セカイを滅ぼす者
道具達の攻撃が止み、後ろを向きかえった私。しかし、クリームの隣に1本のナイフが宙に浮かんで止まっている。その刃が私の心臓の方向を向いている!
「動くな。このナイフにかけた魔法は超強力だから、お前の『毒リンゴの拳』じゃ解くことはできないよ。」
「…クリームは、どうして『セカイ』を滅ぼしたいの…?」
「時間稼ぎのつもりかい?残念だけど、この教室には僕の結界がはってあるから他の人間は入ってくることはできないよ。」
「そんなつもりじゃないよ…。あのね。私も一度だけね、思っちゃったことがあるんだ…。『こんなセカイなんか滅んじゃえばいい』って。私が4歳の時にね、両親が事故で死んじゃったんだ…。私にとっての『セカイ』って私と父さんと母さんが幸せに暮らしている『セカイ』だったんだ…。でも、それが事故によって私の『セカイ』は壊されてしまったの。なのに、なんで他の人たちの『セカイ』は壊されないんだろう、そんなの不公平だ!と思ってね…。だから、『こんなセカイなんか滅んじゃえばいい』って思っちゃったの…。」
「…それがどうしたの?」
「でもね、ある男の子が言ったの…。『セカイが壊れちゃったんなら、新しいセカイを作ればいい』って。その男の子ね、私がいじめられてた時いつも助けてくれた子なの。小学校は別々だったから、幼稚園を卒園してから一度も会ってないし、顔も名前も憶えてないんだけど…。」
「何が言いたいの…?」
「だから、私はその子に言われた通り、他の人の『セカイ』を羨むのをやめて、新しい『セカイ』を作ろうと思ったの…。ねえ、クリームも小さい頃の私と同じで、自分の『セカイ』を壊されて、他の人の『セカイ』を羨んでいるだけじゃないのかなって?」
「…言いたいことはそれだけ?」
「クリームは本当にそれでいいの…?クリームにだって新しい『セカイ』を作り出すことが…」
「…黙れ!…さよなら、リンゴ!」
ナイフが私の心臓を目がけて飛んできた…!
その時!何か金属同士がぶつかる鈍い音が響いた…!
あれ?私、生きてる…?
そして、私の目の前に…一人の覚醒者がいた…!




