ももとクリーム1
私、藤林ももは、ひとしきり泣き。水道で顔を洗って気持ちを落ち着けた…。私の絵…何がいけなかったんだろう…?リンゴにも悪いことしちゃったな…。教室戻ったらちゃんと謝ろう。賀東先生には会いづらいな…今日は部活休もうかな…。
美術室の扉が開き、知らない男の子が入って来た。初等部の子かな?
「その絵、お姉さんが描いたの?上手だね。」
「うん、そうだよ!良く描けてるでしょう?超自信作!…だったんだけどなぁ…。はあ…。君、名前は?私は、中等部2年の藤林もも。」
「僕は、クリーム。ねぇ…ももは、毒島リンゴの『友達』だよね?」
美術室へと向かう私、毒島リンゴ。だいたいこの学園、広すぎー!ああ、早くしないと5限が始まっちゃうよ…。てか、ももはもう教室戻ってるかな?
その時、私の腕時計が鳴った!この時計は剣崎先生からもらったもので、実は通信機になってるの。これで『SAWDO』の人たちと連絡が取れるの。腕時計の横についているボタンを押す。
『剣崎です。毒島さん、緊急事態です!今、どこにいますか?』
「えーと今、1階から2階にあがる階段のところですが、何があったんですか?」
『第2美術室で高エネルギー反応を確認しました。敵です!学園の生徒のデータベースがまだ修繕途中なので生徒は特定できませんが…。』
「美術室って!ももが、友達がまだそこにいるかもしれないんですっ!」
『何だって…!?急いで向かってください!』
「わかってます!けど…。」
私、体育の成績5段階で3以上もらったことないんです…。階段を駆け足で駆け上る!はぁ、はぁ、息が苦しい…。もう、これ以上走れないよ…。でも!ももが…!私の友達…。初めてできた友達…!!
足が痛いけど…息が苦しいけど…友達を、ももを失うのはもっと…!
私は全速力で美術室へ向かう…!
その頃の美術室。
「そうだけど…。なんで君がそれを知ってるの…?ああ!クリーム君、リンゴの知り合いなの?」
「ねえ、もも。リンゴってさ本当に君の友達なの?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「僕、さっき見たんだ。リンゴが賀東先生のところへ行ったのを。それで、君のこの絵の件で弱っている賀東先生に取り入ろうとしたんだよ。賀東先生のことを好きな君の気持ちを知っているのに…!賀東先生に近づくために君を利用したんだよ…?ひどいやつだよね…。リンゴはさぁ…もものこと友達だと思ってないんじゃない?」
「…じゃないの…。」
「何?」
「あんた、馬鹿じゃないの…?リンゴがそんなことするわけないじゃん!私の大切な友達を悪く言わないでよ。リンゴはきっと…私のために賀東先生にどうして私の絵を見て、あんな反応したのか理由を確かめに行ったんだと…思う。」
「どうしてそう思うの?だいたい、君たち知り合ってまだ1週間くらいじゃん…!」
「時間なんて関係ないよ…。リンゴは私の大切な友達なの。私は…リンゴのことが好きなの!変な意味で言ってるわけじゃないよ。だって、リンゴは初めて会った日に、私の絵を見ただけで私の絵に込めた気持ちに気づいてくれたの…。私、すごくすごくうれしくて…リンゴともっと仲良くなりたいって思ったの…!」
それに、リンゴは賀東先生になんだか似ているの…。二人とも、無意識に他人との間に壁を作ろうとするところが…。リンゴはきっと、名前のせいで苦しんできたんだと思う…。毒島なんてただでさえ女の子にはきつい苗字なのに…名前がリンゴで『毒リンゴ』って絶対いじめられてたと思うの。だから、私は初めて会った時、下の名前で呼んだの。あの時のリンゴの照れた嬉しそうな顔がとっても可愛くて…。もっとあの顔を見たくて…。賀東先生にもあんな顔をさせてみたくて…。
「だから、あんたに私とリンゴのことを語る資格はない!クリーム君てさ、ひょっとして、友達できたことないの?」