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5kgの距離  作者: 新々
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「おまたせ」


「まだ何か見るの?」

 わたしは努めて平静をよそおってそう聞いた。

「んー、もういいかな。桃花は何か見ないの?」

「わたしはいいよ」

 一瞬、間があった後で、


「せっかくだしさ、ちょっと着てみない?」


 といって瑠美はぐっとわたしの腕をつかむと、さっと周囲に目配せして、そのまま試着室に引っ張り上げた。


「ちょ、え、な……ぬわっ」

 動揺しているところにいきなりスカートを引っ張られて、妙な声が出てしまう。

 慌ててその手をつかんで下ろされまいと必死に抵抗したら、


「戻して」


 と今まで聞いたことのない低い声が届いて、思わず手を止めてしまった。

「スカート、戻して」

 ぐっとまた引っ張られて、そこでようやく理解する。

「……わかったから、手、離してくれる?」


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