛い未来が来るとわかっていてもこの選択は俺が望んだものだから、幸せだよ。心から…こうして心から愛する人と時間を共有出来るのがどんなに生きることにおいて意味のある事か。愛してる…例え同じ選択をもう一度出来ても俺は同じ選択をする…君に出逢えて良かった。」
その言葉に茉奈が顔を智樹の肩に押し付けてくる。
「ありがとう。とも…こんな私に幸せを教えてくれてありがとう。私と出逢ってくれてありがとね、私も愛してる。人生で色んな事があったけど、今本当に幸せよ」
二人は少しの間見つめたい口づけを交わす。
咲花は花火の写真を撮っていたのだが不意にその瞬間をカメラに収めた。
花火の光がもたらす艶やかな光に映し出しだされた二人が咲花にはとても綺麗なものに見えた。
その晩。智樹と茉奈は寄り添って眠りにつき、翌日帰路に着いた。
こうして神様が最後にくれたプレゼントの様な時間は終焉を迎えた。
春が本番を迎えそこら中に命の息吹が顔を出している。
我が家に近づくたびに智樹の脳裏に浮かんでくる。
だけれどそう知っている。永遠はないのだと。
僕らの想いは永遠に繋がっていようとも、時間は残酷に過ぎていく。
どうか…どうか…と願ってもそれは叶うことなど無い。
二人が過ごす祝園のひととにもうすぐ終わりの鐘が鳴り響こうとしている




