賀東先生の瞳3
私、毒島リンゴは賀東先生を探しに、校舎裏のある小さなスペースにやってきた。そこには、賀東先生となぜか橘先生がいた…。あれ?賀東先生がタバコ吸ってる!?賀東先生は、私に気づくと急いでタバコの火を消した。橘先生は、堂々と2本目のタバコに火をつけ始めた…。
「…毒島さん!先ほどは、失礼しました。あとで、藤林さんにも謝らなきゃですね…。」
「ちょっと、橘先生!賀東先生を非行に走らせないでください!」
「いえ、誤解です、毒島さん。」
「あのな…タバコを要求したのは賀東先生だからな…。」
えー!?そうなの…?
「賀東先生も喫煙者だったんですか?」
「はい。でも、月に4、5本程度ですが…。」
そうなんだ…。でも、タバコ吸ってる賀東先生もかっこいいです!!
「賀東先生が具合が悪い原因は、お前らの仕業か?いったい何やらかしたんだ…。」
「賀東先生、もも…藤林さんの描いた絵を見たら急に顔色が悪くなって、逃げるように美術室から出て行っちゃたんです…。賀東先生、あの絵が原因ですか…?」
「そうですね…。橘先生、さっき、僕の嫌いなものについて言いかけてた途中でしたよね?毒島さん、僕はこの自分の『紫色の瞳』が嫌いなんです…。理由は…言えませんが…。だから、紫色のものを見ると気が動転してしまうんです…。」
どうして?賀東先生の紫色の瞳はすっごく綺麗なのに…。
「鏡で自分の顔見るのもつらいんです…。藤林さんのあの作品は本当にとても良く描けていました。彼女が最近、遅くまであの作品制作に没頭していたのも知っています…。だから、ちゃんと評価してあげたかったんですが…。やはり、紫色はダメなんです…。彼女には本当に悪いことをしてしまいました…。」
そうだったんだ…。
「…賀東先生。そういうことなら、きっと、もも…藤林さんもわかってくれる思います!だってあの子、先生のこと大好きだから…!今日の放課後、謝りましょう。…そうだ!良いこと思いつきました…。先生、ただ謝るだけじゃなくて、これをすればきっと藤林さん、喜ぶと思います!」
私は、ももが喜ぶと思う、とっておきの方法を賀東先生に教えた。
「本当に、それだけでいいんですか…?」
「はい!」
「それじゃ、俺、次の授業の準備があるんで戻ります…。おい、毒島。あんまり賀東先生を困らせるようなことするんじゃねえぞ…。」
「はーい。橘先生、校舎に戻るならタバコの火、消したほうがいいんじゃないですか?」
「毒島さん。わざわざ、こんなところまで来てくれて…アドバイスまでくれて本当にありがとう…。」
わあああああ。賀東先生が笑ったっ!!良かったぁ…顔色もだいぶ良くなってきたし…。
「いえいえ…!それじゃあ、また放課後。」
私は、ももを迎えに美術室へと向かった。




