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「おまたせ」
「まだ何か見るの?」
わたしは努めて平静を装ってそう聞いた。
「んー、もういいかな。桃花は何か見ないの?」
「わたしはいいよ」
一瞬、間があった後で、
「せっかくだしさ、ちょっと着てみない?」
といって瑠美はぐっとわたしの腕をつかむと、さっと周囲に目配せして、そのまま試着室に引っ張り上げた。
「ちょ、え、な……ぬわっ」
動揺しているところにいきなりスカートを引っ張られて、妙な声が出てしまう。
慌ててその手をつかんで下ろされまいと必死に抵抗したら、
「戻して」
と今まで聞いたことのない低い声が届いて、思わず手を止めてしまった。
「スカート、戻して」
ぐっとまた引っ張られて、そこでようやく理解する。
「……わかったから、手、離してくれる?」




