クリームをさがせ3
「ルールは、毒リンゴが俺たち全員(元外野3人を除く)にボールを当てればお前の勝ち。逆に、俺たちが3回連続でお前にボールを当てられたら俺たちの勝ち。それで、いいよな?」
リーダー格の男の子が言った。その子は、赤毛の巻き髪でまだ、年相応の幼い顔つきだけど、将来は絶対イケメンになるよ!体格も他の子より、しっかりしていて、何だか全身から自信が満ち溢れてる感じ。みんなに慕われてる理由がわかるきがする。
「いいよ!つまり、3次回連続で当てられなければ、何回当てられても、私の負けにならないんでしょう?」
「そうだよ。俺たちは、一度お前に当てられればアウト。」
「私が勝ったら、ちゃんと男の子のこと教えなさいよ!」
「ああ。お前が俺たちに勝てればだがな!」
くーっ!生意気…!絶っ対に勝ってやる!
そして、試合が始まった!
ジャンケンで、ボールは初等部チームからスタート。
「くらえ、毒リンゴ!俺の超必殺スーパー・デンジャラス・シャイニング・ボール!!」
リーダー格の男の子がいかにも小学生が考えたような技名を叫びながらボールを投げる!かなりスピードがあるけど、私はボールを華麗によける!
「ば、馬鹿な!?俺の超必殺技スーパー(以下略)をすり抜けるとは…!信じられん…!」
ふふん。いじめられっ子時代にドッジボールで標的にされるなんて日常茶飯事だったのよ…。標的にされるうちに相手の投げ方を観察して、ボールの軌道を瞬時に読み取ることができるようになったのよ!
「どこ、ねらってるの?」
ボールは、外野に出る。元外野は3人で、四角いコートの周りを全て移動できる。ボールを取った外野が私に向かってボールを投げる!けれど、私はそれをよける!
「あんた達、私に当てる気ないの?」
「くっそぉ!みんな、どんどん投げて、毒リンゴに当てるんだ!」
四方八方からボールが飛んでくる!それを私は全てよける!こうしているうちに、子ども達が疲れてきて弱ったところを私がボールをとって投げて全員にあてれば私の勝ち!
…のはずだったんだけど。
私の体力の方が先に限界を迎えようとしていた…。もう、これ以上よけられないよ…。
そして、ついに1発目にボールが私の右腕に当たる!痛いっ!
「よっしゃあ!やっと1発!あと2発だ。」
ボールが飛んでくる!上手くよけたと思ったんだけど、今度は私の左の太ももに当たる!痛いっ!
「よし、あと1発!これで止めだ!」
そうはさせない!私の腹部を目がけて飛んできたボールをなんとか受け止める私!
「おっしいー!あと1発だったのに!」
よし!今度は反撃開始よ。私は渾身の一撃でボールを投げた…!
しかし、ボールは私のすぐ真下に落ち、ころころ転がって、相手チームの内野スペースに入っていった。「…毒リンゴ、お前…やる気あるの?」
リーダー格の男の子が呆れた顔でボールを拾い、私に投げつける!痛いっ!今度は左肩に…。そして2発目も当たる!3発目はかろうじてよける…。それを何度も繰り返す。気づけば体中にボールが当たっていた。でも、まだ3回連続当てられてないから私の負けじゃないよ!
「お前…もう、降参しろよ!どうみてもお前に勝ち目はないだろ…!」
「…いやだ。まだ私、負けてないよ!絶対、あんた達に勝って、あの男の子のこと教えてもらうから!」
「…どうして、そこまでして、アイツのことが知りたいんだよ?アイツ、いつも一人でいるんだ…。俺たちが一度、一緒に遊ぼうって誘っても無視されたし…。クラスでも浮いてるし…。アイツのこと知ってどうするんだよ?」
「私ね、あんた達くらいの頃、この名前のせいでよくいじめられたんだ…。それで、私いつも一人ぼっちだったの。そごく辛かったな…。ある出来事がきっかけでいじめられなくはなったんだけど、みんなから避けられちゃって結局、私、この学園にくるまで友達一人もいなかったんだ…。みんなから避けられてるうちに私、自分でも知らないうちに他人との間に壁作るようになっていたんだ…。でも、そんな私を受け入れてくれる大切な友達ができて、私、変わることができたんだ!だから、あの男の子も本当はあんた達と仲良くなりたいけど、私と同じで自分から壁を作っちゃってるんじゃないかな?だから、あの男の子の力になってあげたいの。あの男の子のことがどうしても知りたいの!だから…私は負けないよ!」
「…やーめた。こいつ、バテてよけられなくなってきたし、投げたボールこっちまで届かないし…つまんね…。昼休みももう、終わるしみんな教室もどろーぜ。」
男の子の一言で、みんなが校舎に帰っていく。
「え!?ちょっと、まってよ。まだ勝負は終わってないよ!」
「…クリム・D・カスター。」
「何?」
「クリム・D・カスター!…それが、多分お前の言ってたやつの名前!俺と同じ4年生。」
「どうして、教えてくれるの?」
「…だから、これ以上続けても、お前は勝てないし、教えるまで何度でも俺たちに突っかかってきそうだから…。そういうの面倒だから!」
この子、素直じゃないけど…良い子だなあ…。
「ねえ、君。名前なんていうの?」
「…浅倉杏。」
「ありがとう。杏君!」
「…てか、お前、運動神経なさすぎ!中学生なのにボールもまともに投げられないとか、ダッセぇー!」
な!?せっかく良い子だと思えたのに…。やっぱりむかつくー!
「…明日の昼休み、また校庭に来いよ!俺たちがお前にボールの投げ方教えてやるから。あと、クリムのことももっと詳しく教えてやるから、絶対、来いよ!」
「うん、わかった!それじゃ、また明日!」
杏君は後ろを向くと
「…名前のことからかってごめん。じゃーな、リンゴ先輩。」
わあああああ!先輩って呼んでもらったの初めて…嬉しい…。
あの子、クリム君って言うんだ…。うん?クリム…。クリム…。…クリームっ!!まさか、クリム君がクリームの正体なの!?