クリムのセカイ1
「うわぁあああ…!!」
悪夢で飛び起きた僕、クリム・D・カスター。また…あの夢だ…。恐ろしい『あの出来事』。落ち着け、ここは寮の僕の部屋だ…。あそこじゃないんだ…。あの…恐ろしい…地獄のような…。僕から全てを…僕の『セカイ』を壊した…あの…。
最近、僕の記憶が途切れ途切れになってしまうことがある…。これも『あの出来事』の後遺症のせいだって、精神科の先生は言うけど…。全く覚えていないわけじゃなくて、僕は、学園外のどこかにいて…子供たちの泣き声が聞こえたり、悲しそうな女の人の顔が浮かんだり…。どこかの部屋で中等部の先輩が泣いている顔が見えたり…。この記憶は何なんだろう…?何だか僕が僕でなくなってしまっているみたいな…。怖い…。
僕の部屋のドアをたたく音がする!誰だろう…?
「おい。クリムいる?俺、お前と同じクラスの浅倉杏!おーい?寝てる…?」
「…な、何か用…?」
「なんだ、起きてんじゃん!…あのさ、今日の昼休みに校庭で変な先輩に会ってさ、何かお前のこといろいろ知りたいみたいなんだけど…そんでさ、明日の昼休みにまた会うからさ、お前も一緒に明日、遊ばない?」
変な先輩…?あ!あの、いきなり話しかけてきた、この学園の制服じゃない制服着てた先輩のことかな…?
「…嫌だったら、別に無理しなくてもいいんだぜ?明日の昼休み、いつも俺たちが遊んでる場所にいるから!それじゃあな…。」
浅倉君は帰っていった。浅倉君、前にも僕を誘ってくれたけど…僕、無視しちゃったんだよね…。浅倉君は言葉づかいがつっけんどんで、乱暴で、女の子をよく泣かしちゃうけど…本当は面倒見が良くて優しくて、しっかり者で、みんなから慕われていて…。僕も友達になりたいと思うけど…でも…僕は怖いんだ…。大切なものを失うことが…。僕の友達も…家族も…みんな…『あの出来事』のせいで…。僕の『セカイ』は壊されてしまって…。浅倉君やクラスのみんなと友達になれても…また『あの出来事』が起こって、みんなを失ってしまったら…僕は…!




