新しいセカイ
昼休みの校庭。
「だから、そーじゃないって!もっと、脇をしめて!あーもう!下手くそ!」
「ちょっと、杏君!そういう言い方はないんじゃないの?」
「杏、さっきのは確かに言いすぎー。」
「クリム君、がんばって!」
「…まあ、リンゴ先輩よりは、クリムの方が筋がいいよ!ほらもう一回やってみろよ。」
「うん。あの…今日は誘ってくれて、ありがとう…浅倉君。」
「別に、気にすんなよ。あと、杏でいいよ!」
「うん。杏君…!」
―地下『SAWDO』の秘密基地―
「結局、クリームはクリムに戻り、『セカイ』は滅ぼされずにすんだし…一件落着だな…。」
「橘…。さわやかなこと言いながら、堂々とタバコ吸うのやめなさいよ!ねえ、剣崎君。…剣崎君?」
「…はい?何か言いましたか?…すみません。ぼーっとしていて…。」
「剣崎君、いい加減元気だしなよ!確かに、私達みんな、なーぁんにも出来ずに、全部リンゴちゃんにやってもらっただけだけど…。」
「心配するな上城。剣崎は『己の無力さに打ちひしがれてる俺カッケー』とか思ってわざとやってるだけだから…。」
「な!?橘先生、私は別にそんなことは…そりゃ、少しくらいは思いましたけど…。」
(そこは、嘘でも否定しろよ!)と心の中でツッコム上城先生と橘先生。
「…一歩間違えばクリム君を救えないどころか、毒島さんの生命を脅かすところでしたから…。」
「そうだけど…。でも、二人とも無事で本当に良かった…。でも、リンゴちゃん本当にすごいよね。『セカイ』を滅ぼすほどの『チカラ』を自分の『毒』で相殺させちゃったんだもん。」
「あれは、初等部4年の浅倉も関与してたんだろ?浅倉も『覚醒』したってことか?」
「それが、浅倉君、あの日の出来事は何一つ覚えてないんだって!浅倉君だけじゃなくて、学園にいた全ての人が、みんなあの日の記憶がないの。クリム君もクリームだった時のことは覚えてなかったよ…。」
「これは、私の仮説ですが。毒島さんの『毒リンゴの毒』の影響だと思います。クリームの『絶望したチカラ』を相殺しただけでなく、クリム君の『覚醒』した『チカラ』である『物に命を宿す』能力をも消してしまったのです。浅倉君の『覚醒』した『チカラ』さえも…。毒島さんが『覚醒』してからまだほんの数日しか経っていないのに、彼女は全身からあの『毒リンゴの毒』を発生させることができるようになったわけですから…。本当に彼女の『チカラ』はまだまだ未知数です…。」
秘密基地に誰かが入ってくる。
「みんなー!お昼もうすませちゃった?」
「相川ちゃん。昼休みは別に召集かかってないよ?てか、なんでみんな召集かけてない時ばっかり集まるんだろうね…?私たちもうお昼はすませたけど…?」
「たこ焼き焼いたんだけど、みんな食べない?俺、4限授業なかったから暇で、作ったんだ!」
「お前は、本当に…自由だな…。だいたい、俺はヤニ休憩するためにここへ来たのに…なんでお前らがいるんだよ…。」
「橘先生…。この部屋も禁煙です!ここだって一応、学園の敷地内です。」
「うるせーな。剣崎は昔から、真面目すぎるんだよ…。そんなんだから友達いないんだぜ…。」
「あなたにだけは、言われたくないです…!」
「こうたん、それは違うよ!俺は、つばっきーの親友だよ!!もちろん、こうたんもむっきーも!!」
「だから…その呼び方やめろ!」
「ああー。もう、私は静かに、お昼休みしたくてきたのにー!はあ…。もう次の授業の準備しなきゃ…。」
そして、放課後。私、毒島リンゴは久しぶりに、ももと美術室へ向かっていた。あの後、私達3人から溢れ出した光が学園中を覆いつくし、クリームの『絶望したチカラ』を相殺したらしい…。クリームは元のクリム君に戻り、クリームに悪夢を見せられていた学園中の人々も助かったし。あれだけ激しい戦闘があった寮も元通りになってたし。まあ、めでたし、めでたしだね。でも、『セカイを滅ぼす者』を倒したわけじゃないんだよね…。また、誰かの心の隙間に入り込んで…クリム君の時みたいに…。
もう、二度と誰の『セカイ』も壊させない…!私がみんなの『セカイ』を守るんだ。
私は、毒島リンゴ。『セカイ防衛少女毒リンゴ』…!
「リンゴ?どうかしたの?なんだか最近、様子が変だったけど…?何かあったの?」
「え!?…ううん。別に何でもないよ!」
「そう…?ああー!いっけない、教室に忘れ物しちゃった。ごめん、リンゴ。先に部室行ってて!」
「うん。」
私が美術室の入ると…1人の生徒がいた。
「あなたは…!?」
その人は、藍色の長い髪と、藍色の瞳をしていた…!




