リンゴと美術部2
「どうしました!?大きな声がしましたが?」
入ってきたのは、賀東先生だ…!そういえば先生、美術室前の廊下の壁に美術の授業の生徒作品を展示してたんだった…。
「賀東先生!先生はホモじゃないですよね!?」
「え?」
ちょっと!もも、先生に何てこと聞いてんの!
「…ちなみに、先生は受けなんですか?攻めなんですか?」
翠香ちゃん、あなたはもう黙ってて!!
「え?えーと。その、同性愛については偏見はないですけど…。僕は普通に女性が好きですよ…?」
『良かったぁ…!』ほっとする私ともも…。
「でも、偏見がないってことは全く男性に興味がないってわけじゃないですよね!」
翠香ちゃん…。一回、病院に行ってきた方がいいよ…。
そしてまた美術室の扉が開く。
「失礼します。」
入ってきたのは、男子生徒。うわっ、背高っ!高等部の先輩かと思ったら、中等部のジャージ着てるから同い年くらいだ!赤みがかった茶髪に、焼けた肌。整っているけど無表情な顔。
「わあ!唯じゃん。あれ、今日は部活は?」
「…もう、終わったから。それで、先生が作品展示するの手伝いに来た…。」
「ありがとう、甘夏君。助かります。」
「いえ。別に…。」
無愛想な子だなぁ…。
「リンゴ。こいつは2年3組の甘夏唯。私と小学校同じなんだ!うちの部員兼水泳部員。無愛想だけど、根は良いやつだよ!唯、この子は、リンゴ!私の友達!」
「よろしくね。甘夏君。」
「どうも…。」
「あ!唯、ジャージの右肩のへん少しほつれてるよ!私、繕ってあげる!」
「…いいよ。別に。」
「いいから!はやく、脱いで!」
「…わかったよ。じゃあ、頼む…。…ありがとな。」
甘夏君が笑った…!?そういえば、甘夏君がももを見る時、目が少し優しくなる気がする…。もしかして、甘夏君、もものこと…!
「えへへ。気にしないで!賀東先生に裁縫ができる女子力の高さをアピールできるから!それじゃ、私教室に裁縫箱とりに入ってくるね。」
そして、賀東先生と甘夏君は廊下に作品展示に向かい、ももは教室へ行った。美術室には私と翠香ちゃんが残った。
「ねえ。甘夏君て、もものこと…好きだよね?」
「だろうね。わざわざ同じ中学に進学するくらいだから…。甘夏君てさ、ももが小3の時に転校してきたんだって。彼、小さいころから水泳やってたせいであの髪色で無愛想だから近寄りがたくて、クラスでめっちゃ孤立してたらしんだ。それで、お節介焼きのももがよく甘夏君の面倒みてたみたい。」
「なるほど、ももへの思いがいつしか恋心に…。でも、ももは賀東先生一筋だし…。さっきだって露骨に賀東先生大好きをアピールしてたし…。ももは、甘夏君の思いに気づいてないのかな?」
「ああー。あの子、人の恋愛には敏感なんだけど、自分自身は超鈍感だから…。」
甘夏君が報われる日はくるのだろうか…。
「話が変わるけど、リンゴちゃん。…本当にBLに興味ない?」
「もうその話題は勘弁してください…(泣)。」
すると、翠香ちゃんは鞄から数冊の単行本を取り出し、机の上に並べ始めた!って表紙がみんな、男しかいないんですがっ!これ、全部BL漫画じゃないか!!
「これなんか、超オススメなんだけど!攻めが妻子持ちで、ドロドロ展開かと思いきや…最後は涙腺崩壊必至だよ!」
内容ひどすぎっ。奥さん、旦那が同性と不倫してるとか発狂もんでしょ…。子ども絶対グレるよ…。
「こっちは、絵がちょっと独特で、初めは抵抗あるけど内容はすごくいいから!!それから、これは…」
翠香ちゃんは、延々とBL漫画について語っている…。
「まあ、とにかく一冊、読んでみてって!これなんか、初心者向きだよ。」
一冊の漫画を無理やり手渡される…。表紙の肌色率が高いんですが…どこが初心者向きなんですか?
「こらこら。葛西さん、学校は休みですが、校舎内に漫画本は持ち込んではだめだと前にも注意したじゃないですか?」
『が、賀東先生ー!!どうしてここに!!』
「画びょうをとりにきたんです。…葛西さん、なんですかその本は…!?…ああ、それでさっき、藤林さんがあんなことを聞いたんですね…。とにかく、学校には授業に必要ないものは持ってきちゃだめですよ!毒島さんも!」
え!?ああああああ!!私の手の中にBL漫画が…。ち、違うんです先生!!私のじゃないです…!!私は腐ってないんですぅうううー!!