リンゴVSクリーム1
全速力で男子寮へ向かう私達。やっと、男子寮が見えてきた!玄関から中に入ると…。寮内のあちこちで生徒たちが気を失って倒れている…何だかみんな苦しそう…!クリム君の部屋はどこだろう?
「ねえ、先生。クリム君の部屋はどこ!?…先生?」
先生達がいない!まさか…また、結界のせいで寮の中に入れないとか!?…本当に役に立たない…。
「クリムくーん!!どこにいるのー!?」
「やあ。リンゴ!誰を探しているの?」
私の目の前の現れたのは、ウェーブのかかった金髪に白い肌に、赤い瞳、クリームだ!
「クリーム!いいえ、クリム君!君を助けにきたの。もう『セカイ』を滅ぼすなんてやめようよ!」
「何言ってんの?僕は、クリームだよ。そういえば、そいつも僕のことクリムって呼んでたな。」
クリームが指さした方を見ると、そこには巻き髪の赤毛の男の子が倒れていた…杏君!寮内のあちこちで倒れていた生徒たちと同じように、何かにうなされて苦しんでる…!
「クリム君!杏君や生徒のみんなに何したの!?」
「何って?お前が言うその『クリムの見ていた悪夢』をこいつらにも見せてるだけさ!」
悪夢…?それって、あの出来事のこと…!?
「昨日まで仲の良かった人達に、僕たち家族が追い立てられて…みんな次々に…僕の目の前で…!この『セカイ』には愛も友情もない…!そんなもの暴力の前では無意味なんだ!この『セカイ』の本当の姿をこいつらに見せてるんだよ。…そうすれば、こいつらの『信じていたセカイ』を壊せるからな!!」
「クリム君…。それは、違うよ。」
「うるさい!僕をもうクリムって呼ぶな…。僕はクリーム!あの方のために『セカイ』を滅ぼす者。あの人だけなんだ…僕を救ってくれたのは…。僕にはもう…あの人しかいないんだ…。」
「あの人って?」
「お前には関係ない。…毒島リンゴ、この『セカイ』を守るっていうならお前を倒す!ほら、早く変身しろよ!あの光を出してみろよ!」
クリム君とは、戦いたくないけど…。みんなをこのままには、しておけない!よし、変身!!
…あれ?変身できない…?どうして…!
「何やってんの…?」
ああ!私の覚醒条件は『怒り』なんだよね…。でも、今の私の感情は『怒り』じゃなくて『悲しみ』なんだ!どうしよう…。これじゃ、変身できないよー!
「もう待てないよ!」
クリム君が手をあげると、寮内の椅子や机などの家具が宙に浮かび上がり、私目がけて飛んでくる!
それをギリギリでよける私!ボールをよける技術がこんなところで役に立つとは…。
「ちょっと!日曜朝の某変身ヒロインアニメだって、敵は変身終わるまで攻撃してこないじゃん!」
だめだ、『怒り』が湧いてこない…。クリム君に対する『怒り』の感情よりも、『悲しみ』の感情の方が強いんだもん…。とにかく、飛んでくる家具をよけながら必死に逃げる私!
しまった、行き止まりだ…!
「これで、終わりだよ!リンゴ!」




