表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ

春原葵(すのはらあおい)は戸惑っていた。


気付けば宙に浮かんでいるのだ。


文字通り、まるで宇宙のようなところで。


全てを飲み込んでしまいそうな黒の世界に、

赤や青、緑に紫といったいくつもの光が星の様に瞬いている。


見渡す限り何もない。ただ広く遠く、どこまでもその空間は続いていた。



浮かんでいるというか漂っているって言ったほうが正解だな…



現実的でないその光景に圧倒されながらも、俺はそんなことを考えていた。


何故自分はこんなことになっているのか。



某ベンチャー企業で働いている葵は、会社の業績が好調なこともあり、

それに比例して仕事に忙殺される毎日を過ごしていた。


元々は小さなゲーム会社で働いていたのだが、

学生時代にお世話になった先輩に誘われたこともあり、今の会社で働くこととなった。


所属しているのはスマートフォン向けのゲームアプリを開発運営する部署で、

25歳の若輩ではあるが、サービスが始まって1年以上経つコンテンツの企画チームと

新たなゲームを企画するチームのリーダー任されていた。


楽しくも苦労の連続で休む暇などない。


決して休みがないブラック企業というわけではなくホワイトなのだが、

兎に角やらなければいけないことが尽きないのだ。


朝から深夜まで仕事なんてのも珍しいことではない。


辞めたくならないの?と尋ねられることも少なくはなかったが

そんなことはなかった。



昔からゲームが大好きだった。


母子家庭で兄弟もいなかった俺ははひとりでいることが多く、

そんな孤独な時間を本を読むことで過ごした。


面白そうなものはジャンルを問わず片っ端から読む。


本はたくさんの知識を与えてくれ、孤独を埋めてくれる。


読書をしていないときも本から得たもので空想する。


そうすればさびしくなかったのだ。


中でも、少年がいくつもの困難を乗り越えて成長していくような冒険譚が好きだった。


そんな物語を追体験できるようなゲームの虜になるのに必要な時間は

ほんの一瞬であっただろう。


大好きなものを自分も作ってみたい、そう思い始めることも。


ゲームの不具合でネットでユーザー様に叩かれ、

詫び石と連呼されようとも、それができるようになった今に不満などない。



すまん、嘘だ。


こっちだってがんばっとんのじゃ!


糞運営とかゴミ運営とか無能とか言い過ぎやろ!!


そりゃ不具合なんてないに越したことはないよ?


俺やって自分がやってるソシャゲでそんなことあれば文句言うで?


でも!でもさ!!!



話が逸れた。


休む暇がない日々を翼を授ける魔法の飲み物で英気を養い、

体に喝を入れ乗り越える。


そんな日常の中、久しぶりに訪れた休日の半分以上を寝て過ごした自分を

一体誰が責められるというのか。


空腹で目が覚めて、食料を調達しようとコンビニに向かう。


雷が鳴るほどの悪天候の中、差しているビニール傘に不安を覚えながらも

空腹には抗えず、半ば駆け足で目的地を目指していた。



ここまでは覚えている。


確かめるように記憶をたどってみるも、思い出せるのはそこまでだった。


普段から冷静に論理立てて考え行動する自分ではあるが、

これはもうお手上げという他ない。


むしろ意味がわからん。


わからなすぎて逆に冷静になりそうだ。

テンパりすぎて一周まわった的な。


一生この状態なんだろうか?


そんな不穏な考えがよぎり急激に不安になる。


なにかひとつのことを思考するとき、それを一から百まで

あらゆる可能性を想定して考えてしまう葵にしてみれば

当然の流れではあるのだが、この時ばかりは最悪の想像をしてしまったものである。


やばいやばいやばいやばい


どうすればここから解放される?


解放って俺は誰かのせいでここにいるのか?


それとも何か偶発的な現象に巻き込まれたのか?


無限に広がる得体の知れない不思議空間は、

冷静であろうとする葵の思いに反して精神に負荷を与えていたらしい。


出口とかないのか?


移動は…くそっ…できないのか…


どうすればいい?


わからないわからないわからない



不安や恐怖でどうにかなりそうだった。


連鎖的に湧き上がる疑問に答えるものなどいない。



いや、いないはずだった。



「あのー…すみません…えっと…何かお考えのところ申し訳ないんですがよろしいでしょうか…?」













初めての投稿なので、文章やら何やら至らない部分が多々あると思いますが、

お付き合い頂ければなと思います。

誤字やおかしい表現などあればご指摘下さると非常にありがたいです!


更新はできる限り毎日行う予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ