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鈴の音を聞きながらBサイド  作者: セオドア.有羽
27/30

君が紡ぐ鈴の音を聞きながら5

「まさかあなたと話をする事になるなんて思わなかったわ」

「そう?あなたなら少しは予想していたと思ったけど」

「そこまでお見通しなんだ…じゃあ世間話は良いから要件を言って」

「そうね…彼の事をお願いしたいの」

「言われなくてもそのつもりよ。あの人の最後は私のものだから」

「いいわ。だけどこれから彼は辛い日々を送るだろうし、来年の今頃はきっと支えが必要になる…」

「そうなのね…なるほどね。それであの娘に彼を探させたのね。私に行き着くのをわかっていて。ズルい人。それを私に頼むなんて」

「…そうね…私はズルいわね…でもこうしないとその時に私は二人を守れないから」

「わかった良いわよ。でも彼の為。彼がそうである様に私は…彼に笑っていてほしいから。」


不意に麻美は夏の終わりの頃交わされた女二人だけの約束を思い出して、グラスに残ったアルコールを飲み干した。

(このことにどっちが勝ちか負けかなんてあるのかしら…)



ゆっくりと時間が過ぎていくように、ゆっくりと茉奈の身体は崩壊に向かっていく。

年が明けて2月も終わる頃には茉奈はあまり動き回れなくなっていた。

智樹の膝に頭を乗せソファに横になりながら茉奈がポツンと呟く。

「花火大会行きたかったなあ。」

「どっかやってないかな?何処かでお祭りは有るだろうし」

「ううん…夏のだよ。浴衣着てともと寄り添って見たかった…あの夏の雰囲気の中で見るのがいいの」

智樹がさっきからパッドを一生懸命にイジっている。

「ねぇさっきから何してるの?奥さん膝の上に乗せてエロ動画笑」

「バカ、違うよほら。」

そう言うと智樹はある花火大会大会の写真を見せた。

「ん?何これ?沖縄?」

「日本一速い夏の花火大会大会だってさ、ここ三年ぐらい休止していたのが今年復活するって」

「でも、ずっと先でしょ?行けないよ…」

「それがさ、4月10日の予定なんだよ。」

それを聞くと茉奈は上半身を起こして画面に釘付けになる。

「茉奈、ここまで頑張れるかい?」

「え?行くの?沖縄。」

「茉奈が大丈夫ならね。せっかくだし咲花も連れて三人で行こうか」

「うん。嬉しい。ともに前に見せた浴衣まだとってあるんだ。」

「あの紫柄の?」

「うん。なんやかんやで着る機会が無くて、でもなんだか捨てれなくてね」

智樹は茉奈の顔に活気が戻っていく様に見えた。

「じゃあそれに合わせて俺も浴衣を買わないとな」

「うん。私が見立ててあげるね」

グ〜〜不意に茉奈のお腹が大きな音をたてた。

「ヤダ、なんか安心したらお腹空いちゃった。」

「じゃあ軽く何か作ろうか?」

「うん。とものタマゴサンド。」

「わかった、わかった。ちょっと待ってろよ」

そう言って茉奈の頭にクッションをあてがって横にさせて智樹はキッチンへと向かった。

その背中を見ながら

(すごいなぁ。今年復活するって。なんか魔法みたい…とも…愛してる。)


こうして3月はなるべく二人は茉奈の体力を保つ為に使った。咲花は春休みが延長になると喜んでいた。



4月10日 沖縄琉球海炎祭


家族の最後の大きな思い出作りのため

4月8日から三人は沖縄へと飛び立った。




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