クリームをさがせ2
次の日の昼休み。私、毒島リンゴは学園の初等部の教室を隈無く調べたがクリームは見つからない…。生徒名簿も見たけど、それらしい子はいない。初等部は、地方の少子化や過疎化で廃校になった学校の生徒達で主に構成されている。また、身寄りのない子や複雑な家庭事情でこの学園に入学した子もいるみたいだし…。
心に闇を抱えた子も結構いるのかな…。クリームもきっと何か心の隙間につけこまれて、あんなことをやらされてるとしたら…。絶対、見つけ出して助けてあげなくちゃ!
校庭にでてみる。今日はとってもいい天気…。子ども達の楽しそうにはしゃぐ声が聞こえる。初等部だけでなく、中等部の子達も、高等部の先輩達もいる。サッカーをやっている子達。鬼ごっこをしてる子達。輪になって遊んでる子達。日向ぼっこしてる子達。みんな楽しそうだな…。私は、いつも一人で教室か図書室で読書してたな…。いじめられてた時は、昼休み教室から出ると、机を廊下にだされちゃったから、教室からでられなくて、自分の席(唯一の居場所)を必死で守ってたな…。
校庭を一周歩いてみたけど、クリームは見つからなかった…。あれ?校庭の隅っこで一人で座っている男の子が見えた。楽しそうに遊んでいる子達をさみしそうに見つめている…一緒に遊びたいのかな?
「ねえ、君。みんなと一緒に遊ばないの?」
声をかけられた男の子は、私を見ると驚いたような顔をして何も言わず逃げて行ってしまった…!その男の子はウェーブのかかった黒髪で、褐色の肌に青い瞳。日本人じゃないみたい…言葉が通じなかったのかな?クリームにどことなく似てる気がするけど年が同じくらいだからかな?
私は、さっきの子がなんか気になってしまって…。私もあの子ぐらいの年の時、いつもひとりぼっちだったから。あの子が見つめていた子ども達のグループに話しかけてみた。
「ねえ、君たち。君たちと同じくらいの年で、黒髪で肌が褐色で、青い瞳の男の子、誰だか知らない?」
「…お姉さん、誰?なんで、うちの学園じゃない制服着てるの?」
子ども達に警戒されてる…!そっか、さっきの子も私がこの学園の制服じゃなかったから驚いて逃げちゃったんだ!
「私は中等部2年2組の毒島リンゴ。先週この学園に編入したばかりだから、制服はまだ前の学校のままなんだ。」
「ふーん。ブスジマなんて変な苗字だね!」
「ブスジマって毒の島って書くんだよ!毒リンゴ―!」
「毒リンゴの毒島リンゴー!!きゃはははっ。」
む、むかつくー!いじめられてた頃を思い出す…。あああー!この子たちに言い返したいけど、ここは私の方が年上なんだから!このクソガキ…いや、子ども達相手にムキになるなんてかっこ悪いもんね。
「こんな名前つけるなんて、ひどい親だね!」
プツン…。
「こんのぉ、クソガキどもー!!よくも、私の名前を馬鹿にしたわね!」
って、私なに子ども相手に大声出してんの…!?
「うわあー!毒リンゴが怒ったぁー!」
「怖ーいっ(笑)!」
「僕たちの方が年下なのにあんな大声出すなんて大人げないよ、毒リンゴ!」
子どもたちに完全に馬鹿にされている…。
「急に怒鳴ってごめんね。初めに言った、男の子が誰だか教えてもらいたいだけなの。ねえ、誰か知らない?」
すると、このグループのリーダー格の男の子が私の前にやってきた。
「俺、そいつ知ってるよ。毒リンゴ、お前が俺たちにドッジボールで勝てたら教えてやってもいいよ!」
「本当に?私、やるよ。絶対勝って、教えてもらうよ!」
「ただし、お前は一人で、俺たち全員と戦うんだ!」
えー!?そんなのないよー。でも、あの男の子のことを聞くためだもん。私、負けない!
「…いいよ。私の方が年上だから、あんた達お子様相手にそのくらいハンデしなきゃ相手にならないもんね?」
どうしよう…。あんなこと言っちゃったけど、向こうは10人近くいるのに、私一人で勝つなんて不可能だよ…。
「うっぜー!毒リンゴのくせに生意気だぞ!!みんな、絶対、毒リンゴを負かしてやろうぜ!」
『毒リンゴを倒せ―!!』
かくして、私、毒島リンゴ(1人)VS初等部男子(10名)のドッジボールが始まったのです…。




