リンゴとヤンキーとメガネ1
野球部の掛け声が聞こえる、学校まであと少し。早く教室に入って自分の席に座って落ち着きたいという気持ちと、もう少し朝のさわやかな空気を吸っていたい気持ちが私の足取りを速めたり、遅めたり…。
玄関に入る。早く着きすぎてしまった。もっとゆっくり歩けばよかった。いや、あと10分後には朝練が終わってこの玄関は人でいっぱいになる。「おはよう」ラッシュがはじまる。あの「おはよう」の波を無言で存在感を消して通るのは辛い。
あれ、渡り廊下から声がする?なんかもめてるっぽい。
謎の好奇心が私を突き動かしたのか物陰から様子をうかがう。
茶髪のヤンキー風の男子と、ガラの悪そうなお取り巻二人。絵にかいたような不良グループ。
そいつらに囲まれているのは、メガネおさげのおとなしそうな女の子。
いじめ!?リンチ!?
「なんで、なんも言わへんのや?あぁ?」とヤンキー男子。関西弁?
『あぁ~?』と取り巻き二人。
「………。」無言でうつむくメガネ女子。
状況はよくわかんないけど、女の子すごい怯えてるし…助けなきゃ!
「あ、あのぉ~?」とりあえずゆっくり近づく。
「お前、誰や?」とヤンキー男子
「女の子一人相手に、男が三人てど、どうなんですか…?」
「そこの廊下でこのメガネが前から走ってきて城さんの肩にぶつかったんだ。」と取り巻きA君。
城さん?ああ、そのヤンキー男子のことですね。不良はネームプレートつけないんですね。
「このメガネ謝らずに逃げようとするからひきとめたんだ。」と取り巻きB君。
「一言謝ってくれれば、この胡桃城太郎だって女に手をあげたりせえへん!」
と城さん改め胡桃城太郎君。
「………。」メガネ女子。
「謝れや!えーと、シ?シチゴサンキ?ハ、ハナナシ?読めへんわ!東京もんはハイカラな名前つけるさかい!」
メガネ女子の名前は(ネームプレートより)、七五三木花梨さんだね。
確かに読みずらい名前ですね。
苺鈴はグンマー県民なので変な関西弁ですみません。
リンゴとヤンキーとメガネ2につづきます。