1/22
01
「ねぇ、見て。あの娘ちょー細い。しかも長いし」
瑠美が食い入るようにその娘を見る。
「男ってああいうのが好きなのかな」
「どう、かな」
「桃花はどんな脚が好き?」
「え? わ、わたし?」
突然訊かれて返事に困ってしまった。
「わたしは……普通がいいかな」
「普通ってどんなのよ」
セミロングの髪をふわふわさせて、瑠美がおかしそうに笑う。
変なことをいったつもりはないのだけど――。
楽しそうだから、まあいいか。
学校が終わった後、わたしたちは駅近くの喫茶店に入って、いつものようにそんなくだらない話題で盛り上がっていた。
といっても盛り上がっているのは瑠美だけで。
さっきから外を歩く女の子の脚を眺めては、あーでもない、こーでもない、と得意気に評価をくだしていた。でも出てくる単語といえば細いとか長いとかばかりだから、評価というよりはただの感想みたいなものだけど。