賀東先生の瞳2
星屑学園の本校舎裏のとある小さなスペース。表向きは学園敷地内全域禁煙になっているが、ここは、この学園で唯一、喫煙を許された場所…。そして、俺、橘浩成のヤニ休憩所。
4限の授業が終わり、真っ先にここへ向かう。はぁ…。午後も授業か、面倒くせえな…。俺は、好きで教師やってるわけじゃないから。この学園を卒業してから海外の某名門工科大学に入学。博士号を取り、大学卒業後は研究室に残って、好きな研究を死ぬまで続けるのが俺の夢だったのに…。1年前に剣崎達に無理やり、学園に呼び出されて、強制的にあの…中二くさい、超絶ダサい名前の組織(SAWDO)の一員にさせられてしまった…。だいたい剣崎の奴、昔っから地味で暗くて友達いなくて(あ、友達いないのは俺も同じか…。)中二病こじらせてて…。いや、さらに悪化してるな…。はぁ…早くタバコ吸いたい…。
あれ?今日は珍しい先生が来てるな…。
「賀東先生もヤニ休憩に来たんですか…?」
そうそれは、星屑学園中等部2年2組担任の超絶美形イケメン美術教師の賀東紫苑先生だった…。なぜか、地べたにぐったりと座り込んでしまっている…。てか、顔色悪すぎ…。何があったんだこの人!?
「橘先生…。すみません…タバコ1本もらえませんか…?」
「…はい。どうぞ…。」
「すみません…。ありがとうございます。」
一服する俺と賀東先生…。
「賀東先生、顔色すごく悪いですけど…。どこか、具合でも悪いんですか?」
「…いえ、別に。ただ…『嫌いなもの』を見てしまって…。橘先生は、何か嫌いなものってありますか?」
「そりゃ…たくさんありますけど…。まぁ、一番嫌いなものは子どもですかね。」
「…子どもが嫌いなのに、何で教師になったんですか?」
「好きでこの仕事をしている訳じゃないんです…。でも、子どもをいじめるのは好きです。」
「ははは…。そういえば僕のクラスの生徒も『橘先生のレポート課題は厳しすぎる!生徒いじめだ!』ってよく愚痴ってますよ。」
「考察の所に感想を書いてくる馬鹿に対して慈悲はありませんよ…。」
「でも、先生すごいですよね…。毎週レポート課題を生徒に出しているってことは、毎週先生が全ての生徒のレポートをチェックしてるってことですよね?それも丁寧で再提出者が続出するくらい。そして、その再提出レポートが合格基準に達するまで何度でもチェックして再提出印を押す…。生徒たち以上に先生の負担の方が大きいのに…。でも、生徒たちはそのことに気づかない…。」
「…よしてくださいよ。俺は生徒をいじめるのが好きなだけです…。それより、賀東先生の嫌いなものって何ですか?そんなに顔色が悪くなるほど嫌いなものって…?」
「それは…」
賀東先生が言いかけたその時。
「賀東先生!」
一人の女子生徒がやって来た…。




