甘夏唯のセカイ3
「唯君の泳いでる姿って、とっても綺麗だね。まるで、人魚姫みたい…。あ、唯君は男の子だから人魚の王子様だね!」
何、言ってんだこの子…?だいたい、水泳部は部員以外、原則立ち入り禁止のはず…。どうしてか、俺は女子にもてるらしく…入部した当時は連日、女の子が見学に来て黄色い声援がうるさくて、部員が練習に集中できないって言うんで部員以外、立ち入り禁止になったんだよな…。
「それに、唯君は本当に人魚姫みたいだよね。唯君の好きなお姫様は、別の王子様に夢中なんだもの…。」
なぜか、藤林と賀東先生の顔が思い浮かぶ俺…。なんで…?
「ねえ、唯君は、好きな人のためならその思いを諦められるの…?唯君は泡になって消えてしまってもいいの…?」
「あのさ…。さっきから、何のことやらさっぱりなんだけど…?」
「本当は、今日だって美術部に行って、あの子に会いたかったんじゃないの…?水泳部なんてなくなっちゃえばいいと思ってるんじゃないの…?」
何なんだこの子…!?てか、セカイを滅ぼすとかなんとか…もう訳がわかんないな…。
「あの子を…藤林ももが好きなんでしょ…?彼女が好きな賀東先生なんていなくなっちゃえばいいと思ってるんでしょう…?」
「なんで、藤林と賀東先生が出てくるんだよ…!」
「ねえ、唯君。自分の気持ちにもっと正直になりなよ…?私なら、唯君の望みを叶えてあげられる!」
ヴァニラは、突然、俺に向かって謎の光を放った…!?
水泳部は、もう練習終わったのかな…。誰もいないみたいだな?あ、いたいた!
「唯君。部活、お疲れ様です。着替えが終わったらでいいので、作品展の提出用紙を書いてほしいんですが。…唯君?」
「…先生。…お前を殺す。」
―美術室―
「わあ…!これが、甘夏君の描いた絵…。すごい…!」
「ねー!私の言った通りでしょ?唯は海辺の町で生まれ育ったんだって!だから、海がきっと大好きなんだよ!これは、入部して初めて描いた絵だけど、私が初めて唯が描いた絵を見たのは小学生の時なんだけど感動しちゃった…。思わず、『大好き』って言っちゃったの!」
それで、ももにハートを射抜かれちゃったのね…甘夏君。
その時、私の腕時計が鳴った!何かあったのかな!?
「ごめん、もも。私、用事を思い出したから!先に帰るね!」
私は美術室を飛び出す。
「えー!?何よ突然!ちょっと、リンゴ―!…ああ、行っちゃった…。」
『毒島さん、剣崎です!水泳部の屋内プールから高エネルギー反応を確認しました!大至急、向かってください!』
「水泳部!?わかりました、すぐ行きます!!」
まだ、甘夏君や部員の人たちがいるかもしれない…!敵って、私の制服の犯人の子かな?そういえば…賀東先生、甘夏君を探しに水泳部に向かったよね…。大変!!早く行かなくちゃ!待ってて賀東先生ー!!




