新しい出会い3
昼休み。私は、七五三木君に学園内を案内していた。七五三木君はやっぱり、人と直接話すことが苦手なのか、全く言葉を発しない…。
「で、ここが第2美術室で美術部の部室なんだ。私達の担任の賀東先生は美術部の顧問なんだよ!中に入って部員の子の作品見よう。これは、私の友達のももの絵なんだけど、これ教室で飼ってる金魚がモデルなんだよ。賀東先生あの三匹全部見分けがつくみたいで、すごいよね!」
「…毒島さん。あのさ…。」
お!やっと七五三木君が言葉を発してくれた…!声は低すぎず高すぎず…男か女かはっきりしないな…。
「何?何でも聞いてね!」
「…僕の格好について、なんでツッコまないの?」
「え、えーと…。聞いても大丈夫かな?」
本当はすっごく気になって、聞きたくてたまらなかったよ!!
「あのね…。僕の性別は男だよ。だから、今の格好が正しいんだ。」
男の子だったんだ…!
「じゃあ、前の学校ではなんで女の子の格好してたの?」
「それはね…。僕は場面緘黙なんだ…。場面緘黙っていうのはね、ある特定の場面でだけ全く話せなくなってしまうんだ。僕は家から出ると外で全く話せなくなってしまうんだ…。脳に障害があるとかそういうわけじゃなくて、人見知りとか内気とか性格の問題でもないんだ…。」
「それと女の子の格好とは、どういうつながりが…?」
「僕はずっとこの場面緘黙のせいで、人と会話するどころか挨拶すらできなくて…。友達もできないし、親のしつけが悪いせいだって周りの人から後ろ指さされて。親にも、家では普通に会話できるからこの症状に気づかなくて…誰もこの辛さがわかってもらえなくて…。こんなだめな自分が大嫌いになって…。変わりたいって思って…。中学に上がる前の年に姉の服を着たら、何だか違う自分になれた気がして、それで…。」
「女の子の制服を着ていたってわけ…?」
「…うん。親にも場面緘黙のことと、女装すると少しだけ症状が弱くなって挨拶くらいならできるようになるってことを話したら。親が前の学校に事情を説明して女の子として入学したんだ…。名前ももともと女の子みたいだし。」
「でも、またなんでこの学園に来たら、男の子の格好に戻したの?てか、七五三木君、さっきから私と普通に会話できてるよ!」
「…僕がこの学園に編入した理由は、君に会うためなんだ…!あの日、僕が胡桃君たちに絡まれていた時、君が助けてくれて、すごくうれしくて…君と話がしてみたいって思ったんだ。僕は小さいころから場面緘黙のせいで友達できなくて、いつの間にか人と会話することが苦痛になっていて…。でも、毒島さんと出会って、初めて人と話したいって思えたんだ…!」
「私と話すためだけに、わざわざ、編入してきたの…!?」
「…そうだよ。だから、君と話ができて…今、僕…すごく…嬉しくて…。…毒島さん!」
「はい?」
「僕は…君のことが好きです…!」
思考停止する私…。
その時、美術室の扉が開いた!
「あ!七五三木君、ここにいたの!賀東先生が呼んでるよー。あれ?リンゴも一緒?てか、二人とも顔真っ赤だけど、どうしたの!?…は!まさか二人はそういう関係…!?」
「…ち、違うってば!!もも、誤解だよ!!」
「ふふふ…。リンゴ、別に恥ずかしがることないよ!あとで詳しく聞かせてもらうからね!」
そしてまた美術室の扉が開く。賀東先生!
「花梨君、ここにいたんですか。ももさん、探してくれてありがとうございます。編入書類のことで少し確認があるんですが…。あれ?リンゴさんも一緒だったんですか?」
「ふふふ…。先生、青春ですね…。」
「ももさん、何のことですか?」
あのあと、教室で七五三木君との関係についてみんなの質問攻めにあったのは言うまでもない…。




