リンゴの制服3
「それは、どういうことだ…?」
「橘先生。遅かったですね?」
「あー。橘、リンゴちゃんと顔合わせずらいから遅く来たんでしょう?昨日、リンゴちゃんいじめて制服とりに行くの遅くさせたせいでその間に…制服があんなことになったんだと思って、責任感じてるんでしょう?大丈夫だよ。監視カメラを解析してみたけど、リンゴちゃんの制服があんなことをされたのは、朝、賀東先生が制服を受け取って、被服室に置いて施錠して、賀東先生は自分が施錠し忘れたせいだと思って自分を責めてるけど…。それで、犯人が最初に現れたのは1限目が終わったあとの10分休憩の時。それから、毎回10分休憩のたびに、制服に悪さしに来てたの!だから、4限のあんたの授業が終わってすぐ制服を取りに行ってもリンゴちゃんの制服は、もうあの状態だったから…あんたが責任感じる必要ないよ?まあ、これに懲りたらもう生徒いじめなんてやめなさいよ。」
「そうだったのか…。それよりも、俺が聞きたいのは毒島に嘘をついたとかなんとかお前らが言ってたことだ。」
「毒島さんは犯人は『セカイを滅ぼす者』に操られた生徒だと思っていますが、犯人は毒島さんに何らかの悪意のある生徒の犯行です。彼女には監視カメラが壊れていて犯人を特定できなかったと伝えましたが、監視カメラは壊れていませんし、犯人の生徒も特定できました。」
「その犯人が『セカイを滅ぼす者』に操られていないって、どうして断言できるんだ?」
「『覚醒者』からは、特殊なエネルギー反応がでるのよ。その生徒からは、それがなかったの。それで、犯人の生徒はリンゴちゃんと同じ中等部2年の他クラス生徒でリンゴちゃんとの接点は、まだわかんないけど…。リンゴちゃんは編入してきたばっかりでいやでも目立つし、そういうのが気に入らなかったとか、生徒から絶大な人気を誇る賀東先生が何かとリンゴちゃんのこと気にかけてたのが…まあ、担任の先生だから当たり前なんだけど、許せなかったとか犯行の理由はその程度のことだと思うよ?」
「だったら、毒島になんで嘘つく必要があるんだ?」
「毒島さんを動揺させないためです。彼女自身も自覚してましたが、『セカイを滅ぼす者』は精神的に不安定な生徒の心の隙間につけこんできます。この件で、毒島さんは、かなりのショックを受けています。この学園に自分に対して悪意をもつ生徒がいるなんて想像もしてなかったことでしょう。でも、彼女は『セカイを滅ぼす者』の仕業だと考えることによって精神を正常に保とうとしています。」
「リンゴちゃんが真実を知って、動揺してその心の隙間に『セカイを滅ぼす者』がつけ込んで来たら…『セカイを滅ぼす程のチカラ』を相殺する『毒リンゴの毒』をもったリンゴちゃんが闇落ちしたら…。」
「制服の一件は、学園が全力で捜査したが犯人は結局特定できなかったということで、終わりになると思います。毒島さんには、大変申し訳ありませんが…全ては、この『セカイ』と毒島さんを守るためです…。」
―放課後の校庭―
私、毒島リンゴは、犯人の生徒を探すために学園中を駆け巡っていた!そして、現在、校庭を捜索中。初等部の子たちが昼休みみたいに元気に遊んでいる。杏君とクリム君もいる!
「あ!リンゴ先輩じゃん。制服のこと聞いたぜ…。あんな酷い事したやつ、ぜってぇ許せねぇ!」
「僕も…!お姉ちゃん、元気だしてね…。」
「二人とも…ありがとう!あれ?クリム君、私のことお姉ちゃんって言った?」
「ご、ごめんなさい!僕の死んじゃったお姉さんがリンゴ先輩と同い年くらいだったから…。」
「…そうだったんだ。いいよ、私のことお姉ちゃんだと思って!私、ひとりっこだから、なんだか弟ができたみたいで嬉しいよ。」
「…本当に?ありがとう…リンゴお姉ちゃん!」
か、可愛い…!クリム君、大好きだ!!
クリム君は、可愛くて優しくて、とっても良い子なんだ…。だけど、『セカイを滅ぼす者』に操られてクリームの姿になったら、言葉遣いも乱暴で、人を傷つけても何とも思わなくなってしまって…。
私の制服の犯人の子も同じで…きっと無理やりあんなことさせられて苦しんでいるんだ…!絶対、見つけて助けてあげなきゃ。