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鈴の音を聞きながらBサイド  作者: セオドア.有羽
11/30

遠い日の残骸を愛と呼べますか1

学校を終えた倉科咲花くらしなえみなは母の元に向かおうとして、先日頼まれた古い携帯端末を忘れた事に気が付いた。

(また、ママに相変わらずドジねって笑われちゃう)そう思いながら咲花はくるりと踵を返し家に戻った。

母娘二人暮し部屋は広くは無いが、唯一父が残してくれたマンションは、手狭ではなく父の書斎代わりの部屋を高校に入って貰ったから不便さは無かった。

ただ今は、母がいないというだけで凄く広く感じる。

母の病気が見つかって一ヶ月経たないのに、寂しくて寂しくて何度も夜泣いた。

こんな時こそしっかりしなきゃと思いながら、目尻に浮かんだものを手のひらで拭った。

母の頼んだ携帯端末を探していると、普段母が決して見せてくれない引き出しを思い出した。

いつもは鍵がかかっていたはず。

「まさか、ここじゃ無いよね…」

そう思いつつも引き出しを引っ張ると、中に母が言った携帯端末と、その下に今時珍しい手紙が何通も入っている。一通だけがむき出しのままだった。

咲花は好奇心からそれを手に取って、軽く目を通した。

【前略 藤代智樹様

お元気でしょうか?

私はこうやって、届ける予定の無い、貴方への手紙を何通書いたでしょう。

今でも、あの時会いに行けていたらと思い出して後悔しています。

貴方が最後に言ってくれた言葉。

私はおばさんって言われる歳になってしまったけど、約束通り会えたなら叶えてくれるでしょうか? 無理ですよね?私は貴方にあんなに酷いことをしたんだもの。

私の病気がわかってるから、貴方の事を良く思い出します。あの時私にも貴方にもっと踏み越える勇気があったなら、貴方は今も私の横にいて励ましてくれていたのかな。逢いたい。こんなに時間が過ぎてしまって。いつか会えると思っていたけれど、もう二度と会えないかも知れないから。

貴方に会いたい。こんなにも時間が過ぎてしまってあの時の自分の気持ちに気づくなんて。なんて私は愚かなんだろう。

こうやって出す宛の無い手紙にしかこの想いを書けないなんて 

愛を込めて   倉科茉奈】


藤代智樹? 咲花は一度も聞いた事ない名前だった。七年前に父が他界して母は女で一つで私を育ててくれた。

母が再婚をしないのは父への愛情だとずっと思っていた。

なのに…咲花は端末と手紙を鞄に入れると母の待つ病室へと駆け出した

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