リンゴと唯1
私は、水泳部の活動場所である屋内プール施設へ。更衣室には誰もいないし、人の気配がしない…。部員はみんな帰ったのかな?
何だろう…。すごい『チカラ』の気配を感じる…!プールへ向かう私。
「何、これ!?」
プールがある部屋の中は天井のガラスが割れ、道具が散乱し、荒らされ放題!そして、プールの中の水が渦を巻き、波が激しく荒ぶり…まるで大嵐の海みたい…!プールの真ん中へんの水の上に浮いている競泳用の水着を姿の男の子は…甘夏君…!?
「先生、『覚醒者』は中等部2年の甘夏唯君です!!まさか…甘夏君が私の制服を…?」
『いいえ!毒島さんの制服の犯人は…。いえ、何でもありません…!』
「先生!制服の犯人、わかったんですか!?」
『…今は、そのことより早く彼を!』
「…はい!ああ…!あれは…!?」
『どうしたんですか!?』
甘夏君の周りには何本もの渦を巻いた水柱が立っていて、その水柱の中の一つに…賀東先生が!!
「大変です!!賀東先生が…水柱の中に閉じ込められています!早く助けなきゃ!」
毒島リンゴ、変身します!
私の体の中から光が溢れ始めた!もう、『怒り』の感情じゃなくても変身できるんだ!
光が止み、一人の少女が現れた…!
白地に赤襟のセーラー服。光輝く黄金の髪と瞳。胸元には大きな真っ赤なリボン。手には白地に赤いラインの入った指ぬきグローブ。あれ、今日は上はセーラー服で、セーラー服の下がスクール水着になってる!
紺色に赤のラインが入ってて、短いスカートが付いたスクール水着!前の学校のだ…。そして裸足…。
「私は『セカイ防衛少女毒リンゴ』!甘夏唯君の『セカイ』も、この『セカイ』も壊させない!私が絶対に守る!!そして、賀東先生を絶対に助け出す!!」
『毒島さん、今のかっこいい名前は何ですか!?』
「えへへへ。私のバトルネームです!(ドヤ顔)」
『毒島…レベルが剣崎と同じだ…。よくそんな恥ずかしいセリフを堂々と言えるな…。聞いてるこっちが恥ずかしい…!剣崎も、何で目が輝いてんだよ!いいかげん中二病、卒業しろよ…。』
「甘夏君!私の声、聞こえる?どうして、こんなことするの!君は水泳が大好きなんでしょ?それに、賀東先生をどうするつもり!?」
甘夏君は、答えない。クリム君みたいに『セカイを滅ぼす者』に操られているのかな?
その時!水柱が渦を巻きながら私に向かってきた!私の右腕にぶつかり、右腕が水柱の中に引きずり込まれそうになるのを、なんとか水柱から右腕を引き出す!あの水柱は私を取り込もうとしているんだ!何本もの水柱が甘夏君を周りを囲んでいる、これじゃ甘夏君にも賀東先生にも近づけない!
「先生、どうすれば甘夏君に近づけますか?…先生?」
腕時計を見ると針が止まって動かない!これ、防水性じゃないんだ…!!
そうだ!体を『毒リンゴの毒』で覆えば、取り込まれずに甘夏君のところまで行けるかもしれない!私は全身を『毒リンゴの毒』で覆い尽くした。今だ、全力ダッシュで甘夏君の所まで突っ込む!!
水柱に当たっても、私をすり抜けて行く!よし、これで甘夏君に届く!!と、思ったら、水のせいで『毒リンゴの毒』が洗い流されてしまう!一本の水柱の中に取り込まれてしまった!
うわぁ…。苦しい…息ができない…!賀東先生もこの中に入るなら…早く、助けなくちゃ…死んでしまう…!この、水の中から出なきゃ…!あれ?誰かの声が聞こえる…?この声は…。
『俺は…好きで水泳をやっていたわけじゃない…。本当は、絵を描きたい…。藤林の隣にいたい…!藤林が他の男のものになるなんて…絶対にいやだ!だから…賀東先生を…!』
「甘夏君…それが、君の本心なの…?私は、違うと思う…!それに今、ここで賀東先生を傷つけたら…君は…もう、もものそばにいられなくなっちゃうよ!ももは、二度と君に振り向いてはくれないよ…!それでもいいの…!?」
『俺は…。俺の本心は…!俺が好きなのは…藤林の…ももの…きらきらしたあの瞳…!俺のことを見た目で判断しないで怖がらずに、話しかけてくれて…いつも笑顔で…。あのきらきらした瞳が見たくて、絵を描くようになって…俺に絵を描くことの楽しさを教えてくれたあの瞳…。賀東先生を見つめるきらきらした瞳…。俺は…!』
甘夏君の『チカラ』が弱まってきたみたい…。私は水柱の中から抜け出した!
そして、甘夏君の胸に私の『毒リンゴの毒』の拳を叩き込む!!




